親も納得する「ゲーム課金トラブル」に遭わない親子のルール作りとは!?

教育家・石田勝紀さんに聞く、子どもの「ゲーム課金トラブル」の対処法 #3 親子で納得の「ゲーム課金」のルール作り

教育家:石田 勝紀

「ゲームやスマートフォンを子どもに渡す際には、親子で必ずルールを決めましょう」(石田さん)

教育家の石田勝紀さんに聞く、「ゲーム課金トラブル」について。

2回目では、実際に子どもが高額課金をしてしまったときの実務的な防止策と、子どもの金銭感覚の養い方についてお聞きしました。

最終回となる3回目は、スマートフォンやタブレットを操る際のルールの作り方や、ルールを破ってしまったときなどについてお話しいただきます。


(全3回の3回目。1回目を読む2回目を読む

石田勝紀(いしだ・かつのり)
1968年、横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで5万人以上の子どもに学習を指導。指導内容は知識の詰め込みではなく、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱にすることで学力だけでなく、自己肯定感も引き上げる独自のメソッドを確立。一般社団法人「教育デザインラボ」代表理事。

ルールを決めれば親のイライラが減る!

──内閣府が発表した令和3年「インターネット利用上の家庭のルール」によると、「インターネットの使い方に何かルールがあるか?」との問いに対して、「ルールを決めている」が63.4%、「ルールを決めていない」が30.9%で、半数以上の家庭がルールを決めてインターネットを活用していることがわかりました。

さらに、ルールの内容については、「利用する時間」が73.0%ともっとも多く、次にゲームやアプリの利用料金の上限や、課金の利用方法が46.1%となっています。金銭的なトラブルに繫がらないよう、各家庭では、事前にルールを決めていることがわかります。

(出典:内閣府ホームページより)

石田勝紀さん(以下、石田さん):もちろん自由にやらせて上手くいくのであれば、まったく問題はないですが、ルールを決めたほうが親のイライラは減りますよね。そこが、事前にルール決めをおすすめする、最大の理由です。

ゲーム課金に関しても、どっぷりハマってしまうタイプの子だな、と事前に親御さんがわかるならば、最初に細かく課金に関するルールを決めておくのがいいと思います。

親が課金について認識していることは、子どもも認識しています。親子でルールを一緒に決めることで、課金への意識が高まり、多少の抑止力になります。

ただ、端末を持ったばかりのときは、子どももまだ課金がどんなものかがよくわかっていない場合がほとんどです。家庭の方針にあわせて、「課金はNG」、「課金する場合は相談する」など、あらゆる場面を想定してとにかく細かくルールを決めておきましょう。

他にも、「課金がOK」の場合はいくらにするのか、も。例えば、「おこづかいの範囲まで」とか、「何円までならOK」など、取り決めは多岐にわたります。

大切なのは子どもに決めさせること

石田さん:ルールの決め方についてですが、まずは、子どもにどうしたいかを聞いてみてください。最初は、かなりゆるいルールを言うかもしれませんが、まず親御さんは、受け止めてあげること。そのうえで、理由とともに親として譲れないことを提案していきましょう。

親と子どもの意見をすりあわせながら、お互いが納得するルールを丁寧に作っていくこと。

もしルールの決め方が「わからない」と言われたら、「じゃあお母さんが決めていい?」と子どもに許可を取ってから提案してください。親が勝手に決めてしまったルールは、子どもが納得しにくいため、守られないことが多いです。最終ジャッジは子どもにゆだねてください。

「ルールを決めたら、テストランしてみましょう」(石田さん)

──決めたルールがすべて守られることが理想ですが、ゲームにハマるうちにルールを破ってしまうこともあります。もしルールを破られてしまったら、ペナルティは必要ですか?

石田さん:厳しすぎたり、ゆるすぎるルールは、その都度変更できる柔軟なルールにしておくのがおすすめです。ペナルティをもし設ける場合は、軽いものから段々と重くしていくことが上手く運用するコツです。ペナルティが厳しすぎると、ケンカになることがあり、親子関係が悪くなる原因にもつながります。

ルールを決めたら、期間を決めてテストランしてみてください。実際にやってみないと、そのルールが本当に正しいかがわかりませんから。

ルールを守るのが難しいようだったら、見直しましょう。テストランを2回くらい繰り返してみて、安定的に運用できそうだったら、そのルールでスタートしてみてください。

──テストランの際、ルールを守れずに怒ったり、隠れてルールを破ろうとしたりする場合はどうしたらいいでしょうか?

