まさかうちの子が!? 急増する「ゲーム課金トラブル」を教育家が解説

教育家・石田勝紀さんに聞く、子どもの「ゲーム課金トラブル」の対処法 #1 高額課金トラブルを防ぐためにできること

教育家:石田 勝紀

教育家の石田勝紀さん。20歳で塾を立ち上げ、今まで5万人以上の子どもに教えてきました。

生まれたときから、世界中とインターネットがつながっている世界で育っている現代の子どもたち。PCはもちろん、スマートフォンやタブレット、家庭用ゲーム機が日常にあるのは当たり前で、さらにキャッシュレス化も進み、金銭感覚も親世代とは大きなギャップがあります。

そのため、物理的にお金を「使う」ことを理解できていないまま、オンラインゲームに夢中になり、つい課金してしまう子どもの「課金トラブル」が増えてきているといいます。

そこで、子どもの課金トラブルを防ぐために、親としてできることを、教育家・石田勝紀さんにお聞きしました。

1回目は、国民生活センターに実際に寄せられた事例を紹介しながら、課金トラブルについてお話しいただきます。


(全3回の1回目)

石田勝紀(いしだ・かつのり)
1968年、横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで5万人以上の子どもに学習を指導。指導内容は知識の詰め込みではなく、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱にすることで学力だけでなく、自己肯定感も引き上げる独自のメソッドを確立。一般社団法人「教育デザインラボ」代表理事。

ゲーム課金は最近の子育ての悩みにランクイン

子どものゲーム課金のトラブルは、最近の子育ての悩みのひとつにあがることが多くなってきました。「きっと、うちの子は大丈夫」と思いつつも、年齢を重ねるごとにどんどんゲームに夢中になっていく姿を見ると、不安が頭をよぎるというママ、パパもいるかもしれません。

実際に「国民生活センター」に寄せられたいくつかの事例から、どんなトラブルがあるのかを見てみましょう。

実際にあった課金トラブル事例

【事例1】
小学生の子ども(10歳代・男性)が、友達に「キャリア決済を使うとお金がかからない」と聞き、スマホでオンラインゲームに高額課金していた。


携帯電話の利用履歴を確認していたら、高額な料金が発生していることに気がついた。小学生の子どもが、家族のスマートフォンを使ってゲームアプリで遊んでおり、課金をしたようだ。課金については禁止していたが、一緒に遊んでいた友達から「キャリア決済を使うとお金がかからないでゲームができる」と教えてもらったようだ。

アプリのプラットフォーム運営事業者と交渉したところ、取り消してもらえたものもあったが、まだ10万円ほどの請求が残っている。キャリア決済(※注1)の際にパスワードの入力は必要ではなく、決済完了メールは届いていなかった。子ども自身はお金がかかっている認識はなかったという。

相談者:30歳代 男性(父親)

※注1
キャリア決済とは、携帯電話会社のIDやパスワード等による認証で商品等を購入した代金を、携帯電話の利用料金等と合算して支払うことができる決済方法のこと。携帯電話会社によって名称は異なる。

【事例2】小学生(10歳代・男性)の子どもがオンラインゲームで150万円以上も課金していたが、決済完了メールが子どもに削除されていたため気がつかなかった。

春の大型連休中に、小学生の息子2人が、家族共有で使用しているタブレットを使ってオンラインゲームで遊び、クレジットカードで150万円以上も課金をしていたことがわかった。4月末ごろから子どもたちが課金のお願いをしなくなったので不思議に思っていたが、勝手に課金をしていたようだ。

タブレット端末には、私がクレジットカードで決済するために、クレジットカード2枚の番号を登録していた。クレジットカード会社からの決済完了メールはタブレットに届いていたが、子どもたちが「ゴミ箱」のフォルダーに入れていたのでまったく気づかず、請求が来て初めて気がついた。

相談者:40歳代 男性(父親)

(引用元:令和3年8月12日発行 独立行政法人国民生活センター報道発表資料より)

コミュニケーションを取って信頼関係を築く

──2件とも、親が知らない間に課金が膨れ上がり、気づいたときには相当な金額になってしまっている例です。そもそも、課金トラブルが起こる理由には、親がゲームについてあまり知らないこと、家庭内でルールを作らずにゲームをしてしまっていることが挙げられます。

このようなトラブルを防ぐには、どんなことに気をつければいいのでしょうか?

