子どもが「課金ゲーム」ガチゲーマー医師のスゴいアドバイスとは

子どもが健康的にゲームを楽しむために #3

山口 真央

ゲーム時間や課金の問題に、親子で取り組む解決法を、医師で「Dr.GAMES」代表の近藤慶太さんと理事の阿部智史さんに伺った(写真:アフロ)
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子どもがゲームをやめられないとき、どのように対処していますか。言葉で注意してもきかないときは、無理やりゲームを取り上げてしまうこともあるのではないでしょうか。

一般社団法人「Dr.GAMES」代表の近藤慶太さんと理事の阿部智史(さとし)さんは、子どもから強制的にゲームを奪ってしまうのは、親子関係に亀裂をうみ、子どもがよりゲームに執着する可能性があると話します。

この記事では、医療とゲームを掛け合わせて、人々の健康に寄与したいと考えている「Dr.GAMES」の近藤さんと阿部さんに、ゲーム時間や課金の問題に親子で取り組む解決法と、未来を生きる子どもたちがゲームを遊ぶことのメリットについて伺いました。

<子どもが健康的にゲームを楽しむためにシリーズ>
第1回
ゲームで受験失敗…医師になったガチゲーマーが「ゲーム業界に恩返し」したいワケ
第2回
「ゲーム障害」は依存症…子どもから奪うのがNGな理由「専門家に頼るタイミング」医師が解説 
第3回 ←今回はココ
子どもが「課金ゲーム」ガチゲーマーの医師からのスゴいアドバイスとは

Dr.GAMES代表で総合診療専門医の近藤慶太さん
Dr.GAMES理事で総合内科医/家庭医の阿部智史さん

ゲームの問題は親子の「学び」に転換しよう

──「子どもが休みの日にゲームばかりやっている」といった、ゲーム時間についての悩みをよく聞きます。どのように対処していけばいいでしょうか。

阿部智史さん(以下阿部、敬称略):ゲームを楽しんでいるお子さんに、親御さんの一方的な押しつけだけで、ゲーム時間を管理するのはよくないと考えています。まずは、お子さんと相談して「ゲームは◯時間。宿題を終えてから」などと、ルールを決めてみてはいかがでしょうか。

ルールを決めても、守ることに固執しすぎないほうがいいでしょう。親御さんは、ルールは破られるものだと捉え、広い心で取り組んでほしいです。

▲まずは親子で話し合ってゲームで遊ぶルール作りを。ルールを守ることに固執しすぎず、それぞれの環境にあった内容に調整するのがベスト(写真:アフロ)

阿部:守れなかったときは、守れなかった理由を親子で話し合って微調整しながら、それぞれの環境にあったルールにつくり変えてみてください。こういった話し合いを、家族のコミュニケーションとして活用できたらいいなと思います。

また親御さんは3時間ゲームしているのに、お子さんには1時間と制限していては、親子の信頼が築かれません。お子さんにルールを設けるなら、親御さんの行動も見直す必要があるでしょう。

悩ましい「課金」問題は?

──子どもにルールを押しつけるのではなく、話し合いをベースに取り組むことが大切ですね。ゲーム課金については、どのようにお考えですか。

阿部:ゲーム課金と言っても、いろいろなシステムがあります。おすすめできないのは、キャラクター強化や装備強化を目的とした「ガチャ課金」です。

私自身、ガチャ課金が大好きなのですが、際限なく課金したくなる仕組みになっているので、お子さんが取り組むには注意が必要です。

安心なのは、定額で支払いのある「パス課金(※)」と呼ばれるもの。月々決まった値段を支払えば、アイテムなどが必ずもらえるという仕組みです。これなら際限なくお金を払うこともありません。

(※パス課金:「月パス」「シーズンパス」などがある。特定の商品ごとに購入金額を支払うのではなく、月額制や一定期間の利用権として料金を支払う方式)

近藤慶太さん(以下近藤、敬称略):時間のルールと同様に、お金のトレーニングとして活用してみるのはアリです。

1ヵ月に課金につかえるお金を決めれば、自然と、ゲームをクリアするためには、どのアイテムを買うのが最適なのかを考えるようになります。この考え方を身につけておけば、将来自分でお金を稼ぐようになってからも、役に立つでしょう。

ゲーム課金や時間について、もしお子さんが行き過ぎたゲームをしていて手に負えないと感じたら、ぜひ専門家に頼ってください。私たちDr.GAMESでは、インターネットやゲームの過剰利用や、依存に困っている人同士の相談会をおこなっています。

ゲームを通して感情のコントロールを身につける

──ゲームが将来に役に立つ、という話ですが、実際にゲームをやっていて実生活に役に立ったと思うことはありますか。

阿部:ゲームは常に何らかのタスクが与えられて、それを超えていくことを求められます。魔王を倒すために、旅の道中で仲間を増やすとか、洞窟にいって剣を入手するとか。

そうやって少しずつ壁を超えていく楽しさを知っているので、いま医師として働いていても、ひとつひとつのタスクをこなす能力は身についていると感じます。

あとは、ゲームをやっていると負けて悔しい思いをすることが結構ある。ゲーマーは必ず乗り越えなければいけない壁で、これができると、感情のコントロールが上手にできるようになります。

