子どもの耳掃除は必要?不要?どうする? 耳鼻科医に聞いた正解

耳鼻科医・笠井創先生「子どもの耳鼻トラブル」#1子どもの耳掃除

子どもは耳掃除をしなくていいって本当!?
写真:アフロ

子どもの耳掃除をするときに「じっとしてくれないので怖い」という人は多いのではないでしょうか。親としては「耳あかは取ってあげたいけど、耳を痛めたら困るし…」と悩むところですよね。

しかし、近年では「おうちでは耳掃除をしなくていい」という説があります。「結局、家ではどうするのが正解なの?」ということで、子どもの耳鼻ケアに詳しい耳鼻科医の笠井創先生に、耳掃除について教えてもらいました。(全4回の1回目)

そもそも耳掃除って必要? 必要ない?

自分が子どものときを思い返すと、「親に耳掃除をしてもらった」という人もいるでしょう。確かに以前は、「きちんと耳掃除をしないと、耳が詰まったり、かゆくなったりする」と考えられていたので、親が子どもの耳掃除をするのが普通でした。

しかし、現在では「毎日の耳掃除は必要ない」というのが定説です。

耳あかはホコリやゴミではなく、耳の穴の奥にある鼓膜や外耳道などからできたもの。鼓膜や外耳道は皮膚の膜で、常に新陳代謝によって新しいものに作り替えられています。そして古くなった鼓膜や外耳道の皮膚ははがれて、皮脂腺からの分泌物が混じって耳あかになります。そして、耳の入り口までゆっくりと押し出されてきて、自然に外に排出されます。

この自浄作用があるので、そもそも「毎日おうちで耳掃除しなければいけないほど、耳あかは溜まらない」のです。

逆に、綿棒や耳かきで掃除すると、入り口付近まで出てきた耳あかを奥に押し込んで、たくさん溜めてしまい、外耳道をふさぐ「耳垢栓塞(じこうせんそく)」になることもあります。この場合、音の聞こえが悪くなったり、耳鳴りがしたり、痛みが出たりします。

また、耳掃除によって耳の中に小さな傷ができて雑菌が入り、炎症を起こしてかゆみを引き起こすこともあります。

こうしたことから、今では、「毎日耳掃除する必要はない」とされています。とはいえ、それは子どもの耳のことを「まったく気にしなくていい」という意味ではありません。新生児とそれ以降で必要なケアが異なるので、それぞれ紹介します。

新生児は沐浴後に耳の入り口をやさしく掃除して

新生児の耳には、胎内にいるときにできた胎脂(たいし)が詰まっていることがあります。生まれたばかりの赤ちゃんの耳にも自浄作用があり、生後6ヵ月くらいまではこの胎脂が徐々に押し出されてくるので、毎日沐浴のあとに耳の入り口の見える範囲をそっとやさしく綿棒でふいてあげましょう。

赤ちゃんの耳の中は見えませんが、もし耳に胎脂が詰まっていてもとくに害はないので、中まで無理に掃除しようとしないでくださいね。綿棒を突っ込んで、耳の中を傷つけてしまうことのほうが心配です。

耳の中が気になるようであれば、産後の定期健診や、風邪などで小児科や耳鼻科にかかったときに診てもらいましょう。

生後6ヵ月 くらいまでは、綿棒でケアを。
写真:アフロ

生後6ヵ月以降は、半年に1回、耳鼻科で耳掃除を

生後6ヵ月を過ぎると耳の中の胎脂はなくなるので、毎日の拭き取りは不要になります。その後は、耳のトラブル予防として、半年に1回ほど耳鼻科を受診し、耳掃除をしてもらいましょう。

自浄作用があるとはいえ、中には、耳あかが湿っている、外耳道が狭いなど、耳あかが溜まりやすい体質の子もいます。耳を痛がって受診したとき、耳あかが多くて耳の奥が見えないと診断がつきません。ただし、子どもが耳を痛がっているときにおうちで耳掃除をするのは、お子さんも嫌がりますし、親も上手にできるか心配です。

耳あかは耳鼻科で取ってもらうのが最も安全で確実です。「耳掃除だけで耳鼻科に行ったら、先生にイヤがられない?」などと心配しなくて大丈夫。最近は耳掃除だけで受診する人も増えてきています。目安は半年に1回ですが、体質的にもっとこまめに耳掃除をしたほうがいい場合には、「次は◯ヵ月後に来てください」と促してもらえるでしょう。

たまにペンライトでチェックして、何かあれば耳鼻科へ

おうちでは2〜3ヵ月に1回を目安に、耳の穴の奥をペンライトなどで照らしてチェックしてみてもいいでしょう。多少耳あかがあるのは当たり前なので、そのままで大丈夫。もしも耳あかではなさそうな異物があったり、奥がふさがっていたりする場合には、耳鼻科で相談してください。

この他にも、子どもが耳を気にしていたり、痛がったりするときはすぐに耳鼻科を受診しましょう。

取材・文/片桐はな

※「子どもの耳鼻トラブル」の連載は全4回。
#2は21年11月11日、#3は21年11月15日、#4は21年11月18日の公開予定です(公開日までリンク無効)。

かさい はじむ

笠井 創

笠井耳鼻咽喉科クリニック自由が丘診療室院長

笠井耳鼻咽喉科クリニック自由が丘診療室院長。千葉大学医学部大学院卒。国立がんセンター病院、横須賀共済病院等を経て現職。開業以来、患者さんからよく受ける質問をQ&A形式でクリニックHPに掲載。「お母さんのための小児耳鼻咽喉科」コーナーでは、子どもによくある耳・鼻・のどのトラブルに関する質問にきめ細かく回答している。 笠井耳鼻咽喉科クリニックHP -エポック社公式Instagram  https://www.instagram.com/epoch1958_jp/?hl=ja

笠井耳鼻咽喉科クリニック自由が丘診療室院長。千葉大学医学部大学院卒。国立がんセンター病院、横須賀共済病院等を経て現職。開業以来、患者さんからよく受ける質問をQ&A形式でクリニックHPに掲載。「お母さんのための小児耳鼻咽喉科」コーナーでは、子どもによくある耳・鼻・のどのトラブルに関する質問にきめ細かく回答している。 笠井耳鼻咽喉科クリニックHP -エポック社公式Instagram  https://www.instagram.com/epoch1958_jp/?hl=ja