子どもと新型コロナ 小2男児がワクチン接種した理由 感染症専門医・忽那先生の解説付き

子どもの「コロナワクチン」接種3兄弟ママライターの体験記#1 家族で話し合ったこと

小2長男は他の子どもより繊細。小児コロナワクチンを接種するか、本人の気持ちを尊重して話し合いをしました。  写真:アフロ
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小2長男が1回目ワクチン接種(22年5月)。しかし7月にコロナ感染しました。そんなママライターによる、ワクチンと感染の実録ルポをお届けします。また、当時の母子の判断・行動を感染症専門医・忽那賢志先生に解説していただきました。1回目は、ワクチンを打つか、家族での話し合いと予約状況について。

忽那賢志(くつな・さとし)先生
感染症専門医。大阪大学医学系研究科 感染制御学講座 教授 兼 大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。専門は新興再興感染症、新型コロナウイルス感染症など。
(イラスト『絵本 はたらく細胞 3 はじめての敵! 新型コロナウイルス』より 絵:牧村久実)

今回、実録ルポを書いたのは、東京在住のママライター秋音ゆうさん。塾講師のパパ、小2の長男、4歳の次男(幼稚園)、2歳の三男(保育園)の3兄弟がいる5人家族で暮らしています。

新型コロナワクチンの幼児・児童(5~11歳対象)への接種は、2022年1月21日に国で薬事承認され、3月より開始。8月29日に政府から発表された年齢別ワクチン接種率によると、1回目の接種をした5~11歳の子どもは19.5%、2回目は17.9%と他の年代に比べ、とても低い接種率でした。

長男Aくんも、最初は小児ワクチン接種については、「怖いから」と否定的でした。しかし、最終的にはワクチン接種を決意。秋音さん夫婦とAくんはどう話し合って小児ワクチン接種を決めたのか。当時の様子を教えてもらいました。

(全3回の1回目)

「本当に大丈夫なの?」多くの不安の声があるなか、接種を決めた理由

4回目の緊急事態宣言が発令された2022年1月以降、オミクロン株が流行し始めました。

オミクロン株は、感染力の強さや潜伏期間の短さから、10歳未満の感染者数も増えていき、このころから、家庭内感染も増えていきました。

新型コロナウイルスによる子どもの重症化事例は、当時は少ないように思えましたが、それでもいつわが子が感染してしまうのか、ずっと不安を感じながら生活していました。

そして1月21日、子どもを対象とした新型コロナワクチンが、ついに国で承認されたのです。

前々より、小児用新型コロナワクチンの開発や実用化についての報道を興味深く追っていましたが、ワクチンによる副反用など、子どもの体にどのような影響があるのか、はっきりとわかりませんでした。

3月にはワクチン接種券が手元に届きましたが、ママ友とも、「子どものワクチン接種券が来たけどどうする?」という話がよく上がっていました。

私自身は、数々の臨床試験を経ているし、海外でも多くの子どもたちが接種している事例があったので、「できるなら接種してほしい」という気持ちでした が、周りからは「ワクチン怖い」「副反応がまだよくわからないから打たせない」という意見を多く耳にしました。

【忽那賢志先生】
お子さんは高齢者などと比べると重症化しにくいため、お子さんにとってのワクチン接種のメリットは、高齢者などに比べると相対的には低くなります。

しかし、それでも感染するリスクを約半分に減らすことができること、後遺症になる頻度を減らすことができることなど、メリットは十分にあります。

お子さんも接種後、だるさ、熱、頭痛などの副反応が出ることがありますが、ワクチンの量が3分の1になっていることもあり、頻度は大人よりも少なくなっています。

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私自身(ママライター秋音ゆう)は、コロナワクチン3回目接種を終えています。

しかし、薬疹経験者なのでほとんどの抗生物質に対してアレルギーを持っています。 そのため、1回目は接種後のアナフィラキシーの恐れにドキドキしながら臨みましたが、結果、アレルギー反応は出ずに終えることができてすごくホッとしました。

ワクチン接種ができたことによって、大きな安心感を得られたこともあり、夫婦間では「長男にはワクチンを打ってほしい」と意見が一致。ちなみに長男は特に持病などはありません。

しかし、長男は大の注射嫌い。さすがにもう泣いて暴れることはありませんが、幼いころはインフルエンザワクチンや日本脳炎ワクチンなど、接種の際には直前まで渋り、それはもう大変でした。

また長男は、人より繊細な部分があり、元々コロナ関連のニュースに対しても、かなり疲弊感を感じており、連日、小児新型コロナウイルスワクチンの副反用や安全性について取り上げるニュースを見ては、不安げな顔を見せていました。

ニュース内では、「小児コロナワクチンについてまだよくわからないので、打たせないです」といった街の声も紹介されていて、それを聞いてより心配を感じていた部分もあったと思います。

パパがワクチンを打ったときは、副反応による腕の痛みに長く苦しんでいるのを見て、「注射は痛いし、副反応も怖いな」と言っていました。

ただ同時に、コロナに感染することの怖さも抱えていたので、当事者となる長男に、ワクチンについて説明し、接種について話し合う機会を設けました。

繊細で注射嫌いの長男 しかし子どもの意思を第一に

パパ「パパとママは、できるならAくんにはワクチンを打てたら安心だなと思っているけど、どうしたい?」

長男「注射イヤだな。でもコロナになるのも怖いしな」

ママ「コロナに感染するのと、ワクチンの副反用、どっちが怖い?」

長男「どっちも怖いけど、コロナかなぁ……」

大人同士でもワクチン接種の有無についてはとてもセンシティブになっていたので、わが家では、長男に対しても「必ず打つように」と押し付けることはせず、彼の気持ちを第一優先で話し合いました。

また、もう一つの懸念である、「接種の有無による差別的な言動」についてもしっかりと伝えました。

「病気をしている人だと、ワクチンを打ちたくても打てない場合もある。打っているから正しい、打っていないから悪いというわけではないよ。それに、ワクチンを打つか打たないかは、おうちごとに考えがあるから、もし打っていないお友達がいても、それについてなにか否定的なことは言わないようにしようね」

当の本人は、「そりゃそうだよ!」という反応でしたが、このことについてはわかっていても、しっかりと説明して良かったと思っています。

【忽那賢志先生】
このように、家族で話し合って、メリットとデメリットについて考え、子どもも親も納得した上で接種していただくことは大事だと思います。

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小児ワクチン接種が始まり、しばらくしてから長男に話を聞いてみると、「ワクチン打ったよ」「僕はまだ打ってないよ」という会話は、子どもたちの間であったようです。

しかし、それによっていじめ的なことが起こることはなく、「任意」という考え方は、子どもたちにとって当たり前のこととして通っているように感じました。

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