子どもの「肩こり」は発達にも影響 注意点と解消法を医師がアドバイス

その場でできる「かかと落とし体操・ゴロゴロ体操」 ファシアをゆるめて肩こり解消! #後編

木下 千寿

子どもの肩こりは発達にどう影響する?注意点と解消法、親子で一緒にできる肩こり対策の体操を紹介(写真:アフロ)

現代のライフスタイルは、子どもにも「肩こり」が起こりやすい環境です。子どもの「肩こり」と親子でできる解消法について、東京医科大学整形外科准教授の遠藤健司先生にお聞きしました。

【遠藤健司(えんどう・けんじ)東京医科大学整形外科准教授。日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。自身が肩こりに苦しんだ経験から、「肩甲骨はがし」ストレッチを開発。日本テレビ「世界一受けたい授業」NHK「あさイチ」などメディア出演多数】

子どもは「肩こり」に気づかない!?

かつては農作業など肉体労働に従事する人が多かったこともあり、腰痛を訴える人が多かったものの、生活の近代化により、肩こりの愁訴も多くなりました。

子どもにおいても同様で、昔ほど外遊びをしなくなったり、ゲーム機やタブレットが生活に浸透してきたりといった変化で、肩こりの症状を抱えている子どもはおそらく増えていると思われます。また情緒不安定なお子さんも、肩こりを抱えている可能性があります。

「子どもは身体の不調や不快感を言葉でうまく説明できないため、情緒不安定というかたちになって表に出てくるのです」(遠藤先生)

遠藤健司先生

小学生に多い肩こりの原因としては、姿勢の悪さや運動不足、目の疲れなどが挙げられます。

しかし幼い子どもは肩こりという概念がわからないため、「自分は肩こりだ」という自覚がありません。そこで親御さんができる簡単な肩こりチェックは、背中をさすってあげたときに、気持ちよさそうな反応を見せるかどうか。

「多くの子どもはくすぐったがるなど拒否反応がありますが、大人のように気持ちよさそうなリアクションをするのであれば、肩甲骨周りにむくみが生じている可能性がありますので、「肩がこっているかもしれない」と判断していいと思います」

親御さんができる簡単な肩こりチェックは、背中をさすってあげたときに、気持ちよさそうな反応を見せるかどうか(写真:アフロ)

子どもの肩こりには、「ファシアをゆるめて肩こり解消! 前編」でお伝えした「ファシアゆるゆる体操」がおすすめです。親御さんと一緒にやるといいですね。この記事では、「ファシアゆるゆる体操」と併せて行うとよい「かかと落とし体操」もご紹介します。

【「ファシア」とは】

ファシアとは、私たちの身体の臓器や骨、血管、筋肉などを覆う、全身に張り巡らされた組織のことで、みかんで例えると、皮と実の間にある白いヒゲと実を包む膜です。

ファシアは本来ゆるゆるな組織で、その“遊び”があるからこそ、身体を自在に動かすことができます。ファシアにはコラーゲンと水分が多く含まれており、それがゆるさを生み出していますが、身体の不動化で血流が悪くなるとファシアがむくみます。

ファシアがむくむと筋肉の滑走性が悪くなり、こわばった状態に。つまり肩こりの最大の原因は、肩甲骨周りの筋肉を覆うファシアの硬さなのです。

「ファシアゆるゆる体操」の詳しい方法はこちら

<ファシアゆるゆる体操>

壁を使った「かかと落とし体操」

ファシアをゆるめるには、内臓も含めて全身をブルブル動かすことも大切です。

走るのがベストですが、運動ができないようならば、家で簡単にできる「かかと落とし体操」をやってみてください。

①頭、背中、お尻、かかとを壁につけて立ちます。

①頭、背中、お尻、かかとを壁につけて立ちます

②後頭部を壁に押し当てたまま、かかとを上げて身体をグッと反らし、肩を後ろに引いて肩甲骨をギューッと寄せます。

②後頭部を壁に押し当てたまま、かかとを上げて身体をグッと反らし、肩を後ろに引いて肩甲骨をギューッと寄せます

③ストンとかかとを落とし、①の体勢に戻ります。

③ストンとかかとを落とし、①の体勢に戻ります

イライラの原因は「交感神経」

「お子さんがイライラしたり、集中力が散漫になっているようであれば、深呼吸を促す、冷たい水を1杯飲ませてあげるといったことが効果的です。イライラしているのは交感神経が優位になっているからなので、副交感神経を整えることができる上記のような行動をとるとよいでしょう」

