5人家族で「ゼロ・ウェイスト」 ごみを減らす生活の失敗・学び・工夫とは?

~快適な暮らしと子育てへの相乗効果~ #1先駆者のゼロ・ウェイスト

ゴミを限りなく減らす暮らし方を実践&発信している服部雄一郎さん。高知県の山間に移住し、家族5人で「ゼロ・ウェイスト」を取り入れた生活をしている  写真提供:服部家
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「ゼロ・ウェイスト」をご存知ですか?

「ゼロ・ウェイスト」とは、ゴミや無駄を無くす生活や社会を目指すこと。SDGsや海洋汚染などを背景に、いま世界中で注目されています。

日本でも自治体がゼロ・ウェイストに取り組み、ゴミ出しの方法やリサイクルを徹底したり、ゴミを出さない量り売り専門の小売店が増えたりと、家庭で取り組む人も増加中。

しかし、地球や子どもたちの未来のためにいいことだとはわかっていても、「ゴミをゼロに」と言われると、正直「実際にできるの?」「そんな地球規模のことを言われても……」と思うのではないでしょうか。

そこで今回は、世界でベストセラーになった『ゼロ・ウェイスト・ホーム』(ベア・ジョンソン著)の翻訳や自著『サステイナブルに暮らしたい』を執筆し、ゼロ・ウェイストを実践して3児の父でもある翻訳者の服部雄一郎さんに、今日から始められる簡単なゼロ・ウェイストについてお聞きしました。

現在、ゼロ・ウェイストの実践者として知られる服部さん、20代は忙しく働く中で、なんと外食三昧かつゴミに興味がなかったそう。その気持ちや生活の変化とゼロ・ウェイストの面白さ、そして筆者が疑問に思っていることに迫ります!

※全3回の1回

ゴミには無関心だった20代

──服部さんはどのような経緯でゼロ・ウェイストな生活をするようになったのですか? 若いころからゴミや無駄に対して高い意識を持っていたのでしょうか?

服部雄一郎さん(以下、服部さん):いえ、全然。若いときは環境への問題意識やゴミに注目したことなど皆無でした(笑)。妻と2人で外食三昧、好きな舞台三昧。気に入ったアパレルブランドの服を毎シーズン買い足す、なんていう生活をしていました。

ところが、20代の終わりに1人目の子どもが生まれ、「もっと楽しく子育てをしたい」と思って神奈川県・葉山に引っ越しました。偶然、中途募集が出ていた町役場に転職し、まさかの「ゴミの部署」に配属されたのです。

ゴミの分別やコンポストも知らないのに、いきなりコンポストの補助金担当になってしまい、毎日電話や窓口で問い合わせに対応しないといけなくなってしまって……。

そこで仕事を理解するために、ゴミ分別のルールを真剣に覚え、自分自身もコンポストをやってみました。

そうしたら! 家の中から燃えるゴミが消えたのです。それまでは毎週2回、ゴミを出していたのに。コンポストを始めてからは2週間経っても、3週間経ってもゴミ箱がいっぱいにならなくて、衝撃的な体験でした。

葉山の町役場に勤めていた時代。ゴミの組成分析中。  写真:役場の同僚

ゴミは燃やせばいい? ゴミの資源化率・最下位の日本

──日本のゴミ事情を教えてください。

服部さん:日本が「ゴミ焼却大国」だということはご存知ですか?

世界の中でも日本はゴミの分別が細かいのに、ゴミをリサイクルする“資源化率”は先進国の中でも最下位。上位国では生ゴミを堆肥にしている国も多いのですが、日本では税金を使ってゴミを焼却しています。

私が当時、働いていた町でも高額なゴミ処理費が問題になっていました。さらに清掃員の過酷な労働環境、焼却が環境に悪影響を及ぼすという事実も見えてきて。“自分の家から出るゴミ”という日常の中に、大きな社会問題が転がっていることに驚いてゴミに目が向きました。

そんなとき、町でゼロ・ウェイストによるゴミ減量を求める市民運動が起きていました。「ゴミは簡単に減らせる」と実感していた私にとって、ゼロ・ウェイストは現実的で理に叶った考え方に思えて。

そこで海外のゼロ・ウェイストの事例をリサーチしたり、ゴミ事情を調べたりするうちにゴミの仕事にのめり込んでいきました。

その後は、海外のゴミ処理やゼロ・ウェイストを見るためにカリフォルニアの大学院に家族連れで留学。ゼロ・ウェイスト関連の国際NGOスタッフとして南インドに半年間滞在して帰国し、「よりサスティナブルに暮らしてみたい」と高知県に移住して、今に至ります。

カリフォルニア州・バークレーはゼロ・ウェイスト都市。義理の母にも子守り要員として一時同居してもらった。  写真提供:服部家
南インド・チェンナイに6ヵ月滞在。タミルナードゥにある世界最大のエコヴィレッジ、オーロヴィルへも足を運んだ。  写真提供:服部家
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