小島よしお “ある芸人”に憧れるも挫折 雑草に学ぶ「自分の根」を伸ばす生き方

シリーズ「不登校のキミとその親へ」#5‐3 お笑い芸人・小島よしおさん~雑草に学ぶ生き方~

お笑い芸人・タレント:小島 よしお

早朝の取材だったにもかかわらず「ピーヤ」のポーズでキメてくれた小島よしおさん。 Zoom取材にて
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子どもたちに大人気の小島よしおさんですが、実は「雑草芸人」と呼ばれる一面も。雑草からは教わることがいっぱいあり、芸人としてスランプで悩んだ時期の自分とも重なるところがあると言います。

その考えは「学校へ行けない」子どもたちにも通じる部分がありました。小島よしおさんにくわしく聞きました。

※3回目/全4回(#1#2#4を読む) 公開日までリンク無効

小島よしおPROFILE
お笑い芸人・タレント。1980年、沖縄県生まれ千葉県育ち。2007年に「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」のギャグでブレイク。現在は年間150本以上の子ども向けライブをこなす“最強キッズ芸人”として活躍。2024年2月に長男が誕生し1児のパパに。

「雑草芸人」と呼ばれるのはとても誇らしい

──野菜に詳しいことで知られる小島さんですが、雑草にも強い思い入れがあるとか。

僕は雑草から大切なことをたくさん教わりました。もともと植物に興味があったんですけど、雑草のことを勉強したり魅力を語ったりしてたら、いつのまにか「雑草芸人」と呼んでくれる人も出てきました。まだホントにわずかですが(笑)。この言葉はぼくにとってはホメ言葉なんです。

雑草って、地味でパッとしないとか、ジャマ者っていうイメージがあるかもしれませんが、じつはちょっと違って。雑草の専門家である稲垣栄洋先生の著書がきっかけで、雑草のイメージががらりと変わりました。今では道端で立ち止まって写真を撮ったりしています(笑)。

そもそも「雑草」っていう呼び方は、作物や野草と区別するために、人間が勝手に分類してるだけなんですよね。植物の中での上下関係なんてないし、多種多様で個性豊かな存在なんです。

そして忘れちゃいけないのが、それぞれに名前が付いているっていうこと。「雑草という名の草はない」というのは、朝ドラ『らんまん』(NHK)で主人公のモデルになった植物学者・牧野富太郎博士の名言です。

──雑草から教わることなどはありますか。

ありまくりです。まず雑草って、根性とか強いイメージがあると思うんですが、じつは競争には弱いんです。弱いからこそ、小さなチャレンジを重ねたり、ライバルのいない環境を探したり、芽を出すタイミングをじっと待ったりして、たくましく生きているんです。

僕もテレビ界の中での競争力が弱くて悩んでいる時期に、いろいろと新しいことにチャレンジしたなかで(失敗も多々ありました)、子どもに向けたライブに手ごたえを感じました。

「あんまり誰もやってないからやってみよう」「とりあえずちょっと続けてみよう」なんてしてたら、5年ぐらいたって「小島よしおが子どもにウケてるらしい」と徐々に知られるようになりました。そんな僕の活動を見て、稲垣先生は僕のことを「雑草みたいな人だな」と思ってくれていたそうです(笑)。

「ワルナスビ」っていうちょっとかわいそうな名前の雑草がいるんですが、このワルナスビは、いつ発芽するかを土の中で10年でも100年でもじっと待ってるんです。土の中で外に出たときのライバルが多くないかとか、ちゃんと光が当たるかな、なんて機をうかがっているんです。すごいですよね。

学校という花壇だけが生きる場所ではない

──同じ植物でも花壇の花や畑の野菜は、お行儀よく並んで、人間にたっぷり手をかけられて育ちます。その点、雑草は自己責任というか、むしろ草むしりなどをかいくぐって生きていますよね。

僕が子どものころの学校や社会って、何となく花壇みたいなところがあったと思うんですよね。予定どおりの作物を狙いどおりのタイミングで収穫して出荷する。いい成績取って、いい大学行って、いい会社に就職するみたいな(笑)。

用意された枠の中で期待どおりに成長しないと、合格点をもらえないっていうのは窮屈だし、これからの時代には合ってない気がします。

植物だって人間だって、個性が違えば得意不得意もある。全部を同じように成長させようとすることに、そもそも無理があるんじゃないかなって、最近思うんですよね。

雑草は周囲に合わせなくてもいい。自分のタイミングで芽を出せばいいし、どんな場所で芽を出すかも自由。

学校が合わないと感じるピーヤ(子ども)たちは、人の手入れを待つ花壇の花よりも、自分のペースでたくましく生きている雑草に近いんじゃないかな。僕もテレビ業界が花壇だとしたら、その外側で子ども向けのイベントや野菜の歌をうたう雑草タイプです(笑)。

昔の人も雑草のすごさはよく知っていました。戦国時代の武将が、雑草を家紋(一族のトレードマーク)にしているパターンがけっこうあるんです。雑草の繁栄する力だったり、しぶとさにあやかりたかったということですよね。

そして生き馬の目を抜く戦国の世においては、周囲に合わせて同じ行動や考え方をするのではなく、雑草のように独自の進化を遂げたいという想いもあったのかもしれませんね。

──「周囲に合わせられない」っていうのは、悪いことじゃないんですね。なるほど、雑草は勇気を与えてくれます。

「苦手なことでは勝負しない」っていうのも、雑草の大きな特徴なんです。僕もピン芸人を始めたころは、劇団ひとりさんのような芝居風のコントに憧れていました。ところが、やってみてもぜんぜんウケない(笑)。向いていないということで、すぐに別の方向へ行きました。