ゲーム機やタブレットの使用中は、首が前に倒れた姿勢になりがちです。そうすると首を支える肩甲骨周りの筋肉に過度な緊張が生じたり、首から背中の骨にかけての正常なカーブが失われてストレートネックになったりして、背中に大きな負担がかかります。

長時間よくない姿勢が続くと血行不良が起こり、ファシアにむくみがたまってしまいます。

「首下がり予備軍」に注意!

高齢の方の中には、首が90度近く前に倒れてしまった「首下がり」が見られますが、首の前傾姿勢が習慣化すると、将来的に「首下がり」になる恐れがあります。

首の前傾姿勢が習慣化すると、将来的に「首下がり」になる恐れも(写真:アフロ)

「今は若い世代に“首下がり予備軍”がたくさんいるという状況ですから、子どもさんが成長期のうちから気をつけていただきたいところです。小さいころに姿勢が悪いままでいると、脳がそのかたちを覚えてしまい、後の矯正が難しくなります」

姿勢の悪さは、肩こりや頭痛につながりメンタルにも大きな影響を与えますから、子どもにはできるだけ「良い姿勢」を身につけてもらいたいですね。

正しい姿勢が身につくのは18歳ごろ

子どもに正しい姿勢が身に付くのは、身体ができあがる18歳ごろ。

「正しい姿勢を保つにはある程度筋肉が必要ですが、子どもは関節がゆるく、正しい姿勢を保とうとすると、筋肉にストレスがかかってしまいます。子どもに「いい姿勢でいなさい」というのは、実はとても難しい要求なのです」

ですから子どもには「良い姿勢を保つ」ことよりも、運動などで身体を動かすことがおすすめです。運動をすることで身体がほぐれて、血行がよくなります。血行がよくなれば、むくみも解消されます。

親子でできる「ゴロゴロ体操」

運動があまり好きでないというお子さんにおすすめなのは、「ゴロゴロ体操」です。

肩甲骨と骨盤を動かす「ゴロゴロ体操」

〈1:肩甲骨を動かす〉
床に仰向けに寝転がります。
①下半身は動かさず、上半身だけ左側に傾けます。右腕を伸ばして背中方向に大きく回します。
②下半身は動かさず、上半身だけ右に傾けます。左腕を伸ばして背中方向に大きく回します。

〈2:骨盤を動かす〉
床に仰向けに寝転がります。
①上半身は動かさず、下半身を左側に傾け、右足を左側に伸ばして腰をツイストします。
②下半身を右側に向け、左足を右側に伸ばして腰をツイストします。

この体操でファシアがゆるむので、寝つきもよくなりますよ!

寝る環境づくりも大事

寝るときの環境づくりも大事です。睡眠中にまったく身体を動かさずにいると、翌朝起きるころにはファシアがむくんで身体がガチガチ状態になる恐れが。

「柔らかすぎる寝具は身体が沈み込み、寝返りを打てない可能性があります。寝返りを打てるよう、適度なかたさの寝具を選ぶようにしましょう」

お子さんと一緒に寝ていると体勢を崩せず、寝違えたような状態になったり、腰や首がつったりということも少なくないと思いますが、適度に身体を動かせるようなスペースを保つなど意識してください。

「押し流し」ですっきり!

