「子どもの権利」を守ると子どもの約7割の「自己肯定感」が高く! 69地域に拡がった「子どもの権利条例」想定外の効果
子どもの権利条約批准30周年“子どもの権利”の現在地#3~「子どもの権利条例」がもたらしたもの~
2024.12.28
フリーライター:浜田 奈美
子どもの声を理解しない大人たち
「子どもの権利保障に対して強い抵抗を示す大人は、いまだに存在しますね」と苦笑いするのは「子どもの権利条約総合研究所」顧問で早稲田大学名誉教授の喜多明人さんです。喜多さんは川崎市を皮切りにさまざまな自治体の「子どもの権利」関連の条例づくりに関わってきました。
数年前に条例づくりの手伝いを手掛けた自治体でのことです。喜多さんはまず地域の子どもたちにヒアリングをし、子どもたちの声から条例案を立ち上げる作業を続けました。ある不登校の高校生に「学校に行かなくなった理由」を聞いたところ、こう答えたそうです。
「学校ってすごく忙しいところで、考える暇がないんです。ひとつ課題をクリアしたと思ったら、またすぐ次の課題で、自分なりに考えたいことがあるのに、時間がない。学校に行かなくなったのは、自分を守るためです」
そこで喜多さんが考えたのは「休息する権利」でした。条文だけではなく、欧州にある「短期休暇制度」を制度化することで、実際に休息しやすい環境を整えようとしたところ、学校現場と一部のメディアから「ずる休みさせる気か」と大反発され、実現しませんでした。
そして「自分の意見を表明する権利」は、今やほとんどの自治体の条例に組み込まれているものの、実際に子どもが「意見表明」する段階になると、大人たちは自分の意見を強く主張し、子どもの権利が守られずに終わる状況は、至るところで現存しています。
また子どもの側も、おおやけの場で意見表明することを望まなくなっている傾向があるそうです。
「ある自治体で『子ども会議』を条例に明文化しようとしたら、市の若い職員から止められました。『喜多先生それやめましょう。子どもたち、嫌がってます』って言われてしまいました」
デジタル世代のコミュニケーションでは、対面で率直に意見することは「いじめ」の対象になるリスクを伴うようです。「転換点なのかなと思いました」と喜多さん。