「不登校の子ども」の親へ 鴻上尚史が助言 我が子が「学校に行きたくない」と言ったらどうすればよいのか?

シリーズ「不登校のキミとその親へ」#8‐3 作家・演出家の鴻上尚史さん~親の役割~

作家・演出家:鴻上 尚史

どう考えても「学校に行くこと」ではありません。まずは「苦しんでいる我が子を守ること」が、いちばん大事なんじゃないでしょうか。

ただ、大人は常にたくさんの邪念に惑わされます。子どものことを第一に考えたいと思っていても、「学校に行ってないと知ったら、近所や祖父母になんて言われるか……」なんてことが頭をよぎったりする。冷静に考えたら、そんなことはどうでもいい。だけど、大人は間違えてしまうんです。

つい、「学校に行けないなんて、恥ずかしくてご近所に顔向けできない」「このまま不登校になったら、私がおばあちゃんになんて言われるか……」なんてことを子どもに言ってしまう。残酷ですよね。そうやって、子どもを追い詰めてさらに苦しめてしまうんです。

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子どもは一生懸命に戦っている 親も戦おう

父親は父親で、社会に適合することで勝ち抜いてきた自負がある人が多いので、学校に行かないことは、絶望的なつまずきだと思い込んでしまう。

「将来どうするんだ!」と言うばかりで、子どもの声に耳を傾けようとしない。心が悲鳴を上げている我が子を学校に無理に通わせて、どうしたいんですか。将来、ブラック企業でも我慢して勤め続けられる人間に育てたいわけじゃないですよね。

今、世の中には不登校をテーマにした記事や本や番組がたくさんあります。妻が勧めてもいいし、夫自身が救いを求めて探してもいい。そういうものを見て頭の中をアップデートしましょう。

勇気を振り絞って、自分の頭にこびりついている固定観念を疑ってみてください。それが我が子に寄り添う第一歩です。

学校に行かないことを選んだ子どもは、不安や自己嫌悪やプレッシャーや、いろんなものと一生懸命に戦っている。親も一緒に戦わなくてどうするんですか。

世間体なんて気にすることはありません。近所の人が「おたくのお子さん、いつも家にいるわね」なんて詮索してきたら、「あら、そうですか」なんて適当に愛想笑いしておけばいいんです。

おじいちゃんやおばあちゃん、つまり自分たちの親世代の考えを変えるのは簡単ではないかもしれない。いくら話しても話が通じなくて、「育て方がいけないんだ」「甘ったれてるだけだ」なんて言ってきてこっちが消耗するばっかりだったら、しばらく縁を切りましょう。それもまた、我が子と自分たちを守るための戦い方です。

不登校になった初期は、親もですが、本人はそれ以上に大きなショックを受けています。教科書も見たくない、勉強っぽいことをする気になんてなれない状態かもしれない。

一日中ゲームばかりしていたとしても、僕はぜんぜんアリだと思う。心が骨折している状態で無理をしたら、余計に悪化して、取り返しがつかないことになります。

親御さんは、しばらくのあいだはリハビリ期間だと思って静かに見守りましょう。

これは子どものキミに伝えたいんですけど、そろそろ心のエネルギーがたまってきたなと思ったら、教科書を開けてみてもいいし、興味のある本を次から次に読んでみてもいい。今はネット配信という便利なものがあるので、一日に1本ずつ映画を観ることだってできます。

いちばんもったいないのは、「今日も学校に行けなかった」「またみんなに遅れてしまう」と後悔ばかりして一日が終わってしまうこと。

後ろ向きな気持ちで日々を過ごすんじゃなくて、今日はこれができた、明日はこれをやってみようと前向きに過ごしてほしい。そうすれば得るものは必ずあります。

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