子どもの「スマホ内斜視」 小児眼科医が解説する「両目が内側に寄りすぎる症状」とは

【デジタル時代の子どもの目のトラブルとケア #2】すぐにスマホを子どもに与えてしまう育児には要注意!

幼児・小学生のスマホ使用は親の管理下で

スマホ内斜視が発症するプロセスは次のとおりです。

スマホ内斜視が発症するプロセス

すべての画像を見る(全7枚)

「まず、WHO(世界保健機構)では『2歳未満の子にはスマホやゲーム機は推奨しない』としています。したがって、小型のデジタル機器を与える年齢には注意してください。

また、子どもがデジタル機器を使う場合は、基本的に親が見ているときに使わせて、持たせっぱなしにしないなど、小さいうちからしっかりとルール付けと管理をしましょう」(三木先生)

子どもたちがこれから生きていく世界では、スマホだけでなく、タブレットやパソコンなど、デバイスとの接触がなくなることはありません。その中にあって目の健康と生活を両立させていくには、制限を持たせることや正しい利用方法を教えることが大切です。

スマホは30cm離して見る!

スマホやタブレットを操作する場合は、最低でも30cmは離しましょう。 写真:アフロ

スマホ内斜視が発症するプロセスにあるとおり、目とデバイスの距離が近いと発症のリスクは高まります。

「操作するときも、動画などを視聴するときも、画面との距離は最低でも30cmは離しましょう。子どもは画面をよく見ようとして顔を近づけるのですから、文字サイズを大きく変更するのも手です。

また、手でデバイスを持っていると徐々に顔が画面に近づいていくので、スマホスタンドなどを使って距離を保つようにしましょう」(三木先生)

ゲーム機で遊ぶ場合にもルールを設けよう

近づいて見るものには手持ちタイプのゲーム機もあります。この場合はどうすればいいのでしょうか。

「手持ちタイプの小型ゲーム機は、まばたきの回数が減って目が疲れやすくなり、知らず知らずのうちに目に大きな負担をかけます。スマホ同様に、目との距離が近くなりやすく、長い時間続けて遊んでしまうのも懸念点です。

子どもがゲームをするときは、テレビなどの大きな画面に映し、画面に近づきすぎないように親が遊んでいる様子を見守りましょう。

もし子どもが画面に近づいていくようなら、1メートル以上離れた位置に椅子や座布団を置いて、子どもにはそこに座るように指示します。

また、長時間遊ばないように、タイマーなどで終了時間を管理することも大切です。遊ぶ前に、習い事や宿題など、ゲーム後の用事を子どもと共有しておくと約束を守らせやすくなります」(三木先生)

デジタル機器との長時間の接触は、スマホ内斜視だけでなく、近視を進行させることにもつながります。

近視は5~6歳で視力が完成したあと、体の成長に伴って眼球の長さも伸びてくる学童期に増え、進行しやすい症状です。視力はいったん落ちると回復しませんから、こういった側面からもデジタル機器との付き合い方には節度を持つ必要があります。


次回は、米国で導入されている、スマホ内斜視から目を守る「20‐20‐20ルール」を紹介します。

─◆─◆─◆─◆─◆─◆

◆三木 淳司(みき あつし)
日本眼科学会眼科専門医・指導医。医学博士。川崎医科大学附属病院眼科部長(教授)。
専門分野は斜視・弱視、神経眼科、小児眼科。
1992年に新潟大学医学部医学科卒業後、1998年同大学院医学研究科博士課程修了する。1998年~2001年、米国ペンシルベニア大学・フィラデルフィア小児病院での博士研究員を経て、長岡赤十字病院眼科や新潟大学医歯学総合病院眼科などで医療に従事。2010年に川崎医科大学眼科学教授及び川崎医科大学附属病院にて現職に就任する。
監修本に小社刊『健康ライブラリー イラスト版 子どもの目を守る本』などがある。

取材・文/梶原知恵

『デジタル時代の子どもの目のトラブルとケア』の連載は、全3回。
第1回〈子どもの目の異変 スマホ、パソコン、ゲーム… 「要注意な症状」を専門医が解説〉を読む。
第3回〈小学生で進みやすい子どもの「近視」 専門医が教える正しい「進行予防策」〉を読む。
※公開日までリンク無効

この記事の画像をもっと見る(全7枚)
30 件
みき あつし

三木 淳司

MIKI ATSUSHI
日本眼科学会眼科専門医・指導医

日本眼科学会眼科専門医・指導医。医学博士。川崎医科大学附属病院眼科部長(教授)。専門分野は斜視・弱視、神経眼科、小児眼科。 1992年に新潟大学医学部医学科卒業後、1998年同大学院医学研究科博士課程修了。1998年~2001年、米国ペンシルベニア大学・フィラデルフィア小児病院での博士研究員を経て、長岡赤十字病院眼科や新潟大学医歯学総合病院眼科などで医療に従事。2010年に川崎医科大学眼科学教授及び川崎医科大学附属病院にて現職に就任。 【主な共著や監修書】 『健康ライブラリー イラスト版 子どもの目を守る本』(小社刊)など

日本眼科学会眼科専門医・指導医。医学博士。川崎医科大学附属病院眼科部長(教授)。専門分野は斜視・弱視、神経眼科、小児眼科。 1992年に新潟大学医学部医学科卒業後、1998年同大学院医学研究科博士課程修了。1998年~2001年、米国ペンシルベニア大学・フィラデルフィア小児病院での博士研究員を経て、長岡赤十字病院眼科や新潟大学医歯学総合病院眼科などで医療に従事。2010年に川崎医科大学眼科学教授及び川崎医科大学附属病院にて現職に就任。 【主な共著や監修書】 『健康ライブラリー イラスト版 子どもの目を守る本』(小社刊)など

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。