創刊100周年『子供の科学』 1964年の東京オリンピック特集を公開!  最先端の科学技術をお披露目する場だった

100年分の『子供の科学』で科学史タイムトラベル vol.2

子供の科学編集部

2024年で創刊100周年を迎えた雑誌『子供の科学』の記事を見ながら、科学史をタイムトラベルする企画の2回目。今回は、パリでの連日の熱戦で盛り上がる、4年に一度の世界的スポーツの祭典「オリンピック」についての記事を紹介します。今から100年前、パリオリンピックが開催された1924年に『子供の科学』も創刊されました!

『子供の科学』がこの100年で一番大きく取り上げたオリンピックは、1964年の東京オリンピック。この東京オリンピックは、戦後の復興から高度経済成長を遂げる日本のテクノロジーを世界にアピールする絶好の機会でもありました。新幹線が開通したのも、東京オリンピックの年です。他にも日本発のさまざまなテクノロジーが東京オリンピックでお披露目され、当時の『子供の科学』も大きく取り上げたのです。

10月に開催されるオリンピックの約2ヵ月前に発売された『子供の科学』1964年8月号の表紙。特集は「オリンピックの新兵器」

『子供の科学』とは?

1924年創刊の小中学生向け科学月刊誌『子供の科学』。宇宙、生き物、テクノロジーなど話題の科学ニュースを、どこよりもおもしろく、わかりやすく解説。

創刊以来、研究者や医師、エンジニアなど一流の理系人材が子ども時代に読んでいた雑誌として知られ、毎月工夫をこらした実験や工作を多数紹介。毎月10日発売。「子供の科学」のメディアサイト「コカネット」では、科学に関する最新研究の情報から、実験・工作・自然観察・プログラミングなどの情報を配信中。

1964年の東京オリンピックは「科学のオリンピック」

「オリンピックに使われる機械」のタイトルとともに添えられたイメージイラストは、タイムを計測するロボット!?

導入文には、『このオリンピック東京大会は、「科学のオリンピック」ともいわれています』とあり、科学好きの読者はどんなテクノロジーが見られるのか、胸を躍らせていたに違いありません。

まずは、競技場にどんな機械が導入されるかの紹介です。

トラック競技のタイム測定では、精密な日本の時計が大活躍しました。記事には、タイムを数字で読み取ることができる世界初の時計と書かれています。500本以上のトランジスターを使って、100分の1秒までの記録を正確にとることが可能になったとのこと。

そして東京オリンピックから初めて使われるようになったのが、水泳の自動着順判定装置でした。選手がゴールに設置されたタッチ板にタッチをすると電気信号が送られ、タイムが自動計測される、今では当たり前のしくみです。

コンピューターが大活躍した最初のオリンピック!?

「しゅん間に集まる競技成績」と題したこの記事にも注目です。

東京オリンピックは当時の過去最大規模の大会となり、各地の会場で行われた大会の記録を、どれだけ早く世界中の報道関係者、選手、役員に知らせるかが大きなテーマでした。インターネットがないこの時代。記事には、IBMの電子計算機を使用し、各競技場の電子計算機を電話回線で結んで、記録を全会場に符号で送るとあります。「男子バレーボールの第14試合」の場合は、「♯1801R14」と送るのだそうです。

さらに、記録の整理・編集も電子計算機が一手に引き受け、「オリンピック関係者の期待を一身に集めています」と書かれています。コンピューターが大活躍した最初のオリンピックだったともいえそうですね。

世界初! オリンピックの衛星放送

こちらは1964年11月号、東京オリンピックが開催中に発売された号の特集記事が「オリンピックを世界に送るシンコム衛星」です。

世界で初めて、衛星を使ってオリンピックのテレビ放送を世界に届けたのも、この東京オリンピックでした。NASAが打ち上げた静止衛星「シンコム3号」を使って、NHKのオリンピック映像がアメリカに送られたのです。

科学好きの子どもたちに向けてまず紹介しているのは、シンコム3号のしくみ。シンコム3号がなぜ地球から見て同じ位置に見えるのか、静止衛星の原理について解説しています。衛星の形も、今とずいぶん違いますね。

次に、東京のオリンピック映像がどのようにしてアメリカに届けられるかの解説です。ロサンゼルスの受信機に届いた電波は、全アメリカとカナダの放送局にマイクロ・ウェーブで中継。さらに、ニューヨークの近くでビデオテープに録画され(もちろん当時、家庭用のビデオ機器はありません)、ジェット機でイギリスのロンドンに運ばれ、全ヨーロッパで放送されたそうです。一方、音声のほうは海底ケーブルでハワイを経由しアメリカに送られ、これもテープになってヨーロッパに送られた、とあります。

もちろん今では、パリオリンピックの様子はほぼ同時に日本で観戦することができます。この50余年で、通信がいかに目覚ましく発展してきたかがわかりますね。

パリオリンピックのテーマは「サステナブル」

科学技術の発展をアピールすることに力が注がれた、1964年の東京オリンピック。その後も競技の判定、計測や中継の技術はすさまじく発展してきたわけですが、今年のパリオリンピックでは、いかにサステナブルな大会を実現するか、が大きなテーマになっています。

競技施設はなるべく再利用して、環境負荷が大きい新施設はつくらなかったり、パリをゼロエミッションの車が走行して観客や選手を運んだり、といったことが注目されています。

今回は、『子供の科学』で紹介された1964年の東京オリンピックを見ていきました。『子供の科学』100周年スペシャルサイトでは、トップページから年号を打ち込むと、さまざまな時代の科学を『子供の科学』誌とともにタイムトラベルすることができます。ぜひあなたの視点で、100年の科学史を振り返ってみてください。

『子供の科学』100周年記念スペシャルサイト 「科学タイムトラベル」

子供の科学100周年スペシャルサイト「科学タイムトラベル」TOP画面
『子供の科学』2024年8月号は100周年記念特大号。特集は「ミライの自由研究」、別冊付録は「時空を超えてやってきた! 2050年の子供の科学」。付録とも特別定価:990円(税込)
こどものかがくへんしゅうぶ

子供の科学編集部

1924年創刊の小中学生向け科学月刊誌「子供の科学」。 宇宙、生き物、テクノロジーなど話題の科学ニュースを、どこよりもおもしろく、わかりやすく解説。創刊以来、研究者や医師、エンジニアなど一流の理系人材が子ども時代に読んでいた雑誌として知られ、毎月工夫をこらした実験や工作を多数紹介。毎月10日発売。 「子供の科学」のメディアサイト「コカネット」では、科学に関する最新研究の情報から、実験・工作・自然観察・プログラミングなどの情報を配信中。 子供の科学のWebサイト「コカネット」 https://www.kodomonokagaku.com/ 子供の科学 公式X (@kodomonokagaku) https://x.com/kodomonokagaku

1924年創刊の小中学生向け科学月刊誌「子供の科学」。 宇宙、生き物、テクノロジーなど話題の科学ニュースを、どこよりもおもしろく、わかりやすく解説。創刊以来、研究者や医師、エンジニアなど一流の理系人材が子ども時代に読んでいた雑誌として知られ、毎月工夫をこらした実験や工作を多数紹介。毎月10日発売。 「子供の科学」のメディアサイト「コカネット」では、科学に関する最新研究の情報から、実験・工作・自然観察・プログラミングなどの情報を配信中。 子供の科学のWebサイト「コカネット」 https://www.kodomonokagaku.com/ 子供の科学 公式X (@kodomonokagaku) https://x.com/kodomonokagaku