さらにファシアをゆるめたい場合は、「押し流し」が効果的です。ファシアゆるゆる体操を行った後、むくみが気になる部分を押し流しましょう。

押し流しの力加減は、軽く撫でさするぐらいのタッチでOK。むくんでいると感じる部分の筋肉をしっかり伸ばしたうえで、押し流すのがポイントです。

脚や顔のむくみは「パッ」と見てわかりやすいですが、実は肩回り、指や手など、体のあらゆる部分にむくみは生じます。「体のむくみ=ファシアのむくみ」と考えて、1時間に一度は背伸びをするなど身体を動かし、同じ姿勢で居続けないようにしましょう。

「ファシア」によい食べ物

「ファシアによい食べ物は、お肉や背中の青い魚です。インスタント食品などリンの多いモノは、筋の収縮に大事な役割を果たす血液中のカルシウムを減少させるので、肩がこっているときはインスタント食品の摂取を避けたほうがよいかなと思います」

日常生活で肩こりしていると体調が整わず、不安や心配が重なっていきます。その負のスパイラルから抜け出すためにも、肩甲骨をゆるめて安心を生みましょう。

身体がラクになれば、心のゆとりが生まれ、健やかに暮らせるようになるでしょう。

【「ファシアをゆるめて肩こり解消!」は前後編。前編では肩こりの原因と解消するコツを解説。肩こりに効く「ファシアゆるゆる体操」を紹介します。後編では、子どもの肩こりチェック・親子でできる肩こり解消法を解説。「かかと落とし体操」と「ゴロゴロ体操」を紹介します】

取材・文/木下千寿
撮  影/神谷美寛
イラスト/山口陽菜

えんどう けんじ

遠藤 健司

Kenji Endo
東京医科大学整形外科准教授

1988年東京医科大学卒業。1992年米国ロックフェラー大学ポスドクとして留学(神経生理学を専攻)。1995年東京医科大学茨城医療センター整形外科医長を経て、2007年 東京医科大学整形外科講師、2019年准教授。 厚生労働省 特定疾患対策研究事業OPLL研究班、自賠責保険顧問医、日本脊椎脊髄病 学会社会保険システム等検討委員会委員長、日本運動器疼痛学会評議員、日本腰痛学会 評議員を務める。 腰部脊柱管狭窄症、頚椎後縦靭帯骨化症、脊椎内視鏡手術、脊椎腫瘍、首下がり、骨粗鬆症、脊髄神経生理、椎間板、筋線維、ファシアの研究に取り組む。 専門領域:脊椎脊髄外科、脊椎内視鏡手術、骨粗しょう症手術(セメント注入など)、脊椎脊髄腫瘍手術、顕微鏡使用頸椎、腰椎手術、慢性疼痛など 認定資格:日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会指導医

1988年東京医科大学卒業。1992年米国ロックフェラー大学ポスドクとして留学(神経生理学を専攻)。1995年東京医科大学茨城医療センター整形外科医長を経て、2007年 東京医科大学整形外科講師、2019年准教授。 厚生労働省 特定疾患対策研究事業OPLL研究班、自賠責保険顧問医、日本脊椎脊髄病 学会社会保険システム等検討委員会委員長、日本運動器疼痛学会評議員、日本腰痛学会 評議員を務める。 腰部脊柱管狭窄症、頚椎後縦靭帯骨化症、脊椎内視鏡手術、脊椎腫瘍、首下がり、骨粗鬆症、脊髄神経生理、椎間板、筋線維、ファシアの研究に取り組む。 専門領域:脊椎脊髄外科、脊椎内視鏡手術、骨粗しょう症手術(セメント注入など)、脊椎脊髄腫瘍手術、顕微鏡使用頸椎、腰椎手術、慢性疼痛など 認定資格:日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会指導医

きのした ちず

木下 千寿

ライター

福岡県出身。大学卒業後、情報誌の編集アシスタントを経てフリーとなる。各種インタビューを中心に、ドラマや映画、舞台などのエンターテイメント、ライフスタイルをテーマに広く執筆。趣味は舞台鑑賞。

福岡県出身。大学卒業後、情報誌の編集アシスタントを経てフリーとなる。各種インタビューを中心に、ドラマや映画、舞台などのエンターテイメント、ライフスタイルをテーマに広く執筆。趣味は舞台鑑賞。