子育てをしていると、「こどもを理系に育てたい」「科学が好きな子になってほしい」などの声を多く聞きます。意外と簡単にはじめられて、家庭でもできるSTEAM教育があったらどうでしょう。サイエンスライターの小野寺佑紀さんにおすすめの絵本を紹介してもらいます。
そもそもSTEM教育、STEAM教育とは?
Science 科学
Technology 技術
Engineering 工学
Mathematics 数学
これらの頭文字をとって、STEM教育。
アメリカを筆頭に世界中で認められている先進の教育分野です。ハイテク関連の人材育成という名目もありますが、こうした分野に明るいことはこれからの時代を生きる子どもたちにとって有意義であることはまちがいありません。
ここに
Art 芸術
を加えたものをSTEAM教育とよんでいます。
日本の文部科学省は、STEM教育に芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理を含めて「A」とし、教科を横断する学習を推進しているようです。
日本国内でも、ますます注目されています。
STEM教育はいつから始めればよいのでしょう?
アメリカでは、幼いうちから、といわれています。
科学的な思考の出来不出来の差は幼少期には生じ、中学生くらいになってもその差はなかなか埋まらないとも考えられています。
では、どうしたらいいのでしょうか?
なにから始めたらいいのでしょうか。
STEM教育先進国アメリカで、今、売れている本があります。
本国ではシリーズ累計100万部を突破したベストセラー。
『そうたいせいりろん for babies』
『りょうしりきがく for babies』
赤ちゃんに「相対性理論」!? と驚かれることでしょう。でもこの絵本には小難しいことは何も書かれていません。
幼い子どもたちでも物理学のふしぎさ、壮大さを感じられるよう、簡単な言葉と絵で究極的にシンプルに表現されています。
作者は、物理学者でも数学者でもあるクリス・フェリー博士。4人の子どもをもつお父さんです。そして監訳者は、素粒子論と宇宙論がご専門の村山斉博士。絵本で使われる文章はごく短いものですが、物理学のエッセンスがつめこまれているので、言葉の選び方はきわめて重要。世界的な2人の科学者によって生まれたこの絵本は、子どもたちに深く響くことでしょう。
絵本を読んだら、子どもたちと重力や宇宙や電子について、話をしてみてください。村山博士が絵本の冒頭で述べられていますが、子どもの質問にこたえること、いっしょに調べることは、子どもの成長を大いに助けます。ぜひ大人も一緒に楽しんでみてください。
科学とアートセンスを磨く絵本
前述しましたSTEM教育にArt(芸術)を加えた、STEAM教育も知られるようになってきました。幼い子どもたちこそ、日頃から芸術に触れてもらいたいものですよね。
他にも自然科学の知識とアートセンスが同時に身につく絵本を紹介しましょう。ドイツ生まれの絵本作家で画家・芸術家でもある、ブリッタ・テッケントラップさんの科学絵本です。
ブリッタさんはこれまでに120冊以上の著書を世に出し、30ヵ国以上の言語に翻訳されています。世界中のこどもたちに愛される作家であり、一児の母でもあります。
そんな彼女が手掛けた美しい科学絵本。
『いろんなところに いろんな さかな』
『いろんなところに いろんな むし』
今回の主役は「さかな」と「むし」。
彼女が生み出す独特の色と形が絵本いっぱいに広がっています。
ブリッタさんは、やさしい絵と文で読者に問いかけます。
こんなむしがいるって知ってた?
むれにまぎれこんでいる別の種類のさかなに気づいた?
へんてこで、奇妙で、おもしろいよね!
どうすればむしやさかなと仲良くなれるかな?
見れば見るほど、生き物や地球が愛おしくなる一冊です。
この絵本には、生物学の基礎ともよべる内容がつまっています。生物の進化や生き残るためのさまざまな戦略、交配や子育てなど、おもしろい話題がいっぱい!
この本は、世界を感じて考えられる子どもを育てる絵本です。
ブリッタさんの絵本は、部屋にかざっておくのにもぴったり。マットな質感のカバーをかけたままでも、カバーをはずしてきらきらの表紙を見せても。絵画をかざるように、科学絵本を眺めてみてください。
ご家庭でSTEAM教育の第一歩を踏み出せるはずです。
小野寺 佑紀
サイエンスライター/編集者。科学雑誌Newton編集部に勤務後、フリーに。現在もNewton誌で執筆・編集をしながら,生物や人体,古生物などの本づくりのお手伝いをしている。科学絵本の翻訳をすることも。一児の母。 https://yukinesis.wixsite.com/website
サイエンスライター/編集者。科学雑誌Newton編集部に勤務後、フリーに。現在もNewton誌で執筆・編集をしながら,生物や人体,古生物などの本づくりのお手伝いをしている。科学絵本の翻訳をすることも。一児の母。 https://yukinesis.wixsite.com/website