子どもと「音読」 スラスラ読める子は読解力が高い理由 現役小学校教諭がわかりやすく解説

現役小学校教諭・土居正博先生に聞く「音読」を楽しく取り組む方法 #1 音読の目的や読解力との関係について

小学校教諭:土居 正博

家庭で取り組むメリットは一人ひとりにあわせられること

──音読の宿題は毎日あります。家庭で音読を取り組む意味を教えてください。

土居先生:家庭学習の最大のメリットは、一人ひとりのスピードやテンポにあわせて音読できることです。

とくに、文章を読み上げるのが苦手だったり、読めない文字があってつまずいたりする子にとっては、家庭で音読に取り組む意義は大きいと思います。

──つい忙しいと子どもの音読をおろそかに聞いてしまうことがあります。親の聞き方によって、子どもの理解度に違いは出るのでしょうか?

土居先生:出ると思いますね。聞き方のポイントの一つは、単なる「作業」にしないことです。たとえば、物語文を読んだ後に、感想を親子で言い合ったり、好きな場面を教え合ったりすると良いでしょう。

説明文だと、感想を言い合うのは難しいかもしれないので、「なぜこの順番なのかな」「この車はなんで説明されているんだろうね」などと問いかけをしてみると、豊かな親子の会話にもつながります。

親御さんが聞くことで大切なのは、物事を考える「きっかけ」を子どもに与えることです。子どもが読み上げるのをただ聞くだけでなく、コミュニケーションの工夫をすることで音読の価値も上がると思います。

そして、「ここがダメだ」「できていない」とマイナス面を伝えるのではなく、昨日よりも良くなっている部分を見つけてあげてください。

ただ、音読の宿題は毎日のことですから、いつも完璧な関わりをするのは難しいと思います。気づいたときに前向きな声かけをするだけでも十分です。

できるだけポジティブに、無理をしない範囲で、家庭内で音読学習を楽しんでもらえると嬉しいですね。

ITの導入によって音読の記録が残せるように

──最近では、パソコンやタブレットに向かって音読する様子を録画して提出する宿題もあります。ITを音読学習に使う目的は何でしょうか。

土居先生:IT端末による録画の目的は、子どもたちの音読を記録に残すことです。教師が子どもたちの音読風景をいつでも見られるようになったことで評価もしやすくなりました。

さらに、子どもの成長がわかりやすくなったのも良い点です。はじめて音読した日と、最終日を比べると、スラスラと読み上げる力が向上しているのが一目瞭然。子どもにとっても、自分の姿を振り返ることができるのは大きなメリットですよね。

家庭でも、ときどき録画を見返すと、子どもの成長がわかりますし「上手になっているね」と声もかけやすくなります。

──ITでの音読学習で親が気をつけることはありますか。

土居先生:もしかしたら、録画をしていることで子どもが普段より緊張してしまうかもしれません。ですが、家庭内で音読をすると、どうしても緊張感が足りなくなってしまいますので、適度な緊張感を持って音読するのは、子どもにとって非常に良い経験となります。

学校によっては音読テストを行っている場合もあるので、IT端末の宿題で練習しておくと良いですね。

「スラスラと読もう」「間違えないようにしよう」と子どもが意識しながら取り組めるように、親はそっと見守ってあげてもらえたらと思います。

───◆─────◆───

「文章をスラスラ読み上げる力」を育て、読解力などすべての学力の基礎につながる音読学習。「毎日聞くのが苦痛……」と思いがちな音読の宿題は、一人ひとりのペースにあわせながら子どもの成長を感じられる大切な取り組みだとわかりました。

まずは、親が音読の目的や意義を十分に理解することで、子どものモチベーションアップにもつながることでしょう。

2回目では、音読が子どもにもたらす効果や音読方法について、引き続き土居先生にわかりやすく教えていただきます。

取材・文/中井ようこ(メディペン)

土居先生に聞く「音読」連載は全3回。
2回目を読む。
3回目を読む。
(※2回目は2024年4月9日、3回目は4月10日公開。公開日までリンク無効)

「イラストでよくわかる! 音読指導の新常識」著:土居正博(学陽書房)
すべての画像を見る(全3枚)
この記事の画像をもっと見る(全3枚)
21 件
どい まさひろ

土居 正博

DOI Masahiro
公立小学校教諭

1988年東京都八王子市生まれ。神奈川県川崎市立公立小学校教諭。東京書籍小学校国語科教科書編集委員。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。 2018年「読売教育賞」、2023年「博報賞(奨励賞)」受賞。国語科を専門として、子どもたちの力を伸ばす指導法や理論の開発に取り組んでいる。 主な著書「イラストでよくわかる! 音読指導の新常識」(学陽書房)

1988年東京都八王子市生まれ。神奈川県川崎市立公立小学校教諭。東京書籍小学校国語科教科書編集委員。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。 2018年「読売教育賞」、2023年「博報賞(奨励賞)」受賞。国語科を専門として、子どもたちの力を伸ばす指導法や理論の開発に取り組んでいる。 主な著書「イラストでよくわかる! 音読指導の新常識」(学陽書房)

なかい ようこ

中井 ようこ

Nakai Yoko
公認心理師

小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

メディペン

medipen
医療ライターズ事務所

医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen

医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen