幼児期は勉強より遊びが大事! 「早期教育」が学力につながらないこれだけの理由

【今こそ学力観のアップデートをするとき】本当の学びとは何か#3「思考力を育てる遊び」

「子どもにすべてお任せ」ではダメ

子どもが楽しんで遊ぶことは重要ですが、すべて子どもに任せればいいわけではありません。

「『子どもの好きなことをして遊ばせましょう』というと、ただ子どもを放っておくのがよいと誤解される方がいますが、そうではありません。

子どもに、ブロックや粘土などの特定の機能や目的を持たないおもちゃをそのまま渡すだけでは、何をしたらいいかわかりません。その結果、興味を持つことができなくなってしまいます。

ただおもちゃを与えるだけでなく、遊びの環境を作ること、そして、どのように子どもと関わるのかがとても大切です。

子どもの様子をよく観察して、一緒に楽しむことがポイントです。  写真:アフロ

子どもの発達段階によって遊び方や接し方は変わってきますので、『こうすればよい』という正解はありませんが、ポイントは細部を決めすぎずに子どもの興味に任せながら、遊びの『枠組み』は親が決めることです。

一緒に遊びながら、その子が楽しめるのはどんなおもちゃや遊びなのか、じっくり観察することが必要です。ブロックやパズルなどは、簡単すぎるとすぐに飽きてしまい、反対に難しすぎるとかんしゃくを起こすなど、遊びを続けられません。子どもが達成感を得られる適切なレベルを見極め、調整してあげましょう。

そうすることで、『やればできる』という挑戦する力(マインドセット)を育むこともできます」(今井先生)

子どもの発達の変化をしっかりと見つめつつ、とはいえあまり気負いすぎずに、親子で一緒に楽しめる遊びを探していくことが、「遊びながら学ぶ」につながっていきます。

第4回は、日常生活の中でできる、「言葉の力」「思考力」を育む具体的な方法についてうかがいます。

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今井むつみ
慶應義塾大学環境情報学部教授。専門は認知・言語発達心理学、言語心理学。平塚江南高校、慶應義塾大学文学部西洋史卒業後、教育心理学に興味を持ち社会学研究科に進学。在学中の1987年より渡米。1993年ノースウエスタン大学心理学部博士課程を修了し、1994年博士号(Ph.D)を取得。1993年より慶應義塾大学環境情報学部助手。専任講師、助教授を経て2007年より現職。近年は一般読者向け書籍の執筆、講演活動にも力を入れる。また、国境を越えて学びを考えるコミュニティABLE(Agents for Bridging Learning and Education)をつくり、国内外から著名な認知科学研究者を招聘し、ワークショップなどを開催している。

【主な著書】
「ことばと思考」「学びとは何か──〈探究人〉になるために」「英語独習法」(すべて岩波新書)、「ことばの発達の謎を解く」(ちくまプリマー新書)、「言葉を覚えるしくみ─母語から外国語まで」(針生悦子氏との共著/ちくま学芸文庫)、「親子で育てることば力と思考力」(筑摩書房)、「算数文章題が解けない子どもたち─ことば・思考の力と学力不振」(他6名との共著/岩波書店)など多数。2023年5月には新刊「言語の本質─ことばはどう生まれ、進化したか」(秋田喜美氏との共著/中公新書)を出版。

取材・文 川崎ちづる

『【今こそ学力観のアップデートをするとき】本当の学びとは何か』の連載は全6回。
#1「生きた知識を習得する学び」を読む。
#2「思考力を育む言葉の力」を読む。
#4「日常生活で育む生きた言葉の力」を読む。
#5「子どもの間違いが語ること」を読む。
#6「小学生が学ぶ楽しさを取り戻すには?」を読む。
※公開日まではリンク無効

【関連書籍紹介】

『親子で育てることば力と思考力』(筑摩書房)
たくさん単語を暗記してもことば力は育たない。ことばの意味を自分で考えて覚えれば、ことば力、思考力、学力もアップ。その仕組みと方法をわかりやすく解説。今日からでもすぐに取り入れられる、具体的な「ことば力」と「思考力」を育てる方法が満載。

【新刊紹介】

『言語の本質─ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田喜美氏との共著/中公新書)
日常生活の必需品であり、知性や芸術の源である言語。なぜヒトはことばを持つのか? 子どもはいかにしてことばを覚えるのか? 巨大システムの言語の起源とは? ヒトとAIや動物の違いは? 言語の本質を問うことは、人間とは何かを考えることである。鍵は、オノマトペと、アブダクション(仮説形成)推論という人間特有の学ぶ力だ。認知科学者と言語学者が力を合わせ、言語の誕生と進化の謎を紐解き、ヒトの根源に迫る。ChatGPTなどの対話型AIに仕事を奪われない創造的な人間に子どもを育てるためにおすすめの一書。

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かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。