小島よしお「非難するSNSとは戦わない わが子に『芸人やめて』と言われたらまず謝る」

シリーズ「不登校のキミとその親へ」#5‐4 お笑い芸人・小島よしおさん~よしお流SNS対策と子育て~

お笑い芸人・タレント:小島 よしお

取材当日は朝6時半から話を聞かせてくれた小島よしおさん。早朝になったのにはあるワケがありました。  Zoom取材にて
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「一発屋」と言われた時期を経て、子ども人気No.1芸人として大ブレイク中の小島よしおさん。

たくさんの子どもと触れ合うライブイベントでは「よしお!」と呼ばれ大盛り上がりする一方で、「学校に行ってないんだ」と直接子どもの悩みを聞くこともあると言います。

今、小中学校の不登校児は約30万人(令和4年度文部科学省調べ)と過去最大になりました。学校や友だち関係に悩む子どもとその親たちへ、よしおからのメッセージです。

※3回目/全4回(#1#2#3を読む) 公開日までリンク無効

小島よしおPROFILE
お笑い芸人・タレント。1980年、沖縄県生まれ千葉県育ち。2007年に「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」のギャグでブレイク。現在は年間150本以上の子ども向けライブをこなす“最強キッズ芸人”として活躍。2024年2月に長男が誕生し1児のパパに。

SNSは疑心暗鬼と攻撃性を拡大するツール

──不登校児の増加が話題になっています。小島さんは最近の子どもたちを見て、どんなことを感じますか。

たくさんのピーヤ(子ども)たちのお悩みを聞いて感じるのは、人間関係が苦しいものになってるんじゃないかなってことですね。みんながSNSを使うようになったのが、けっこう影響してるのかもしれません。

大人の世界も同じですけど、まだ経験が少なくて心がピュアなピーヤたちにとっては、振り回されてダメージを受ける度合いがもっともっと深刻ですよね。

SNSがあるおかげで、いろんな人のいろんな意見を知ることができたりします。それはいいんですけど、意見と人格をごっちゃにして、自分と違う意見を持っている相手をすぐ嫌いになったり、場合によっては「敵」だと思ったりすることはないでしょうか。

ひとつの事柄についての意見が違うからといって、相手を嫌って遠ざけていたら、あっという間に独りぼっちになってしまいます。

そもそも、文字のやり取りで気持ちを伝えるのは簡単ではありません。誤解をもとにしたケンカもしょっちゅう起きるし、お互いに相手に警戒心を抱いていると、疑心暗鬼で悪いほうに悪いほうに考えてしまう。SNSが人間関係をややこしくしているって部分は、残念ながらありそうです。

SNSと縁を切るのは難しいかもしれませんが、ピーヤたちにはその危険性をちゃんと知ったうえで、十分に気を付けて使ってほしいですね。大人にもSNSやネットに振り回されている人がたくさんいて、ピーヤたちに悪い例を見せているのは、ホント申し訳なく思ってます。

──以前、小島さんがアメリカの有名なアニメ映画で重要な登場人物の吹き替えをやったときに、SNSでずいぶん批判されたことがありました。

あれはビックリしましたね。SNSに「小島よしおなんか使うな!」ってずいぶん書かれました。反対の署名運動まで起きたそうです。その時点では、誰もまだ日本語版の作品を見ていないはずなんですけどね(笑)。

いい気持ちはしませんでしたが、そのときは完全にスルーしました。言い返したところで、誰かを批判することに熱中している人は、こっちの話なんて聞く気はないだろうなと感じていましたから。

結果的には、スルーしてよかったです。もし、僕が応戦していたら、自分の拳も相手の拳も傷つくし、相手は拳のおろしどころがわからなくなったかもしれない。

いざ映画が公開されたら「意外にいいじゃん」って声が多くて、いつの間にか批判の声はなくなりました。

他人の気持ちや行動は、自分では変えようがないですよね。とにかく誰かを攻撃したいってだけの悪口もいっぱいあります。

そういうものを相手にしても巻き込まれちゃうというか、僕の性格的な部分もありますが、距離を置くようにしています。自分を守るためにも。戦わないっていう戦い方もあると、僕は思います。

情報があふれていて、自分に関する知らなくてもいい噂や悪口まで目や耳に入ってきてしまう世の中では、スルーするのも大事な選択肢のひとつじゃないでしょうか。

ほとんどの悪口は、自分が悪いから言われるわけではありません。言ってる側は、ターゲットを攻撃して安心しようとしているだけだったりします。そこに付き合っても、お互い得はない気がします。お互いにです。

もちろん、何を言われても我慢しろと言いたいわけではありません。いちばん優先しなきゃいけないのは、自分自身を守ることです。

悪口の内容や相手のやり方があまりにひどくて、スルーしても何も変わらない場合は、まわりの大人にも相談して作戦を考えましょう。

もしわが子に「芸人をやめてほしい」と言われたら

──2月に男の子が生まれて、パパになりました。かわいいでしょうね。

最近、よく笑うようになったんですよ。子どもってすごいなあって、毎日思ってます。それはそれは、かわいくて愛おしいですね。

親になったら、人生の優先順位が大きく変わったと感じます。今までは仕事が何より優先でしたが、家族の時間をもっと大事にしたいと思うようになりました。

事務所とも相談して、休みを段階的に増やしていく計画を立てています。まだ今は、月に4日休みをもらうのが精いっぱいなんですけどね。

その分、家にいるときは育児をなるべく分担するようにしています。といっても、どうしても妻の負担が大きくなっちゃうんですけど。

一時期は、夜中にミルクをあげるときも2人で起きてました。そしたら2人とも倒れそうになっちゃった(笑)。今は、たとえば早朝のミルクは交互で担当するとか、無理のない範囲で協力し合うようにしています。

