人気の性教育YouTuberシオリーヌを育んだ“性をタブー視しない”母の教え
性教育YouTuberシオリーヌさん「親から幼児へ 性とジェンダーの伝え方」第1回〜人気YouTuberになった理由とコロナ禍の性教育〜
2021.06.11
助産師としての立場から、性の話を発信している“性教育YouTuber”のシオリーヌさん。妊娠の仕組みや正しい避妊方法などの具体的な情報をわかりやすく解説した動画が若者を中心に人気を集め、チャンネル登録数は14.8万人(2021年6月現在)。2021年4月には、ジェンダーやセクシュアリティについて学べる絵本『こどもジェンダー』を上梓しました。YouTubeや講演活動など幅広く活躍するシオリーヌさんに、性教育の発信を始めた背景や活動について伺いました。
子どもたちが自ら訪れる場所で性の話を発信したかった
助産師として総合病院で勤務を経た後、精神科に転職し、思春期病棟で看護師として働いていたシオリーヌさん。看護師から“性教育YouTuberへの転身をした背景には、子どもたちに本当に必要な情報を届けたい思いがありました。
「看護師として働くかたわら、学校などで性教育の講義も行っていました。そのときに学校からは、『具体的な内容を扱わないでほしい』『コンドームは性感染症の予防や避妊のために有効だと教えるのはいいけど、実物は見せないでほしい』と言われました。学校としては、具体的に教えてしまうと子どもたちに“性行為を認めている”と思われてしまうから困ると考えているようです」
日本の性教育は、先進国のなかでも遅れをとっているとたびたび報道されています。シオリーヌさんは、2020年に書籍『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』を出版しました。
中高生にこれだけは知っておいてほしいと思う情報を詰め込んだ“性教育の入門編”を目的にして作ったものですが、意外にも大人からの反響が大きかったそうです。シオリーヌさんのもとに「自分が10代の頃に読みたかった」という感想が多く寄せられたことからも、学校では十分な性教育が行われていないことがわかります。
「現在の指導要領は、中学生で妊娠・出産については扱うものの、具体的な内容については書かれていません。学校の性教育は、肝心なところがぼやかされていると感じました。でも、私はコンドームを買える場所や使い方などの具体的な情報が役に立つと思っています」
性教育がより必要な中高生が自分たちで情報を取りやすい場所で発信したいという思いから、シオリーヌさんは彼らにとってなじみのあるYouTubeで活動することを選びました。もともと人前で話すことに抵抗はなかったと話すシオリーヌさん、じつは意外な経歴が……。
「高校生の頃にアマチュアのお笑い芸人をやっていまして、お笑いの大会に出場したことがあります(笑)。高校と大学では、バンドを組んでボーカルもやっていました。もともと、何かを表現することが好きなので、総合病院で助産師として働いていた頃に、私がもっとも輝く場は、多くのお父さん、お母さんの前で話す両親学級でした(笑)。先輩からも『両親学級では、大貫さん(シオリーヌさんの本名:大貫詩織さん)の右に出る人はいないね』と言われていたくらいです」
性教育を伝えることへの使命感にも通じる思いと自身の得意分野をマッチさせて始めたYouTubeチャンネルは、登録者数が現在14.8万人に。その半数以上は13歳〜24歳の若者です。
「妊娠について扱ったときに『先生たちがはぐらかしたのは、この話だったんだ!』とコメントをもらったことがとても印象に残っています。子どもたちは、大人が何か肝心なことをはぐらかしていると気づいていて、その内容こそ知りたいと思っているのだと改めて実感しました」