少なくともesports(※)で戦っている人たちは、負けるたびにいちいち怒っていたら試合になりません。プロで活躍している人の多くが、怒りのコントロール、つまりアンガーマネージメントがうまくできていると思います。

(※esports(eスポーツ):電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉で、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称)

「学び」に役立つゲーム

──具体的に、どういったゲームで遊ぶと役に立つのか、いくつかゲームを取り上げて教えてもらえますか。

阿部:知識がつくという意味では「桃太郎電鉄」で遊べば、日本全国の特産品や、地理が覚えられます。

「あつまれ! どうぶつの森」は自然の仕組みや、四季の生き物を覚えることができます。言語選択で英語を選べば、遊びながら英単語を学ぶこともできます。

▲ゲームをテーマにした学習図書や図鑑もある
「あつまれ どうぶつの森 島の生きもの図鑑」「桃太郎電鉄でポイント135 日本地理まるわかり大図鑑」

阿部:「マインクラフト」は、想像したものをつくったり、回路の仕組みを考えたり、工学的なロボットをつくる人の素養につながるでしょう。

「ポケットモンスター」は、ポケモンの能力値や技の数値を覚えたり計算することも重要なので、算数と記憶力が養われます。

さまざまなゲームから価値観やストーリーに触れることが大事

──ありがとうございます。上手につきあえば、ゲームは学びに繫がることがわかりました。最後に、ゲームが好きなお子さんと、そんなお子さんを持つ親御さんに向けて、メッセージをいただけますか。

近藤:ゲームのいいところは、さまざまな価値観に触れられることだと思います。私が一番好きなゲームは「ファイナルファンタジーⅩ」ですが、このゲームから、人生の大事なことをたくさん教えてもらいました。

ストーリーがとにかく素晴らしくて、小説の内容ぐらい完成度が高い。登場人物が残した名言には、何度も助けられてきました。

このゲームに限ったことではなく、さまざまなゲームから、価値観やストーリーに触れることがとても大事だと思っています。

▲「さまざまなゲームから、価値観やストーリーに触れることがとても大事」とゲーム愛を語ってくれた近藤先生

阿部:私はゲーム障害に近い状態まで、ゲームに没頭した時期がありました。しかし医師として働いてもなお、ゲームを続けています。改めて思うのは、ゲームってやっぱり単純に楽しいってことです。

子どものころはもちろんこの年齢になっても、ゲームが楽しいと思い続けています。仕事のストレスをゲームで発散して、また仕事をがんばることができる。ゲームで遊ぶことが、人生のクオリティを上げることのひとつと考えてます。

▲ゲームに没頭しすぎたこともあったが「ゲームで遊ぶことが、人生のクオリティを上げることのひとつ」と語る阿部先生

阿部:ゲームが好きなお子さんをお持ちの親御さんは、お子さんから簡単にゲームを取り上げないでください。ゲームが好きなことは、将来的な財産になります。ゲームにハマりすぎてしまっても、大丈夫。私たちと一緒に、解決法を考えていきましょう。

【Dr.GAMES阿部智史さん、近藤慶太さんへのインタビューは全3回。第1回は、阿部さんの半生と、Dr.GAMESを立ち上げた経緯について、第2回では、ゲーム障害の定義とゲームに熱中しているお子さんとのつきあい方について、第3回では、ゲーム課金や時間についての解決法と、ゲームを遊ぶことのメリットについて伺います】

コクリコ編集部おすすめのゲームで学べる本

あつまれ どうぶつの森 島の生きもの図鑑
桃太郎電鉄でポイント135 日本地理まるわかり大図鑑
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一般社団法人

Dr.GAMESは、ゲームと医療の掛け合わせによって、人々の健康に寄与する活動を行う一般社団法人。総合内科医、総合診療医/家庭医、精神科医、外科医、救急看護師、薬剤師ら医療職とゲームクリエイターによって構成されている。 事業内容は、esportsアスリートの健康管理、esports大会の医療サポート、医療監修/ゲーム障害、ゲーム依存症の治療法についての研究と啓発/医療知識の啓発のためのゲーム作り、ゲームを用いた治療法の探索、など。 Dr.GAMES Webサイト https://dr-games.jp

Dr.GAMESは、ゲームと医療の掛け合わせによって、人々の健康に寄与する活動を行う一般社団法人。総合内科医、総合診療医/家庭医、精神科医、外科医、救急看護師、薬剤師ら医療職とゲームクリエイターによって構成されている。 事業内容は、esportsアスリートの健康管理、esports大会の医療サポート、医療監修/ゲーム障害、ゲーム依存症の治療法についての研究と啓発/医療知識の啓発のためのゲーム作り、ゲームを用いた治療法の探索、など。 Dr.GAMES Webサイト https://dr-games.jp

やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。