
「やさしい先生」こそ要注意? 日本版DBSでは防げない「グルーミング」と「男児性被害」の深刻な実態[専門家が監修]
加害者臨床の専門家・斉藤章佳先生インタビュー #2「性加害が起きる構造」 (3/3) 1ページ目に戻る
2026.02.27
西川口榎本クリニック副院長:斉藤 章佳
もうひとつ、近年の小児性被害の傾向として増えてきているのが、被害者が男児であるケースです。
「なかでも多いのが盗撮です。とくに男子トイレですね。公園やショッピングモール、映画館などの公衆トイレは、いわゆる“性加害が起きやすい構造”になっている場所が多いです」(斉藤先生)
公衆トイレの多くは、奥行きがあり、入りやすくて外から見えにくい。さらに、男子トイレは用を足す際にプライベートゾーンが露出しやすいことも一因です。小学校に入ると、ひとりでトイレに行く子が増えることから、「非常に盗撮しやすい場所」だと斉藤先生は指摘します。
「隣の小便器に立ち、用を足すふりをしながらスマホを起動させて、子どもが膝下までズボンをおろし排尿している様子を隣で用を足しながら撮影する人がいます。信じられないかもしれませんが、事実です」(斉藤先生)
男児が狙われやすい理由は、性的指向だけではありません。
「男児のほうが声を上げにくい」「警戒心が薄い」「男児のほうがズボンを脱いでしまいやすい」「何をされてるかわかっていない」など、多くの性加害者は、男児ならではの無防備さを理解したうえで、加害行為に及んでいるといいます。
「男の子のほうが加害しやすく、バレづらいんです。こうして盗撮された映像は、そこで終わりではありません。撮った映像を使って、あとから脅迫することもできますし、そこからいろんな“次の加害の選択肢”が広がっていくんです」(斉藤先生)
小児性被害というと「女児が遭うもの」という思い込みを持ちがちですが、男児も決して例外ではありません。むしろ“気づかれにくい形”で被害に遭っているケースも多いのです。
オンライン・グルーミングをはじめ、こうした被害の多くは、日本版DBSの射程外で起きています。制度だけに頼らず、私たち自身の思い込みも含めて、別の角度からの対策を考えていく必要があることを改めて突きつけられます。
制度+環境デザインで防犯率を上げる
日本版DBSに加えて、斉藤先生は「環境そのものを変えていく視点も大切」と話します。その際に重要になるのが、「犯罪機会論」をベースにした環境デザインです。
犯罪は、個人の動機だけで起きるものではなく、「加害できる環境」がそろったときに初めて起こる。そのような視点で考えるのが犯罪機会論で、いまや防犯対策の分野ではグローバルスタンダードになっています。
「防犯カメラを増やすばかりでなく、性加害をしようと考えている人が『ここではやめよう』と思いとどまる環境をつくることが重要です。
例えば、見通しの悪い茂みを減らし、誰の目にも入りやすい動線を確保するなど、こうした環境デザインの研究は、海外ではすでに進んでいます。
その知見をもっと活かして、学校や公園、トイレなどを、性加害が起きにくい環境にしていくことが必要だと思います」(斉藤先生)
制度で排除できるリスクもあれば、制度の網をすり抜けてしまうリスクもある。さらに言えば、そもそも日本版DBSの守備範囲の外で起きている被害も少なくありません。
そうした現実を前提に、私たちは“別の守り方”を学んでいく必要があるのではないでしょうか。
次回は、日本版DBS時代に必要な「親の眼力」と「社会づくり」をテーマに、親として何に気づき、どう補っていくべきなのかを、引き続き斉藤先生に伺っていきます。
取材・文/稲葉美映子
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稲葉 美映子
フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。
フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。




































斉藤 章佳
専門は加害者臨床で、25年以上にわたりアルコール依存症を中心にギャンブル・薬物・摂食障害・性犯罪・児童虐待・DV・クレプトマニアなどさまざまなアディクション(依存症)問題に携わる。 現在まで治療に関わった性犯罪者の数は3500人以上、小児性犯罪者は300人以上。プログラム・ディレクターとして、性加害者の家族支援も含めた包括的な地域トリートメントに関する実践・研究・啓発活動に取り組んでいる。 著書に『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)、『「小児性愛」という病─それは、愛ではない─』(ブックマン社)、『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)、『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)、『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』(朝日新書)、共著に漫画『10代のための「性と加害」を学ぶ本』(時事通信出版局)などがある。
専門は加害者臨床で、25年以上にわたりアルコール依存症を中心にギャンブル・薬物・摂食障害・性犯罪・児童虐待・DV・クレプトマニアなどさまざまなアディクション(依存症)問題に携わる。 現在まで治療に関わった性犯罪者の数は3500人以上、小児性犯罪者は300人以上。プログラム・ディレクターとして、性加害者の家族支援も含めた包括的な地域トリートメントに関する実践・研究・啓発活動に取り組んでいる。 著書に『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)、『「小児性愛」という病─それは、愛ではない─』(ブックマン社)、『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)、『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)、『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』(朝日新書)、共著に漫画『10代のための「性と加害」を学ぶ本』(時事通信出版局)などがある。