服を脱ぎながら怖い話をしたり腹話術をしたりといろいろやっていくうちに、海パン姿での「そんなの関係ねぇ!」にたどり着いたんです。苦手なことをやり続けていたら、もうお笑いの世界にはいなかったかもしれません(笑)

人間によく踏まれる場所には、踏まれるのが得意な雑草が生える。日が当たらなくてジメジメした場所には、そういう環境が得意な雑草が生える。雑草は自分が勝てる場所を見つけるのがうまい。

というか、勝てる場所を見つけられたから生き残ってきたんです。自然界ってそれほど厳しいですからね。人間社会は見つけられなくても死んじゃうわけではないので、その点は気を楽に持ってほしいなと思います。

苦手なことを克服しようとがんばるのも立派だけど、自分が「勝負できる場所」を探して、そこで力を発揮すればいいっていう考え方も、持っておいてほしいですね。誰にだって、そういう場所がきっとある。

今、苦しい状況にあるピーヤたちは、環境をどうにか変えられないかを考えたり、友だちや家族に相談できたらなと思います。

雑草も人間も根っこの成長は目に見えない

──大人は子どもを心配するあまり、すぐに「目に見える努力」や「目に見える変化」を求めてしまいがちです。悩み苦しんでいる子どもに、どう接すればいいでしょうか。

ニホンタンポポとか春に咲く雑草は、冬の間ずっと根を成長させます。なので見ため的には、あのギザギザの葉っぱがあるだけです。そう、「根っこの成長は目に見えない」というのは、人にも当てはまるんじゃないでしょうか。パズルが完成しないと何の絵かわからないっていうのにも似てるかもしれません。

目に見えるようながんばり方をしていなくてもいいんです。「あせることも引け目を感じる必要もないよ。悩んで苦しんでいる間に、ピーヤたちの根っこは目に見えないところでどんどん伸びているはずだから」と、伝えてあげたいですね。

僕も、アレコレしても結果が出ない時期がありました。その時期に、自分でも気がつかないうちに根が張ってたんだなと思います。「無駄なことなんて何ひとつない」とも伝えたいです。

──数ある雑草の中で、小島さんのいちばん好きな雑草は何ですか?

いちばんというか、好きなのは「セイタカアワダチソウ」。外来の雑草で一時期、日本中に一気に広まったんです。その名のとおり背が高くて、黄色い花を咲かせる。見た目が派手でやることもちょっとトガってて、「アレロパシー」っていうほかの植物をやっつける毒みたいなのを出すんです。

だから一気に広まったんだけど、そのうち自分の毒が自分にダメージを与え始めて、数が減っちゃうんです。で、結局ほかの植物とも共生し始めるんですよね。

なんかドラマの不器用な転校生みたいで、かわいいなって思います。新しい学校に来て「うるせぇ!」って毒を吐いたのはいいけど、その毒で自分が1回孤独になっちゃって、でも結局みんなで仲良くなって文化祭! みたいな(笑)。

ピーヤたちも苦しいときには、まわりや自分自身に毒を吐くことがあるかもしれない。毒っていうのは、植物的には自分の身を守るためのものだったり、人間的にもなんかスッキリするものだったりもする。でも吐けば吐くほど、余計に苦しくなることもあるよね。

「セイタカアワダチソウ」も不器用な転校生も、試行錯誤しながら自分の居場所を見つけていく。苦しい思いをしているピーヤたちだって、必ず自分の居場所を見つけられるよ。「ダイジョブダイジョブ~!」


取材・文/石原壮一郎

小島よしおさんと農学博士の稲垣栄洋さんが雑草から学べる生きる知恵を記した『最強無敵の雑草たち(10歳から学ぶ 植物の生きる知恵)』(家の光協会)。
Web連載していた子どもの悩み相談を1冊にまとめた『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)。さかなクンとの対談も。全文ルビ付き。

※小島よしおさんインタビューは全4回(公開日までリンク無効)
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こじま

小島 よしお

Yoshio Kojima
お笑い芸人・タレント

1980年、沖縄県生まれ千葉県育ち。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年よりピン芸人として活動。2007年に「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」のギャグで大ブレイク。同年の「流行語大賞」にノミネート。 現在は年間150本以上の子ども向けライブをこなす“最強キッズ芸人”として活躍。2020年にYouTubeチャンネル『おっぱっぴー小学校』を開設、チャンネル登録者数15.8万人(2024年6月時)。2024年、小児がんと戦う子どもを応援するゴールドリボン・ネットワークのアンバサダーに就任。 2024年2月に長男が誕生し1児のパパに。 近著に『最強無敵の雑草たち(10歳から学ぶ 植物の生きる知恵)』(家の光協会)、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)など。

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1980年、沖縄県生まれ千葉県育ち。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年よりピン芸人として活動。2007年に「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」のギャグで大ブレイク。同年の「流行語大賞」にノミネート。 現在は年間150本以上の子ども向けライブをこなす“最強キッズ芸人”として活躍。2020年にYouTubeチャンネル『おっぱっぴー小学校』を開設、チャンネル登録者数15.8万人(2024年6月時)。2024年、小児がんと戦う子どもを応援するゴールドリボン・ネットワークのアンバサダーに就任。 2024年2月に長男が誕生し1児のパパに。 近著に『最強無敵の雑草たち(10歳から学ぶ 植物の生きる知恵)』(家の光協会)、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)など。

いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか