「学校に行かない」選択をする子どもたち 「不登校」の理由をフリーランスティーチャーが明かす

フリーランスティーチャー・田中光夫先生に聞く、子どもが不登校になったときどうしたらいい? #2 不登校時の過ごし方

フリーランスティーチャー:田中 光夫

「学校に行けない」という状況になったとき、親はどのように子どもと向き合えばいいのでしょうか?  写真:アフロ

子どもが突然、学校に行けなくなった場合、どうすればいいのかをフリーランスティーチャー・田中光夫先生に聞く本連載。

前回は、令和の不登校に対する認識と、学校側の視点や課題についてのお話でした。2回目は、不登校時の過ごし方や、学校との連携についてです。

子どもの不登校に直面し、学校に行けない日が続いていると、親である私たちは「このままだと社会性が身につかないのではないか」、「勉強が遅れてしまうのではないか」とさまざまな心配ごとが浮かんできます。そして、正直ずっと親も子と一緒の生活はつらいものです。

そんなとき、親はどのように子どもと向き合えばいいのでしょうか?

(全3回の2回目。1回目を読む

フリーランスティーチャー
田中光夫(たなか・みつお)


14年間の公立小学校勤務を経て、2016年4月より休業に入る先生の代わりに学校担任をする「フリーランスティーチャー」に。現在までに10の小学校で代替え教師を務める。また、全国で教員の働き方改革を進める「アクティブ・ワーキングセミナー」を開催。

不登校=引きこもりではない

──子どもが不登校になると、「学校を休んでいるのだから、日中は外へ出てはダメなんじゃないか」と思っている保護者の方もいると思います。不登校になったときは、どのように過ごすのがよいのでしょうか?

田中光夫先生(以下、田中先生):不登校は、子どもが「学校に行かない」という選択をしているだけで、必ずしも「家にいなければならない」というわけではないです。

保護者や子ども自身が、「不登校は良くない」、「学校に行くのが当たり前だ」という固定観念をお持ちだと、そういうマインドになってしまうかもしれません。そもそも「学校に行かないのであれば、家にいてください」ということ自体おかしな話だと思うんです。

とはいえ、現実は平日の昼間に子どもとスーパーに買い物に行くと「なんで、学校に行かないの?」と、怪訝な目で周りから見られてしまう。まだまだ社会自体が「学校に行くのが当たり前」だという風潮がありますよね。

私が持っているクラスでは、「家族で出かけるので、学校を休みたい」と相談を受けた場合、快く「どうぞ、どうぞ休んでください!」と伝えています。家族との時間を優先するために、平日に学校を休むことは決して悪いことではありません。そのように、もっと社会全体が寛容になればいいなと思っています。

──一方で、保護者の立場からすると、学校のような集団生活の中でなければ、社会性や協調性が身につかないんじゃないかと心配してしまうのも事実です。

田中先生:「学校に行かない」と選択したからと言って、社会性が育たないとは私は思いません。

例えば、フリースクールや習い事など、多様なコミュニティに日頃から接していれば、そこでいろいろな人たちと出会えますし、それに学校では同世代の人としか関われませんが、外に出れば世代や性別を超えていろいろな人たちと関わることができます。

そこからコミュニケーションを学ぶことが、のちにその子にとって大きな強みになることもあるからです。

一方で、「外に出たくない」という子どもの場合でも、今はオンラインでのやりとりにより、家にいながら他者とコミュニケーションが取れる時代です。英会話スクール、音声ゲームなどいろいろな方法で、その子に応じたコミュニケーションの場を見つけてほしいなと思いますね。

探究学習で家での学びが豊かになる

──ちなみに、田中先生がお勧めする不登校時の過ごし方はありますか?

田中先生:私個人の考えとしては、その子が本当に好きなことを探求させてあげたいと思っています。親は子どもに対して「最近、何に興味があるの?」、「どんなことが学びたい?」と声をかけるところから始めてもいいかもしれません。

例えば、子どもがパンづくりに興味があれば、一緒に作ってみる。パンづくりは、材料の準備から生地の混ぜ合わせ、発酵、形作り、焼き上がるまで工程が複雑なんです。子どもが意欲的に取り組めば、実は小学校の授業以上に学べることが多くあります。

他にも、子どもが「高尾山に登ってみたい」と言えば、一緒に登ってみる。そして体験記として想いを綴ったり、写真を貼ったりしてまとめることができれば、それは立派な自習学習です。

このように学校以外で学ぶことを選ぶとするならば、アクティブにいろんな体験をしてほしいと僕は思います。そして、さらにやりたいことが自分から探せるようになれば、家庭での学びはより豊かになっていくのではないでしょうか。

──田中先生のように、「好きなことをどんどんやらせてあげよう!」と思う親がいる一方で、子どもの学習面を心配される方も多いと思います。休んでいる間に学校の授業についていけなくなってしまうんじゃないかと。

田中先生:親としては、子どもが休んでいる間に学校の授業に遅れてしまうことを気にされるのは当然だと思います。「早く学校に行けるようになってほしい」と思っているなら、なおさらですよね。

その場合、通信添削教材や一般的なタブレット教材などは、学校指導要項どおりのカリキュラムになっているので、授業の進度に合わせて勉強したい方にはおすすめです。

特に、最近は子どもの心を掴むユニークな教材が多く出ていますので、実は学校で教えるよりも自分でしっかり学べる子も多くいる印象です。もちろん教材費用はかかりますので、あくまで手段のひとつとして、検討してみてはいかがでしょうか。

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