5人家族で「ゼロ・ウェイスト」 ごみを減らす生活の失敗・学び・工夫とは?

~快適な暮らしと子育てへの相乗効果~ #1先駆者のゼロ・ウェイスト

プラ製品は使わない。ヘチマ、びわこふきん、ほうきが経済的!

──実際に服部家では、どのようなゼロ・ウェイストを実践しているのでしょうか?

服部さん:
ゴミや無駄を出さないようにし、壊れやすいプラスチック製品はなるべく使いません。

例えばキッチン周りだと、台所用スポンジや食器洗剤は使いません。台所スポンジやアクリルたわしは、やがてはゴミになるうえに、プラスチック製のため、スポンジがすり減るたびに出る微粒子が下水を流れ、マイクロプラスチックになると言われます。

それを避けるために、僕が使っているのは「びわこふきん」や乾燥させたヘチマ(ヘチマスポンジ)といった自然素材の道具です。

「びわこふきん」はいわゆるガラ紡という凹凸のある糸で織られていて、よっぽどの油汚れがない限り、お湯だけで食器を洗える布巾です。油汚れや匂いが気になるときは、重曹の粉末を布巾にチョンチョンと、つけて洗っています。

スポンジと違い、布巾だと洗濯機で洗うことができ、汚れたら煮洗いもできる。汚れが目立ってきたら雑巾として使って、最後は庭のコンポストに埋めています。

そしてヘチマも、鍋やフライパン、根菜などの汚れ落としにも使えて、最後はコンポストに入れて土に還るという優れもの。

スポンジの用途以外にも、輪切りにしてその上に石鹼を置く“石鹼置き”としても使っています。ヘチマが水を切ってくれるため石鹼が溶けないうえに、ヘチマに付いた石鹼成分で、手洗いついでにサッと洗面所や鏡を洗えます。夏になると庭で育て、使った後は庭の土に還る、究極の循環型スポンジです。

あとは、お風呂には重曹と石鹼のみ。シャンプーも洗顔料も歯磨き粉もシェービングクリームもありません。歯磨き粉はココナッツオイルと重曹を混ぜたものに、ハッカオイルを滴らして手作りしています。

洗濯は国産の粉石鹼だけ。以前は、ヨーロッパのオーガニック系液体洗剤を使っていた時期もありましたが、かさばるプラスチックボトルを買い続ける気になれず、卒業しました。これまでにも灰、マグネシウム、重曹、微生物系洗剤、ソープナッツ(天然の洗浄作用のある木の実)など、いろいろな代替洗剤を試してきました。

家の掃除はほうき1本。茶殻を撒いてフローリングを掃き、そのまま外へポイ。これは、うちが自然の中に建つ家だからできることですが(笑)。

掃除機のフィルターやダストカップの掃除、うるさい音、コードが引っかかるなどのストレスもありません。無駄を抑えられて、使うのはほうきのみだからとっても経済的です。

びわこふきんは10年以上愛用。ヘチマスポンジや亀の子たわしはフライパンや鍋、根菜の泥落としに。オールステンレスの金たわしはシンクやガスコンロ、鍋の焦げつきに。ひとつあると安心。  写真提供:服部家
左から重曹、リンス代わりの柚子酢、ヘチマに乗せた石鹼、試し使い中の生分解性セルローススポンジ。お風呂に置くものはこれらだけ。  写真提供:服部家

エコを目指して無駄を出した失敗も。「無理はしない」が家族のルール

──常に楽しみながら実験して、心地いい暮らしを追求していることが著書から伝わってきます。今までに失敗はなかったのですか?

服部さん:
失敗の連続ですよ(笑)。

上の2人の子どもが小さいときは、布おむつ育児を楽しんでいたのですが、3人目のときは引っ越しも重なっておむつを洗う時間が取れず、キャパオーバーで挫折。紙おむつのお世話になりました。「無理はしない」が家族のルールです。

その他、使い捨てのボールペンが嫌で、インクを充塡するタイプの万年筆を使ってみたのですが、飛行機に持ち込めなかったり、慌てて書くと破れたり、筆圧の強い私には合わないことがわかって、やめました。妻は筆圧が強くないので使えるのですが、適性を見極めることも大事です。

こうした、エコを願って買ったものが、無駄になって終わったという後ろめたいエピソードはいくつもあります(苦笑)。

それから、あまり大きい声では言えませんが、コンポストトイレで虫を湧かしてしまい、泣きたくなったことも……。

最近では蚊取り線香の代わりに、蚊が寄ってこないと言われているローズゼラニウムを乾燥させて燃やしてみましたが、まったく効果がなくて……(笑)。今は除虫菊の天然の蚊取り線香を使っています。

失敗無くして、変化はないですよね。

今まで試行錯誤を繰り返してきたさまざまな生活の工夫を活かし、2年かけて建てた新居。その考えやプロセスは、夫婦共著の『サステイナブルに家を建てる』(アノニマスタジオ)にしたためた。  写真提供:服部家

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失敗しても、そこには必ず学びがあります。挑戦、学び、工夫……を繰り返しながら、服部さんのちょうどいい「ゼロ・ウェイスト」への挑戦は続きます。第2回では、「子どもにゼロ・ウェイストはできるのか?」をお届けします。

取材・文:佐藤良子

服部雄一郎
1976年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を経て東京大学総合文化研究修士課程修了(翻訳論)。20代の終わり、障害を持つ長男の誕生を機に六本木の高層オフィスから葉山町の役場に転職。ゴミ担当に配属され、ゼロ・ウェイスト政策に携わる機会を得る。フルブライト奨学金を得てUCバークレー公共政策大学院に子連れ留学。ゼロ・ウェイスト関連の国際NGOスタッフとして南インドに滞在。

2014年、高知に拠点を移し、よりサスティナブルで自由な生き方の実践をスタートする。主な訳書に『プラスチック・フリー生活』『土を育てる』(以上NHK出版)、自身の家づくりを記した夫婦共著の『サステイナブルに家を建てる』(アノニマスタジオ刊)などがある。

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