小中学生の不登校や児童虐待など子どもを取りまく問題が増加し、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー(以下SC・SSWとします)の存在に注目が集まっています。文科省も2019年度までに原則としてSCを全公立小中学校に配置、SSWを全中学校区に配置するとしており、2021年度予算ではSC関連予算が72億円(前年度比5億円増)計上されています。
しかしコクリコラボの調査では「困りごとがあったとき、SC・SSWに相談する」という回答は少なく、実際筆者の周りでも学校に配置されているのか知らない、利用方法がわからないというママがほとんどです。これらのことから、データ上の配置率と実際の利用実態には乖離があるのではないかという仮説をたて、SC・SSWの認知度や利用実態を調査しました。
目次
コクリコラボアンケート「AnyMaMa(エニママ)」登録者およびコクリコメルマガ会員を対象に2023年8月7日~2023年8月21日インターネット上で実施。有効回答数は83件。
※基本的にアンケート回答の原文をそのまま記載しています。ただし文字数の都合上、一部抜粋や主旨を損なわない範囲の要約・編集を行っている箇所があります。(明らかな誤字等は修正のうえ記載)
コクリコとAnyMaMa LIFESTYLE.Labが協働で、子育て課題解決×読書文化を目指すプロジェクト「コクリコラボ」。
ママの社会復帰を支援するサービス「AnyMaMa(エニママ)」で活躍するママたちのリアルな声を集めながら、新たなサービスや取り組み、ライフスタイルのアイデアを生み出していきます。
認知度は高いスクールカウンセラー
最初に調査したのはSC・SSWの認知度です。結果は「役割や内容まで知っている」と回答したママが53.6%で、「名前は聞いたことがあるが、役割や内容は知らない」と回答したママが46.4%でした。
「名前も聞いたことがない」と回答したママはおらず、SC・SSWの認知度は高いということがわかりました。
※SC・SSWについてはこちらに詳しく記載されています。
参考記事:子どもの心理の専門家・スクールカウンセラーに相談すべき「子どもの悩み」5つの兆候(コクリコ2023年7月17日掲載)
https://cocreco.kodansha.co.jp/cocreco/general/life/ktOtF
でも設置の有無はわからない保護者が4割(中学生)
ところで自分の子どもが通う学校にSC・SSWが設置されているかどうか、ママは把握しているのでしょうか。中学生の子を持つママへのアンケートでは、「設置されている」と明言したママが約6割で、「設置されていない」と回答したママはいませんでした。しかし残りの約4割のママは「知らない、わからない」と回答しています。
小学生の子を持つママへの同様のアンケートでは「設置されている」と回答したママが約8割でした。中学生のママよりは高かったものの、「知らない、わからない」と回答したママも約2割という結果でした。
「設置されていない」と明言したママがほぼいないことから、利用する機会がない、あるいはそもそも存在自体が周知されていないことがうかがえます。
利用したことがあるママはわずか28%
一方で、実際の利用状況についてのアンケートでは、小学生以上の子を持つママの約7割が「ない」と回答しています。
利用しない理由は大きく3つ
前回までの記事で触れたように、ママたちは学校での困りごとを抱えていて、多くの小中学校にSC・SSWが配置されている……。それにもかかわらず、SC・SSWの利用率が低いのはどうしてなのでしょうか。
SC・SSWの利用経験がないママに対して「利用しない理由」を聞いたところ、もっとも多かったのは「そのほか」という回答でした。「そのほか」の内訳を詳しく見てみると、大きく分けて3つの課題が見えました。
1つめは「相談していいレベルがわからない」というものです。
・どの程度のことから相談していいのかわからない。
・どんな内容のことが相談されているのかわからない。
・そこまでの悩みがまだ出ていなく、家族間や担任の先生とのお話でいったんクリアになっているため。
・ソーシャルワーカーに相談するほど困っていない。
深刻な悩みにならないとSC・SSWには相談できないというイメージを持っているママが多いようです。
・登校が難しい、何か問題がある、授業を受けるのが発達上困難など特定の相談に乗ってくださる方という認識のため。
不登校や発達に関する悩みに対応するというイメージを持っているママもいました。
2つめは「信頼関係が築けない」です。
・話したところで、きちんと解決してくれるのかがわからない。
・息子の場合、学校の管理職の問題であり、スクールカウンセラーと話したことが管理職に共有されるので、信用できず利用する気持ちになれなかった。
これはSC・SSWに問題があるというわけではなく、各学校での運用の問題や認識のずれが大きいでしょう。実際にはSC・SSWには秘密保持の義務が課せられており、相談者が希望すれば学校に相談内容を共有しないこともできます。
・初対面の人と話すことが苦手。
自分の子どもの困りごとは、知っている人にも相談しづらいもの。設置状況もわからないほど遠い存在であるSC・SSWに、いきなり深刻な相談は難しいでしょう。
3つめは「予約を取ることにハードルがある」です。
・学校を通さないと予約できない。
・予約したくて担任に聞いたが、返答がないまま学期末を迎えた。
約7割のママが最初の相談先として、担任の先生を選んでいる現状にもかかわらず、SC・SSWに相談するということはそれ相応の理由がある可能性が高いです。それなのに担任を通さなければ予約できないとなると、相談へのハードルは一気にあがります。
・相談したいが、決められた日にちや時間に予約した方のみの対応なので相談できない。
予約枠が限られている場合、日程調整できないとすぐに相談することができず、おのずと相談先として選ばれなくなってしまいます。
印象はポジティブ スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーに対するママたちのイメージ
前章のアンケートでは、利用経験のないママにとってSC・SSWは相談するハードルが高い存在だと認識されていることがわかりました。さらに掘り下げて「SC・SSWに対してどんなイメージがありますか?」というアンケートをとりました。
・話を聞いてくれそう。
・保健室のようなイメージ。
困りごとの相談ができたり、話を聞いてくれたりしそうという声です。
・子ども自身の悩みだけでなく、親の悩み(子どもとの関わり方など)を聞いてくれたり、保健所や児相にするような相談もできるイメージ。
学校での困りごとの原因は必ずしも子ども自身だけの悩みとは限りませんよね。担任の先生より親自身の悩みを相談できそうなイメージは確かにあります。
・子どもの発達に詳しく客観的なアドバイスをくれる。
・子どもと親と学校の関係性をうまく結びつける方法や子どもに対する対応のアドバイスがありそう。
・専門職である。
子どもの発達や心理面に関して専門性が高そうだというイメージです。ただこのイメージは一方で次のような印象を持っているママも。
・ひどいいじめや、不登校、精神的な問題のある子どもの親が使うものなのでしょうか?正直よくわからないです。
ほとんどのママがポジティブなイメージを持っているものの、やはり深刻な問題にならないと利用できないというイメージが根強いことがうかがえました。
設置率の高さと利用率の高さは比例していない
SC・SSWの利用実態やイメージについて調査しました。配置率自体は高くても、実態は自治体ごとに異なるものの常設していない学校が多いようで、想像以上にママたちにとっては遠い存在であるということがわかりました。
次回の記事ではスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーを実際に利用したママの声、理想的な相談先について、リアルな声をお届けします。
コクリコラボ
コクリコとAnyMaMa LIFESTYLE.Labが協働で、子育て課題解決×読書文化を目指すプロジェクト「コクリコラボ」。 ママの社会復帰を支援するサービス「AnyMaMa(エニママ)」で活躍するママたちのリアルな声を集めながら、新たなサービスや取り組み、ライフスタイルのアイデアを生み出していきます。 (Any MaMaについてはこちら:anymama.jp Twitter: @AnyMaMaJP )
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