この取材も、朝6時半からという早朝に設定してもらったんですけど、じつはミルクの時間との兼ね合いです。ありがとうございました。いちばんゆっくり話ができるのが、早朝のミルクを与え終えて、次のミルクをあげるまでの間なんです。

子どもの世話はたいへんといえばたいへんですけど、毎日どんどん成長していく様子を見るのは楽しいですね。

──もし将来、わが子が「学校に行きたくない」と言ったら?

難しい質問ですけど、ありえることですよね。まずはじっくり話を聞いて、思っていることを全部、吐き出してもらうのがいいかな。

とりあえず体を動かしたほうがよさそうだと感じたら、バッティングセンターに誘ってみます。環境を変えるために、知らない町へ旅行に出るなんてこともしてみるかもしれません。

あー、でも、もし自分が芸人をやっていることが、学校に行きたくない理由だったらどうすればいいのかなあ(笑)。うーん、まずは謝りますね。「つらい思いをさせてごめん」って。

そのうえで、芸人の仕事は多くの人に笑ってもらうことで、自分はこういうつもりで芸人をやっているんだと説明して、あとはそれでお金をもらうことで生活が成り立っているとか、経済面の話もしなきゃいけないですよね。

それでも、子どもに「芸人をやめてほしい」と言われたら、けっこうリアルにシミュレートすると思います。どうやって暮らしていくか、今の家に住み続けられるのか、ほかにどんな仕事ができるか、とか。

最後は「芸人以外で、どんな仕事をしたらいいと思う?」と投げ返すんじゃないかな。それで、子どもにも考えてもらいます。

──お子さんとしっかり向き合っている光景が、目に浮かんできます。先々、どんな親子になりたいですか?

親が一方的に答えを出すんじゃなくて、芸人を続けるにせよやめるにせよ、選んだ道がどういう場所につながっているのか、その先をいっしょにイメージして対等に話し合う。そんな親子になれたらいいですね。

僕が目指す理想の父親は、子どもにとっての「でっかい友達」になることです。だから「パパ」じゃなくて、「よしお」って呼ばせるつもりです。

子どもが5~6歳ぐらいになると、たとえば電車とか昆虫とか、父親以上に詳しい分野も出てきますよね。そこはちゃんとリスペクトを持って、知らないことは素直に教えを乞える父親になりたいです。

結局のところは、とにかく元気に過ごしてくれたら、それでいいんですけどね。

もしかしたら「とにかく元気で過ごしてくれたら、それでいい」っていう気持ちを忘れないことが、いちばん大事なのかもしれません。そしてたぶん、いちばん難しいのかな。

自分自身やピーヤたちが大事なことを忘れないために、僕はこれからも、気にはなるけど大事じゃないことに対して「そんなの関係ねぇ!」と言い続けます。


取材・文/石原壮一郎

小島よしおさんと農学博士の稲垣栄洋さんが雑草から学べる生きる知恵を記した『最強無敵の雑草たち(10歳から学ぶ 植物の生きる知恵)』(家の光協会)。
Web連載していた子どもの悩み相談を1冊にまとめた『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)。さかなクンとの対談も。全文ルビ付き。

※小島よしおさんインタビューは全4回(公開日までリンク無効)
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こじま

小島 よしお

Yoshio Kojima
お笑い芸人・タレント

1980年、沖縄県生まれ千葉県育ち。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年よりピン芸人として活動。2007年に「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」のギャグで大ブレイク。同年の「流行語大賞」にノミネート。 現在は年間150本以上の子ども向けライブをこなす“最強キッズ芸人”として活躍。2020年にYouTubeチャンネル『おっぱっぴー小学校』を開設、チャンネル登録者数15.8万人(2024年6月時)。2024年、小児がんと戦う子どもを応援するゴールドリボン・ネットワークのアンバサダーに就任。 2024年2月に長男が誕生し1児のパパに。 近著に『最強無敵の雑草たち(10歳から学ぶ 植物の生きる知恵)』(家の光協会)、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)など。

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1980年、沖縄県生まれ千葉県育ち。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年よりピン芸人として活動。2007年に「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」のギャグで大ブレイク。同年の「流行語大賞」にノミネート。 現在は年間150本以上の子ども向けライブをこなす“最強キッズ芸人”として活躍。2020年にYouTubeチャンネル『おっぱっぴー小学校』を開設、チャンネル登録者数15.8万人(2024年6月時)。2024年、小児がんと戦う子どもを応援するゴールドリボン・ネットワークのアンバサダーに就任。 2024年2月に長男が誕生し1児のパパに。 近著に『最強無敵の雑草たち(10歳から学ぶ 植物の生きる知恵)』(家の光協会)、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)など。

いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか