子どもはなぜ「鼻血」をよく出すの? 正しい止め方は? 耳鼻科医に聞いた

耳鼻科医・笠井創先生「子どもの耳鼻トラブル」#4 鼻血の止め方

子どもは鼻血をよく出すものです。「公園で転んだら、鼻血が出て大変なことに!」「朝起きたら、鼻血まみれでびっくり!」といった経験のあるママやパパも多いでしょう。

わが子の鼻から真っ赤な血が流れ出ているのを目の当たりにすると、親は慌ててしまうもの。

そこで今回は、子どもの耳鼻ケアに詳しい 耳鼻科医の笠井創先生に、「鼻血の原因」や「正しい止血方法」などについて教えていただきました。(「子どもの耳鼻トラブル」全4回の4回目。#1#2#3を読む)

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鼻血の止め方は、昔の対処法から変わっていることが多いので注意が必要です。(写真はイメージです)
写真:アフロ

子どもはなぜ鼻血をよく出すの?

子どもの鼻血のほとんどは、「キーゼルバッハ部位」からの出血です。キーゼルバッハ部位とは、鼻中隔(鼻を左右に仕切る壁)にある、鼻の入り口から1.5cmくらいの範囲。おおよそ人差し指を鼻の穴に入れたときに、指の腹が触れるあたりです。

このキーゼルバッハ部位にはたくさんの血管が集まっているのですが、皮膚が非常に薄いので、わずかな傷で簡単に出血してしまいます。子どもはよく鼻をいじったり、ぶつけたりするので、しばしば鼻血を出すのです。

覚えておこう!鼻血の止血方法

ママやパパは、いつ子どもが鼻血を出しても慌てないように対処法を覚えておきましょう。大量に血が出ていると焦ってしまいますが、きちんと処置すれば大丈夫。落ち着いて対応しましょうね。

1.前かがみの姿勢にする

鼻血がのどに回らないようにするため、前かがみにさせます。鼻血が奥に流れてのどに落ちた場合、飲み込んでも害はありませんが、血の味で気持ち悪くなることもあるので吐き出させるほうがいいでしょう。

2.脱脂綿を鼻の穴に詰める

脱脂綿を子どもの親指の先くらいの大きさに固めて、出血している鼻の穴に詰めます。スカスカでなく、少しきつめなくらいにしましょう。詰める前にワセリンかオリーブ油を脱脂綿の表面に薄く塗っておくと、するりと抜きやすくなります。

ティッシュペーパーも使えますが、抜き取るときに固まりかけた粘膜の表面をはがしてしまって再出血することがあるので、脱脂綿がベストです。また、出血が多い場合は、のどを経由して反対の穴から出てくることもあるので、どちらから出ているかわからないときは両穴に詰めましょう。

3.親指と人差指で尾翼を強くつまんで10分待つ

尾翼とは、いわゆる「小鼻」。鼻をふくらませるときに動く軟らかい部分です。尾翼は強く押さえても痛くない部位なので、ためらわずにぎゅっと押さえてください。

このとき出血側の鼻だけ押さえれば止血できますが、子どもの鼻は小さくて押さえにくいので、両鼻をつまむほうがしっかり圧迫できます。10分程度、そのまま待ちましょう。

正しく圧迫できていれば、まもなく出血は止まります。途中、様子を見て血が完全に止まっていれば、10分経たなくても圧迫を終了して構いません。

圧迫している間に脱脂綿が血で染まっていくようであれば、止血できていない証拠。圧迫している場所がちがうか、つまむ力が足りていないはずです。このときは新しい脱脂綿に替えて、圧迫し直しましょう。

ちなみに、昔は鼻血が出たら「上を向く」「首の後ろを叩く」といった対処法も広まっていましたが、正しい対応ではないので注意してくださいね。

こんなときは病院へ

15分以上経っても出血が止まらない場合は、しっかり圧迫できていないので、耳鼻科で処置をしてもらいましょう。一度止まった後も、半日〜3日程度の間で繰り返す場合は、キーゼルバッハ部位ではなく、奥の血管が傷ついている可能性もあるので受診してください。

また、鼻の中をまったく傷つけていないのに頻繁に出血を繰り返したり、ダラダラ出血が続いたりするような場合は、ごくまれに白血病や血友病などの可能性も。耳鼻科や小児科で出血の原因を調べてもらいましょう。

鼻血が出た後の生活の注意点

止血できた後は、遊びや入浴なども普通にして大丈夫。出血部位は、半日くらいでカサブタができて落ち着いてきます。

ただ、新しい粘膜ができあがる1週間くらいまでは出血しやすいので、鼻への強い刺激は避けましょう。とくに顔を拭いたり、洗ったりするときに、鼻を強くこすりやすいので要注意。外側からの刺激でも粘膜が傷つくことがあるので、ゴシゴシしないように気をつけてください。

鼻血の回数を減らすための工夫

鼻の保湿や爪切りで、鼻ほじりが原因の鼻血の回数は減らせます。(写真はイメージです)
写真:アフロ

鼻血の原因で多いのは、子どもが自分の指でキーゼルバッハ部位を傷つけることです。

鼻の中や入り口がかゆいと、子どもは無意識に鼻をほじります。「子どもが朝起きたら、鼻血まみれでびっくり!」というのも、ほとんどは睡眠中の鼻ほじりが原因でしょう。

とくに鼻が乾燥しているとかゆみがでやすくなるので、鼻の穴のまわりや入り口にワセリンを塗って、湿った状態にしてあげましょう。寝る前に鼻くそが詰まっていたら取り除いて。爪を短く切って、鼻の中を傷つけにくくしておくことも有効です。小さなお子さんで、睡眠中の鼻ほじりが頻回な場合は、手袋をしてもいいですね。

子どもに「鼻に指を入れてはダメ」と教えても、かゆみはがまんできません。「できるだけかゆくならないように事前のケアを」「うっかり指を入れても傷つけないように予防を」と考えてあげると、鼻血の回数を減らせるでしょう。

取材・文/片桐はな

※「子どもの耳鼻トラブル」の連載は全4回。
#1「耳掃除編」
#2「鼻水編」
#3「鼻詰まり編」

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笠井 創

笠井耳鼻咽喉科クリニック自由が丘診療室院長

笠井耳鼻咽喉科クリニック自由が丘診療室院長。千葉大学医学部大学院卒。国立がんセンター病院、横須賀共済病院等を経て現職。開業以来、患者さんからよく受ける質問をQ&A形式でクリニックHPに掲載。「お母さんのための小児耳鼻咽喉科」コーナーでは、子どもによくある耳・鼻・のどのトラブルに関する質問にきめ細かく回答している。 笠井耳鼻咽喉科クリニックHP -エポック社公式Instagram  https://www.instagram.com/epoch1958_jp/?hl=ja

笠井耳鼻咽喉科クリニック自由が丘診療室院長。千葉大学医学部大学院卒。国立がんセンター病院、横須賀共済病院等を経て現職。開業以来、患者さんからよく受ける質問をQ&A形式でクリニックHPに掲載。「お母さんのための小児耳鼻咽喉科」コーナーでは、子どもによくある耳・鼻・のどのトラブルに関する質問にきめ細かく回答している。 笠井耳鼻咽喉科クリニックHP -エポック社公式Instagram  https://www.instagram.com/epoch1958_jp/?hl=ja