子どもの夏の病気 「熱中症」「あせも」は天敵 原因・症状・対処法を小児科医が解説

夏にかかりやすい子どもの病気#4「あせも」「熱中症」

小児科医:渋谷 紀子

顔が真っ赤が最初のサイン「熱中症」

夏になると、熱中症に対しては毎年のように注意喚起されています。

多くの方が気をつけていることですが、おさらいの意味も込めて症状や対処法、どういう状態になったら至急、病院へ行かなければならないのかを確認しておきましょう。

熱中症は屋外だけでなく、閉め切った室内や車内でも起こるため屋内でも安心はできません。  提供:アフロ

1) 熱中症ってどんな病気なの?

熱中症は炎天下など、高温多湿の環境で体温が上がり、体温調節機能が働かなくなって体にこもった熱を発散できなくなったり、体内の水分・塩分バランスが崩れたりすることで起こります。

顔が赤くなる、ひどく汗をかく、あるいは汗をかかないという特徴がありますが、そのほかにもめまいや立ちくらみ、筋肉の硬直、こむら返り、気分不良、吐き気、だるさなどの症状があります。

ピークは6~9月と幅広い期間で起こりうると考えていいでしょう。体が暑さに慣れていない初夏は特に注意が必要です。

熱中症は子どもでも大人でもかかりますが、特に乳幼児とシニアは体温調節機能が未熟、あるいは低下しているためリスクが高いです。

昼間、日差しの強い時間帯に外にいたり、室内でもエアコンを使わずにいたりすると体に熱が溜まり、脱水症状を引き起こして熱中症になる確率が高まります。

また、車内も注意が必要です。たとえ少しの時間でも車内の温度は高温になり熱中症を引き起こす環境になります。短時間でも子どもを車内に置き去りにしてはいけません。

どういう状態になったら病院に行かなくてはならないの?

熱中症は重症度が3段階に分けられており、厚生労働省の診療ガイドラインに緊急度が示されています。ただ、これはあくまでも目安ですし、子どもは頭痛などの自覚症状を訴えることができません。

体が熱くて元気がない、ぐったりしているときなどはすぐに涼しい場所へ移動して応急処置をし、改善しない場合や普段とは違うと感じたら、すぐにでも受診しましょう。

熱中症/3段階の重症度

2) おうちでの応急処置

熱中症の症状が見られた場合、その場での応急処置が重要です。次を参考に対応しましょう。

■涼しい場所へ移動する
 急いで風通しの良い日陰やクーラーの効いた部屋に移動します。

■衣服をゆるめて、寝かせる
 衣服をゆるめます。首周りやウエスト周りのボタンを外して、安静に寝かせます。

■体を冷やす
 冷たいタオル、あるいは保冷剤をハンカチなどで包んでから首やわきの下、足のつけ根などにあてます。冷たい濡れタオルで体を拭くのもいいでしょう。

■水分を与える
 少しずつでも水分を与えます。ベビー用イオン飲料や経口補水液が望ましいです。手元になければ水や麦茶でもいいでしょう。

応急処置をしてもぐったりして意識がはっきりしない、顔色が悪い、水分をとらせようとしても飲めない、などの場合は大至急受診するか、救急車を呼びましょう。

3)そのほかの注意事項について

熱中症はとにかく予防が重要です。子どもの服装は脱ぎ着がしやすく、通気性の良いものを選び、外出する際は帽子を着用しましょう。日差しが強い時間帯には外出を控え、室内ではクーラーを上手に利用することも大切です。

ベビーカーに乗っている子どもの場合は、照り返しの影響があります。長時間、ひなたを歩かないのはもちろん、ベビーカーを炎天下に置かないようにしましょう。

また、車で移動する場合も、前述したように注意が必要です。車内では強い日差しが当たらないように気を付けて、短時間でも絶対に子どもを置き去りにしないでください。

言葉が話せない子どもは水を飲みたくても伝えられなかったり、夢中で遊んでいるとのどの渇きを忘れたりします。脱水症にならないように、定期的に水分補給をしてあげましょう。

通常なら麦茶でもいいですが、運動量が多く汗をたくさんかいたときはベビー用イオン飲料や経口補水液で塩分も補給してあげましょう。

コロナの影響で子どももマスクを着用する機会が増えましたが、マスクは熱中症のリスクを高めるといわれています。屋外では状況に応じてマスクを外すこと、マスク着用時はいつも以上にこまめな水分補給を心がけることが大切です。

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夏はウイルスや細菌による感染症ばかりでなく、暑さによって汗をかくことで皮膚トラブルや熱中症のリスクもある季節です。さまざまな病気が身近に潜んでいますが、予防を心がけ、かかった場合はこれまでの解説を参考に落ち着いて対応しましょう。

親が事前に情報収集して備えておくことで、子どもも楽しい夏を過ごせるはずです。

取材・文/梶原知恵

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しぶや のりこ

渋谷 紀子

小児科医

愛育クリニック院長兼小児科・母子保健科部長。日本小児科学会専門医・認定指導医。日本アレルギー学会専門医。東大病院小児科、愛育病院小児科などでの勤務後に、カナダのトロントにて研究留学。帰国後、東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。 【主な監修書】 『0-5歳児 病気とケガの救急&予防カンペキマニュアル』(学研プラス) 『はじめてママ&パパの0~6才病気とホームケア(実用No.1シリーズ)』(主婦の友社)など

愛育クリニック院長兼小児科・母子保健科部長。日本小児科学会専門医・認定指導医。日本アレルギー学会専門医。東大病院小児科、愛育病院小児科などでの勤務後に、カナダのトロントにて研究留学。帰国後、東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。 【主な監修書】 『0-5歳児 病気とケガの救急&予防カンペキマニュアル』(学研プラス) 『はじめてママ&パパの0~6才病気とホームケア(実用No.1シリーズ)』(主婦の友社)など

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。