ママから「子育て戦力外」と通告され、子育て&家事にはまったく携わってこなかったフリーライターのパパ(46歳)。そんな2021年7月、ママが突然、脳出血で倒れて入院。パパの生活は激変し、急遽「ワンオペ育児」がスタートしました。
それから4ヵ月が過ぎ、「ワンオペ育児」にもだいぶ慣れてきたパパ。大変なことが多かったものの、ママ不在の生活は自分と子どもにとって大きな成長にもつながったと感じるようになりました。
ママの入院をきっかけに、変わり始めたある家族の奮闘記。
第5回は「ワンオペ育児で得たもの編」です。(第1回#1、第2回#2、第3回#3、第4回#4を読む)
妻の入院が貴重な経験と学びをもたらしてくれた
「子育て戦力外」から「ワンオペ育児」にいそしむ生活は、決して悪いことばかりではない。
妻が倒れてから4ヵ月ほどが経過し、ワンオペ育児生活にも慣れたせいか、そう思える余裕が出てきた。
まず、それまでと違って、子どもたちとコミュニケーションをとる機会が急増。娘の好物が“しらたき”であること、息子が苦手なものが“あんこ”と“コーン”であることを知ることができた。
多少なりとも、親らしいことをしてあげられたのもいい経験だ。長女の学校のイベント時には、お弁当作りに初挑戦。といっても、ウインナーとレタス、ミニトマト以外は、コンビニの惣菜をお弁当箱に移し替えただけだが、完成したときには妙な達成感を味わえた。
はりきって、息子の散髪にもトライ。野球少年の息子は丸刈りにしておけば満足なので、ずっと使っていなかったバリカンを引っ張り出してきた。
ところが、6mmの長さに設定してカットしたつもりが、なぜか1mmに……。どうやら、アタッチメントをつけ忘れていたようだ。幸いなことに、息子はさほど気にしてはいなかったようでひと安心。
仕事と家事の時間のやりくりにも、だいぶ慣れてきた。ダラダラと机に向かっていた以前と違い、「ゴハンの準備までに〇〇を終わらせよう」と、目標を決めて仕事に取りかかるように。そうすることで、集中力がグンと高まった。
時間管理で重宝したのが、スマホのアラーム機能。仕事に集中して夕食の用意や娘の塾の迎え、息子のスイミングスクールや少年野球の送り迎えを忘れてしまわないよう、予定の時間になるとアラームで知らせるようにしたのだ。
ただ、ある週末の午後、パソコンに向かったまま寝落ち……。少年野球の練習に参加していた息子の迎えをブッチしてしまい、子どもを指導してくれているお父さん方に自宅まで連れ帰ってもらったことが二度もあった。
練習にも参加できないうえに、迎えにも行けないなんて、ホント情けない限りだ。チームのお父さん方、その節は申し訳ありませんでした!
それまでと比べて、接する機会が格段に増えた我が家の救世主・義母のスタンスからも、大きな学びを得ることができた。義母がいるときは完全に甘えて何もやらなかった僕だが、それを責めるようなことを言われたことは一度もなかった。
子どもの悪いところを見つけては、イライラしてシャウトしまくっていた僕とは大違い。義母は40年以上にわたって保育園の運営を手がけており、いわば“子育てのエキスパート”。彼女から、あたたかい目で子どもを見守ることの大切さを学んだ。
口答えが上手になった子どもたちを見て成長を実感
身のまわりの世話をしてくれていた母親がいなくなって、子どもたちも少しは成長したようだ。
いちいち言わなくても、率先して食器を片付けたり、洗濯物をタンスにしまったりするようになった。あいかわらず部屋は汚いままだったが、ゴミが散乱するようなことも減ったような気がする。
それでもときどき、「はよ、やらんか!」「ゴミ、捨てんか!」と注意することはあるが、「やろうと思っていたところ」「わざと置いてるの」というリアクションが返ってくるように。
イラッとしながらも、口答えが上手になった娘と息子の様子を見て、「成長したなぁ」と思わず感動してしまった。
イライラさせられることも多いが、ワンオペ育児に苦戦する僕を救ってくれるのもまた、子どもたちだった。
唐突に原形をとどめていないほどの変顔を披露してくれる娘や、100円ショップで購入した視力矯正メガネをかけてウクレレをかき鳴らす息子の明るさには、本当に救われた。
ちなみに、子どもたちが「お母さんがいなくて寂しい」と弱音を吐いたり、泣いたりしたことは一度もない。
顔のマヒの改善にガムが効果的らしいと聞き、毎週妻に着替えと合わせてボトル入りのガムを届けていた。ある日、妻から「ガムのボトルにこんなものが入っていた」とLINEで写真が届く。
そこには、「お母さん元気でね!がんばれ!!」という文字と、娘が大切にしているぬいぐるみのイラストが……。子どもなりに母親を励まそうとしている様子が伝わってきて、思わずホロリとしてしまった。