子どもの心理の専門家・スクールカウンセラーに相談すべき「子どもの悩み」5つの兆候

公認心理師・スクールカウンセラーが語る 学校での悩みは何を相談していい? #1 相談するタイミングについて

公認心理師:中井 ようこ

スクールカウンセラーに相談したいけれど、なかなか勇気がいるものです。それにいつするのがいいのでしょうか?  画像:アフロ
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スクールカウンセラーとは、心理の専門知識を活かし、学校現場で子どもや保護者のカウンセリングや支援をする専門職です。

しかし実際は、「スクールカウンセラーに話をしたいけれど、どのタイミングで相談すればよいかわからない」という子どもや保護者の方が多くいます。

そこで、コロナ禍の2年の間で800件以上もスクールカウンセラーとして相談を受けたことのある公認心理師・中井ようこさんに、スクールカウンセラーの役割や相談するタイミング、見逃したくない子どもの兆候について解説していただきました。


(全3回の1回目)

公認心理師
中井ようこ
小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

スクールカウンセラーの役割と相談したい内容

公認心理師、臨床心理士、精神科医などの心理に関する国家資格を持っている、もしくは子どもの心理に関する高度な知識や経験を持つ専門家と認められた人が、スクールカウンセラーとして従事できる仕事です。

スクールカウンセラー制度は、1995年から開始され、2021年には3万ヵ所以上の学校に配置されるようになりました。基本的には、各校で週1回4時間程度、それぞれの状況を踏まえた相談時間の充実が求められています。

文部科学省の調査によると、2016年からの5年間でスクールカウンセラーへの相談は、不登校や発達障害、子どものメンタルの不調や病気、家庭環境や貧困に関するものが増加しているとのこと。

※引用:文部科学省 スクールカウンセラー等活用事業に関するQ&A

スクールカウンセラーの大きな特徴として、子どもはもちろん、保護者や子どもの家族、教職員からも相談できることが挙げられます。

実際に相談した内容が、誰かに伝わることはないのかと不安に思われ、相談しづらいと思われるかもしれませんが、スクールカウンセラーには、「秘密保持の義務」が課せられているため、相談者の許可なく内容が外部にもれることは絶対にありません。

ただし、命や犯罪にかかわることや、学校や家庭と連携したほうが解決しやすい内容については、スクールカウンセラーが相談者に説明をした上で関係者に伝えられることがあります。

ちなみに申し込みの際に、学校側へ依頼をすれば、保護者が相談する際に子どもと顔を合わせないようにも配慮してもらえます。

スクールカウンセラーへの相談は担任を通さなくてもいい

では、スクールカウンセラーに相談するタイミングについてですが、もっとも適切なタイミングは、「子どもの様子が普段と違うと気づいたとき」や、「保護者自身が誰かに悩みを話したくなったとき」です。

子どもや保護者の悩みを放置したままにしておくと、それぞれの心や体に悪影響をおよぼすことがあります。

ひとりでは解決できない問題を抱え込み、ストレスが積み重なってしまうと気力を奪われ、無気力状態になってしまうことがあるからです。

また、子どもの調子がすぐれないとき、保護者まで体調をくずしてしまうと、共倒れになってしまうケースもあります。

わたしが実際に担当したケースで、子どもが不登校になったことで母親が深く思い悩み、2人とも引きこもり状態になってしまった親子がいました。子どもに異変があらわれた時点で、学校側からカウンセリングをすすめてもらっていましたが、「家族で解決したい」との意向があったため、残念ながら相談にはつながりませんでした。

家族が困難にぶつかったとき、親子がお互いに支え合いながら壁を乗り越えていくのが理想です。しかし、心のダメージが大きすぎると、それぞれが自分を守ることだけで精一杯になってしまい、家族にとって良い結果につながらない場合もあるのです。

そうなる前に、ぜひスクールカウンセラーを利用してほしいと思います。スクールカウンセラーは、子どもや保護者が抱えている心の負担を減らし、新しい選択肢や問題を解決する方法をいっしょに考えることができます。

保護者の中には「担任の先生には相談しなくていいの?」と気にする方もいるかもしれません。

担任を通さずにスクールカウンセラーに先に悩みを話すことはなんの問題もなく、希望すれば担任の先生とも連携をとってもらえます。

もし、相談したいことがあるのなら、それはスクールカウンセラーに会うタイミングと言えます。遠慮なく一歩を踏み出してみてください。

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