石田さん:子どものパーソナリティによって、ルールの決め方は大きく異なると思います。好きなものにどっぷりハマって見境なくやってしまうタイプの子どもの場合は、ペナルティを与えようとしても、キレてしまうかもしれません。最初の段階から、“キレたらどうするか”まで決めておくといいでしょう。

課金や、その他のトラブルについても、何が起こるかを親子で先回りして考えて、想定できるケースを可能な限りルールに入れておきたいのと、課金には、さまざまなタイプがありますから、ゲームや課金についての基本的なことは親御さんが事前に調べておくといいですね。

そして、もし課金を勝手にしてしまった場合どうするかなど、あらゆるケースを想定問答のように入れておくと、いざというときに役立ちます。親子の契約書を作るという感じでしょうか。

話し合いをする中で、感情的になるときもあるでしょう。そういう場合は、日を改めることをおすすめします。親御さんは、このときも決して上から命令しないこと。険悪な雰囲気になりそうだったら、いったん時間を置けばいいだけですから。終始なごやかに、お互いが嫌な気持ちにならないようにルールを決めていくことが大切です。

ルールを改めて決めるのは覚悟を持って

──ルール決めをしっかり行わずにゲームをやり続けた後、「勉強する時間が減った」、「成績が下がった」などの理由から、改めてルールを決めるのは難しいのでしょうか。

石田さん:これは、今まで自由にできていた子どもを納得させないといけないわけですから、相当な覚悟が必要です。厳かな雰囲気を出しながら家族会議を行いましょう。とにかく大変なことが起こっているから、ルールを決めないといけないという親の本気を子どもに伝えることが大切です。

1回目のときと同様に、親御さんは、いつもと違うんだということがわかるように、低めのトーンでゆっくりと話すようにしましょう。ただし、ここでも命令の言葉は決して使わないこと。基本的な決め方は、ゲームを始める前のルール作りと一緒です。

「親御さんは、お子さんがどのように動くかをしっかり見てあげてください」(石田さん)

石田さん:ビジネスでよく使われるのですが、京セラ創業者である故・稲盛和夫氏の「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」という言葉があります。

最悪を想定してすべて決めておいて、いったんルールができたら楽しんでみる、というように、この言葉はルール決めにも当てはまっていると思うんです。

子どもがトラブルに巻き込まれないように導いてあげること。それが親の責任です。まずは、親子で決めたルールで、子どもがどう動くのかをしっかり見てあげてください。その後、子どもが自分でコントロールできるようになったら、プレイする時間を延ばしてあげればいいだけですから。

また、親子で雑談をして、コミュニケーションを取ることも大切です。子どもが本音を話してくれているうちは、課金トラブルは起こりません。共に学んで、教訓にしながら一緒に考える。ルール決めは大変ですが、親子で取り組んでみてくださいね。

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「子どもの意見を受け止めてから、親の意見を提案する」という、石田さんのルール決めの方法であれば、親も子も納得したうえでルールが決められそうです。

子どもが楽しくゲームができるよう、ぜひ親子で一緒に考えてみてください。

取材・文/石本真樹
撮影/冨貴塚悠太

石田勝紀さん「課金とトラブル」の記事は全3回。
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いしだ かつのり

石田 勝紀

教育家

1968年、横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで5万人以上の子どもに学習を指導。指導内容は知識の詰め込みではなく、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱にすることで学力だけでなく、自己肯定感も引き上げる独自のメソッドを確立。 一般社団法人「教育デザインラボ」代表理事。現在は「日本から勉強嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、全国で「カフェスタイル勉強会〜Mama Café〜」を主宰。 主な著書『声かけ×仕組み化×習慣化で変わる! 子どものやる気の引き出し方』(日本能率協会マネジメントセンター)、「中学生の勉強法2.0」(新興出版社啓林館)、「子育て言い換え事典」(KADOKAWA)、「子どものスマホ問題はルール決めで解決します」(主婦の友社) オフィシャルサイト:http://www.ishida.online/ Twitter @ki0701ki 音声配信Voicyで子育て・教育相談毎日配信:https://voicy.jp/channel/1270 

1968年、横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで5万人以上の子どもに学習を指導。指導内容は知識の詰め込みではなく、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱にすることで学力だけでなく、自己肯定感も引き上げる独自のメソッドを確立。 一般社団法人「教育デザインラボ」代表理事。現在は「日本から勉強嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、全国で「カフェスタイル勉強会〜Mama Café〜」を主宰。 主な著書『声かけ×仕組み化×習慣化で変わる! 子どものやる気の引き出し方』(日本能率協会マネジメントセンター)、「中学生の勉強法2.0」(新興出版社啓林館)、「子育て言い換え事典」(KADOKAWA)、「子どものスマホ問題はルール決めで解決します」(主婦の友社) オフィシャルサイト:http://www.ishida.online/ Twitter @ki0701ki 音声配信Voicyで子育て・教育相談毎日配信:https://voicy.jp/channel/1270