子ども抜き親だけ相談可 スクールカウンセラーの効果と実例を公認心理師が明かす

公認心理師・スクールカウンセラーが語る 学校での悩みは何を相談していい? #2 親の悩み相談について

公認心理師:中井 ようこ

ママパパも悩みを誰かに相談したいもの。では、スクールカウンセラーに、どんな悩みを話したらいいのでしょう?  写真:アフロ
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スクールカウンセラーとして、コロナ禍で800件以上の相談を受けた公認心理師・中井ようこさんの「スクールカウンセラーが語る 学校の悩み相談」連載。

「誰にも悩みを話す人がいない、というママ・パパも、スクールカウンセラーに相談していいんです」とは、ヨウコさん。

2回目では、実際の相談ケースも交えつつ、親が相談できる内容や効果について解説していただきます。


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公認心理師
中井ようこ
小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

親もスクールカウンセラーに相談できる

スクールカウンセラーは、全国の学校に配置されていますが、相談できるのは子どもだけではありません。

スクールカウンセラーの業務には「保護者に対する相談や助言」が含まれており、親子に対する家族カウンセリングも、スクールカウンセラーの大切な役割のひとつです。

私が勤務していた学校では、保護者からの相談が約4割を占め、児童生徒からの相談が約4割、教職員からの相談が約2割という具合でした。

これは、2020年のコロナ禍のときで、不登校の子どもが増加した時期だったため、子どもだけでなく保護者も不安を抱えやすくなっていたのかもしれません。

親がスクールカウンセラーに相談することで得られる効果

子育てをしているママやパパのなかには「親がスクールカウンセラーに相談する意味はあるのか?」と疑問を感じる人もいるかもしれません。

実際には、親がカウンセリングを受けることで、子どもや家族にプラスの影響があらわれるケースは多くみられます。

親がカウンセリングで得られる3つの効果について紹介します。

効果①自分の気持ちをわかってもらえる
親がカウンセリングを受けることで得られる最大の効果が、自分の気持ちをわかり、応援してくれる存在を得られることです。

日常生活において悩みを抱えたとき「誰かに話してもなんだかスッキリしない」、「ますますモヤモヤしてしまった」などの経験はありませんか? 人間は自分の気持ちをスッキリと話せて初めて、前向きな心を取り戻せるのです。

スクールカウンセラーは、日々の子育てに悩み苦しんでいる親の気持ちに寄り添います。親子の問題解決に向けて、そっと背中を押す存在となってくれるでしょう。

効果②親自身の長所や強みをみつけられる
カウンセリングを受けることで、親自身の長所や強みが見つかるといった効果もあります。
子育てに奮闘するママやパパは、子どもの長所は見つけられても、自分自身の良い面や強みについて考えることは少ないかもしれません。解決が難しい問題に立ち向かうには、親自身が「自分に自信を持つこと」が必要です。

また、スクールカウンセラーに話すことで、自分を客観視できるようになり、子育ての考え方や子どもへの接し方を変えるきっかけも生まれます。

効果③子どもに対する接し方がわかる
乳幼児や未就学の時期に比べ、小中学校に入ると「子育てに関する相談」を誰にしたらいいのかわからない人も多いのではないでしょうか。

スクールカウンセラーは話を聞くだけでなく、求められれば、客観的な視点から親への助言もできます。「どんな声かけが有効なのか」、「どのように話を伝えればいいのか」など、子育ての方法を一緒に考える存在がスクールカウンセラーなのです。

スクールカウンセラーに実際に寄せられた親のお悩み内容

では、親がスクールカウンセラーに相談するとき、どんな悩みを抱えているのでしょうか?私が実際にカウンセリングをしたケースを例にみていきましょう。

①子育てに関する悩み
ママ・パパにとって、子育てに関する悩みはよくあることでしょう。スクールカウンセラーへの相談の例として、次のケースが挙げられます。

・子どものかんしゃくがひどく、きつくしかってしまう。対処法がわからない。

・登校しぶりが続き、本人に聞いても理由がわからないため、どんな声かけをすればいいのか悩んでいる。

・友達関係でトラブルが続く。子どもがまわりから嫌われてしまわないか不安になる。

②家族関係の悩み
子どもだけでなく、家族についての悩みもよくあります。

・同居する実母との仲が悪く、ささいなことで口論になる。シングルマザーなので頼らざるを得ないが、子どもに申し訳なく、気持ちがつらくなる。

・義両親から子どもの生活や勉強について口出しをされる。子どもも義両親になつかないため、嫁として責められているようでつらい。

・夫と教育方針があわない。もっと子どもと遊んであげてほしいが、勉強や習い事ばかりさせようとする。

③仕事やママ友など人間関係の悩み
子どもに関する悩みの背景に、親自身の人間関係の悩みが隠れているケースも。

・ママ友トラブルが原因で、親子で悪口や嫌がらせの被害にあっている。

・近所内での人間関係の問題であることから、子どもへの影響を恐れて誰にも相談できない。孤立を深めてしまう。

④経済的な問題の悩み
スクールカウンセラーには家庭環境や経済的な悩みも多く寄せられます。

・親自身が病気で働けず、生活を維持するのが厳しい状況である。

・コロナ禍で仕事が減り、集金や給食費を払えない。

これらの悩みはスクールカウンセラーだけで解決できる問題ではありません。福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーや医療機関と連携しながら解決への道を探る必要があります。

⑤自分自身の性格や特性についての悩み
子どもについての相談をする中で、親自身の性格や特性についての悩みが姿を見せることもあります。

・完璧主義で子育てに自信が持てない。

・心配性で子離れできない。

・悩みが頭から離れず、なかなか眠れない。

このように、親の悩みは多種多様で、医療や福祉、行政の力を借りないと解決できない内容も多く寄せられます。ママやパパにとって、本当に必要なサポートにつなぐことも、スクールカウンセラーの重要な仕事のひとつです。

「こんなこと話していいの?」と迷われる人もいるかと思いますが、その相談が大きな一歩になります。親御さんだけでも遠慮なく声をかけてみてくださいね。

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