石田勝紀さん(以下、石田さん):ゲームによって、課金の方法はさまざまです。親が仕組みを知っておかないと、子どもがやりたい放題になってしまう可能性があります。

子どもと一緒にゲームをやってみるのが一番分かりやすいのですが、それが難しい場合、ゲームの内容、課金方法などはある程度知ってから、ゲームをさせるのがいいと思います。

「子どもと雑談をすることで、コミュニケーションが取れ、信頼関係が生まれます」(石田さん)

石田さん:また、子どもがどれくらいゲームしているのか、使用時間もチェックできるようにしましょう。ある程度見守ることができる体制作りが最初は必要で、子どもの行動を把握できていれば、もし課金をしてしまったとしても、親が早めに気づいて対策できるため、高額にはなりません。

そのためにも、子どもと日ごろから雑談をするなど、日常生活で子どもとコミュニケーションを取ることを心掛けてみてください。

このときに、親はつい上から目線で話してしまいがちなので、命令形にならないように気をつけましょう。なぜなら、子どもは親のことを対等だと思っているからです。日ごろから、命令、指示、脅迫、説得調にならないよう気をつけることで、親に隠れてするような行動は避けられると思います。

子どもとコミュニケーションを取った時間に比例して、信頼関係が生まれます。会話の中でポロッと本音が聞き出せることもあるかもしれません。本音を言ってくれないと感じているのであれば、さらに会話を重ねてみてください。

心配だなと思ったら友達の話として聞く

──子どもとの日常会話の中で、「もしかして課金してる? 心配……」と感じることがあったときには、どのように会話を切り出せばよいのでしょうか?

「課金に対して、ではなく、ゲームとどう付き合うかが大切なんです」(石田さん)

石田さん:いきなり「課金してないよね?」とストレートに聞いても、話してくれない場合が多いです。そんなときは「友達で課金してる子がいたりする?」といったように、“友達の話”として聞いてみると、「してる子はいるけど僕はやってない」など、何かしら返事があると思います。

その反応で、「僕はやってない」の主張の仕方がちょっと怪しいな、など、お子さんの異変に気づくこともあるかもしれません。異変に気づいた場合、「大丈夫だと思うけど、あなたが課金したいときは相談してね」と、あくまでも疑っていないスタンスで伝えるようにしましょう。

大切なのは、子どもが言ったことを受け止めはするけど、真に受けないこと。子どもはゲームがやりたくて、その場しのぎのことを言ってしまいがちです。日ごろからどういう行動を取っているか、しっかりと見てあげてください。

ゲームやアプリに無制限に課金をしなければ、課金自体は悪いことではありません。ゲームをすること自体はこの時代の娯楽のひとつであり、ときには学びにつながることもあります。ゲームとどう上手くつきあうかが重要なんです。

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子どもの行動を認識し、親子のコミュニケーションをしっかり取ってゲームと上手くつきあっていけば、「ゲーム課金トラブル」は未然に防ぐことが可能ということがわかりました。

次回2回目では、実務的な防止策と実際に起こってしまった場合の対処法について、引き続き石田さんにお伺いします。

取材・文/石本真樹
撮影/冨貴塚悠太

石田勝紀さんの連載は全3回。
2回目を読む。
3回目を読む。
(※2回目は2023年7月11日、3回目は7月12日公開。公開日までリンク無効)

『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』著:石田勝紀(主婦の友社)
いしだ かつのり

石田 勝紀

教育家

1968年、横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで5万人以上の子どもに学習を指導。指導内容は知識の詰め込みではなく、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱にすることで学力だけでなく、自己肯定感も引き上げる独自のメソッドを確立。 一般社団法人「教育デザインラボ」代表理事。現在は「日本から勉強嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、全国で「カフェスタイル勉強会〜Mama Café〜」を主宰。 主な著書『声かけ×仕組み化×習慣化で変わる! 子どものやる気の引き出し方』(日本能率協会マネジメントセンター)、「中学生の勉強法2.0」(新興出版社啓林館)、「子育て言い換え事典」(KADOKAWA)、「子どものスマホ問題はルール決めで解決します」(主婦の友社) オフィシャルサイト:http://www.ishida.online/ Twitter @ki0701ki 音声配信Voicyで子育て・教育相談毎日配信:https://voicy.jp/channel/1270 

1968年、横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで5万人以上の子どもに学習を指導。指導内容は知識の詰め込みではなく、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱にすることで学力だけでなく、自己肯定感も引き上げる独自のメソッドを確立。 一般社団法人「教育デザインラボ」代表理事。現在は「日本から勉強嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、全国で「カフェスタイル勉強会〜Mama Café〜」を主宰。 主な著書『声かけ×仕組み化×習慣化で変わる! 子どものやる気の引き出し方』(日本能率協会マネジメントセンター)、「中学生の勉強法2.0」(新興出版社啓林館)、「子育て言い換え事典」(KADOKAWA)、「子どものスマホ問題はルール決めで解決します」(主婦の友社) オフィシャルサイト:http://www.ishida.online/ Twitter @ki0701ki 音声配信Voicyで子育て・教育相談毎日配信:https://voicy.jp/channel/1270