旅行会社がPTAを変える? 「PTAの代行・外注」プロ技の実態とは?

プロへの依頼で負担軽減「PTAアウトソーシング」#2 ~企業の思い~

ライター:遠藤 るりこ

学校と地域が良い関係で良い循環を起こすために

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旅行会社がPTA業務を請け負うことについて、KNT‐CTホールディングスとしての強みはどこにあるのでしょうか。

「弊社としては、『教育旅行事業』と、自治体含めた『地域の事業』に2軸にアカウントをもっていることが強みだと考えています。

PTAは、学校と地域が連携して交流することを目的としているので、この2軸でサービスが展開できる企業は、そう多くないのかなと。

また、KNT‐CTホールディングスのグループ会社では現状で警備業の資格を持っていないので、例えば通学路などの旗振り当番や運動会の警備などの業務はできないんです。

しかし、『ぜひ一緒にサポートしたい』という企業も出てきていて、今後はアライアンス(提携)でのサービス提供をしていけたらと考えています。

近畿日本ツーリストが窓口となり、一括でまとめておねがいできるというのは、学校にとっても安心材料になるのではないかと思います」(KNT‐CTホールディングス・夜久さん)

PTAを外注するという発想や、耳慣れしていないアウトソーシングサービスという言葉の響きが先行して話題になり、リリース後の反響はさまざまだったと夜久さんは振り返ります。

「個人的なご都合で、お金を払えばやってもらえると思っている方はまだまだ多いですし、活動自体全部を丸投げできないのか、なんて声もありますよ。

弊社がサービス提供をはじめた背景には、世の中に問われているPTA活動自体をリデザイン(最適化)し、PTA活動をより盛り上げられたら、という思いがあります。

これからももっと、このコンセプトを発信していかなければなりません」(KNT‐CTホールディングス・夜久さん)

さらに、PTA加入は任意であったとしても「積極的にPTAにかかわりたい」という風土を醸成(じょうせい)するのをお膳立てできたらと夜久さん。

学校と地域がいい関係になり、地域活性化につながっていくことも、企業としての中・長期的なミッションだと語っていました。

次回は、2020年から「PTA+企業」のマッチングを提案し、サービスを提供している「PTA‘S(ピータス)」代表の増島さんへお話をうかがいます。

〈PTAにくわしい労働・子育てジャーナリスト 吉田大樹さんから〉

正直なところ、「PTA業務をアウトソーシングするサービスが出た」という第一報を聞いたとき、まずは否定的な感情を持ちました。

というのも、外注をしてしまうことでPTAの持つ本来の意味を失わせることにならないだろうか、という懸念があったからです。

PTAは、さまざまなイベントを通して保護者たちが交流し、横の関係を結んで育んでいくツールとして機能しています。

しかし、外注でお金を払ってPTA業務を進めていくとなると、どうしても「サービスする側」と「される側」になってしまう。

一方的にサービスを受けるだけで止まってしまうと、保護者間のやりとりが希薄な組織になってしまうんじゃないか、と感じたのです。

一方で、共働きやひとり親も増え、保護者のみなさんの時間がないなかでどうPTAに時間をさいていくのかが大きな問題となっています。加入は任意になり、活動はボランティア主体になるなか、業務の担い手が減っていくことは避けられません。

まずは各々のPTAの抱える問題を洗い出してみてもいいのかもしれません。そのうえで、「活動のなかで必要なものは何なのか」、「どのレベルのものをアウトソーシングするか」そして「本来の目的を失わせない活用方法なのか」を考えてみてはいかがでしょうか。

そうした現状のなかで、アウトソーシングサービスという手段は、課題解決の1つの方法になりうるかもしれませんね。

吉田大樹(よしだ・ひろき)プロフィール
労働・子育てジャーナリスト。1977年東京生まれ。NPO法人グリーンパパプロジェクト代表理事。3児のシングルファーザーで、小~高のPTA会長を経験。現在、埼玉県鴻巣市のP連(PTA連合組織)会長。元内閣府「子ども・子育て会議」委員、内閣官房「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会委員も務めている。

取材・文/遠藤るりこ

取材協力/KNT‐CTホールディングス

●近畿日本ツーリスト PTA業務アウトソーシングサービス
https://gtc.knt.co.jp/pta/

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よしだ ひろき

吉田 大樹

労働・子育てジャーナリスト、NPO法人グリーンパパプロジェクト代表理事

1977年東京生まれ。札幌出身、埼玉県鴻巣市在住。日本大学大学院法学研究科政治学専攻修了(政治哲学)。 2003年より労働関係の専門誌記者として、ワーク・ライフ・バランスや産業保健(過重労働・メンタルヘルスなど)の問題を取材。働き方や生き方の変革を訴える。 2012年7月から2年間、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事。2014年から労働・子育てジャーナリストとして活動開始。2016年NPO法人グリーンパパプロジェクトを設立。代表理事に就任。2019年5月から放課後児童クラブ「南よつばの願い学童」の運営開始。 これまでに、内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚生労働省「イクメンプロジェクト推進委員会推進」委員、経済財政諮問会議「今後の経済財政動向等についての点検会合」有識者などを歴任。 現在、厚生労働省「社会保障審議会児童部会子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、内閣官房こども家庭庁準備室「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会委員、東京都「子供・子育て会議」委員、鴻巣市「男女共同参画審議会」委員、鴻巣市「鴻巣市PTA連合会」会長などを務める。 著書に『パパの働き方が社会を変える!』(労働調査会刊) 3児(長男03年生まれ、長女06年生まれ、次男08年生まれ)のシングルファーザー。

1977年東京生まれ。札幌出身、埼玉県鴻巣市在住。日本大学大学院法学研究科政治学専攻修了(政治哲学)。 2003年より労働関係の専門誌記者として、ワーク・ライフ・バランスや産業保健(過重労働・メンタルヘルスなど)の問題を取材。働き方や生き方の変革を訴える。 2012年7月から2年間、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事。2014年から労働・子育てジャーナリストとして活動開始。2016年NPO法人グリーンパパプロジェクトを設立。代表理事に就任。2019年5月から放課後児童クラブ「南よつばの願い学童」の運営開始。 これまでに、内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚生労働省「イクメンプロジェクト推進委員会推進」委員、経済財政諮問会議「今後の経済財政動向等についての点検会合」有識者などを歴任。 現在、厚生労働省「社会保障審議会児童部会子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、内閣官房こども家庭庁準備室「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会委員、東京都「子供・子育て会議」委員、鴻巣市「男女共同参画審議会」委員、鴻巣市「鴻巣市PTA連合会」会長などを務める。 著書に『パパの働き方が社会を変える!』(労働調査会刊) 3児(長男03年生まれ、長女06年生まれ、次男08年生まれ)のシングルファーザー。

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe