子どもの「脳力」を伸ばす 「AI時代」対応の新型子育て 「夫のトリセツ」の黒川伊保子が伝授 

【AI時代の新・子育て法 #2】AI時代に求められる脳力を我が子に! 子どもの脳の育て方

本格的にAI時代が始まったといわれる近年。新しい時代を迎え討つには子どもの何を、どうやって育てたらいいのでしょうか。  写真:アフロ

テクノロジーがスピードを上げて進歩し、社会の有り様も日々変化している現代。子どもたちが大人になるころには、AI(人工知能)がさらに進化している未来が容易に想像できます。

さまざまな技術や製品が創出されて生活が便利になる一方で、現在進行形で子育てをしている親御さんの中には、自分たちの子育てが時代に追いついているのか、あるいは未来を見据えた子育てになっているのか、不安に思っている方もいるはずです。

人工知能の研究者であり、AIを生み出した一人である黒川伊保子さんは、今から30年以上前にAI時代を見据えた子育てを実践。人工知能の研究者として、また独自の理論で子育てを実践した経験者として導き出した、AI時代の新・子育て法をうかがいます(全2回の2回目、#1を読む)。

◆黒川 伊保子(くろかわ いほこ)
人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。
コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わる。1991年、全国の原子力発電所で稼働し、“世界初”といわれる日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いた語感分析法「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界にも新境地を開拓した。著書に『子どもの脳の育て方 AI時代を生き抜く力』(講談社刊)など多数。

【AI時代の新・子育て法】の連載は、全2回。
第1回〈子育て「金のルール」 早寝早起き・朝ごはんが脳を育てる理由 「夫のトリセツ」黒川伊保子が脳科学で解説〉を読む。
※公開日までリンク無効

それで結局、AI時代を迎え討つには子どもの何を、どうやって育てたらいい?

ChatGPTをはじめとする生成AIが話題となり、本格的にAI時代が始まったといわれる近年。そんな時代を背景とすると、子育て中の親としては「技術系に強い頭脳」を持つ人に我が子を育てたいと思うものです。

しかし、人工知能の研究者である黒川さんは、もっと根本的な部分を育ててあげてほしいといいます。

「連載第1回でもお話ししましたが(#1を読む)、AI時代において社会で求められるのは気づきとか発想とか、その人らしく生きて、その人にしか導けない答えを出すことです。

では、その力を家庭でどのように育むのかというと、『金のルール』を生活の基本にしつつ(#1を読む)、心理的安全性のある対話を家族間ですることです」(黒川さん)

心理的安全性(Psychological safety)とは、「なんでもないことを無邪気に話せる安心感」のことを指します。

思いついたこと、心に浮かんだことを素直に話せる人間関係が、結局のところAI時代に必要な資質(脳力)を育みます

そもそも人間は、気づきと発想の回路を持っている生き物です。

しかし、思いついたことや心に浮かんだことを口にした途端、家族にバカにされたり、仲間に皮肉をいわれたり、パートナーや上司に侮蔑されたりすると、頭にものが浮かんでこなくなるという現象が起こります。

私たちの脳は一つの電気回路ですから、出力しないのに(気づきや発想を口にしないのに)、演算はしません(頭に思い浮かべません)。無駄なことは一切しませんから、結局はその人独自の発想が消えちゃうことになります」(黒川さん)

Googleですら、チームに必要な資質として「対話力」を上げている

心理的安全性の確保は、実は世界的なIT企業として知られるGoogleもその重要性を説き、成果の出せるチームと出せないチームの差とも発表しています。

会社環境からすると、それは「風通しのいい職場」ということになりますが、子どもにとっては風通しのいい家庭がそれにあたります。

「子どもから何かを言われても、親って愛情ゆえに『何言ってんの、それよりも勉強しなさい』『宿題終わったの?』なんて、心配や指摘から口にしてしまうものです。

しかし、こういったネガティブな対応が度重なると、誰しも発想力の回路を止めてしまいます。

子どもにとっての身近な社会は家族ですから、どうか我が子が何かを言ったときにはその気持ちをまずは受け止めてあげてください。

私も子育て経験者なので身に染みていますが、子どもなんて親からしたら9割以上、アホなことを言って質問をしてきます(笑)。でも、それを祝福してほしいのです。

子どもが放った第一声にはどんなことでも祝福して、『わかるよ、それ。そうなるよね』なんていう言葉で対話をしてあげてください。これが今の時代の子育てで一番大切な部分です」(黒川さん)

例えば、子どもが「学校、雨の日で行くのだるいー」と言った場合。

「そんなこと言ってないで、早く学校行きなさい!」と言語道断的に返すのではなく、「あー、それわかる。ママも会社に行くのだるい……。でも、行かなきゃいけないときもあるからね。一緒に出かけようか」と、最初は我が子の気持ちを受け止めてあげるといいでしょう。

思いついたこと、心に浮かんだことを素直に話せて、それを丸ごと受け止められることが、結局は巡り巡って気づきや発想力につながっていきます。

また、「発想力があるってことは、問いを立てる力があるということです」と黒川さんは言い切ります。あらゆるものの命題に気づいて、先に進んでいく力になると聞くと、さらに重要性を感じずにはいられなくなります。

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