子どもの学力「音読」でアップ! 具体的な方法を現役小学校教諭が紹介

現役小学校教諭・土居正博先生に聞く「音読」を楽しく取り組む方法 #2 音読の効果と具体的な方法について

小学校教諭:土居 正博

ハキハキよりも正しく読むことを大切に

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──音読の効果的な読み方について教えていただけますか。

土居先生:まず大切にしてほしいのは「正しく読むこと」です。最終的にはスラスラ、ハキハキと読めるようになるのが理想ですが、まずは間違えずに正しく読むことを目標にしましょう。

ご家庭で取り組んだときに漢字や語句の間違えた場合は、ママパパが正してあげてください。読めない漢字がある場合は正しい読み方を教えたり、ヒントを出したりしてあげるのも良いでしょう。

あとは単語や文章の「高低」を正しく読ませることも大切です。日本語は英語に比べて起伏が少ないので、高低を使いわけて表現しなければなりません。

例えば、「あめ」には高低によって「雨」と「飴」の二つの意味があります。小さなお子さんはとくに間違えやすいので、きちんと教えてあげることが重要です。

また、一文を読むときには「高→低」で読むのが基本です。「高→低」で読むと非常にかっこいい音読になりますので、子どもの読む意欲がきっと上がるはずです。

──スラスラ読めるようになるために、今すぐできる声かけはありますか。

土居先生:句読点を意識して読ませるのが、音読力を上げるポイントの一つです。

具体的には、文章の区切りである句読点まで一息で読ませます。おもしろいことに、句読点まで一気に読ませる習慣をつけておくと音読に対する緊張感が増し、いつのまにかスラスラ読めるようになるのです。

なぜかというと、「句読点まで一気に読まなければならない」と意識することは、目を先にずらした「先読み」につながります。見ているところと、読み上げているところがずれるんですね。大人だと2~3行ほど先読みできます。

「先読み」は将来の読解力につながる重要な力だといわれていますので、ぜひ伸ばしてあげたいですね。

──物語文では気持ちを込めさせたほうが良いでしょうか。

土居先生:家庭での音読学習では正しく読むことを優先しましょう。自分の思いや考えを伝えるために、表現しながら読むことを「朗読」といいます。つまり、気持ちを込める読み方というのは朗読であり、音読からステップアップした方法です。

朗読の難しい点は、気持ちを込めるための方法が具体的にわからないので、一人ひとりの能力に任されてしまうところです。「気持ちを込めて」といわれてもどうしたらいいか迷ってしまい、読むことが嫌いになってしまう恐れもあります。

家庭での音読学習では朗読までは求めなくてよいです。物語の感想を言い合ったり、物事を考えるきっかけを与えたりするほうが大事だと思います。

音読は中学生以降の黙読につながっていく

──読解力を身につけるにあたって、音読の具体的な効果をお聞かせください。

土居先生:教育心理学の研究では、音読をすることによって「黙読」への移行がスムーズになるといわれています。黙読とは、声に出さずに文章を読むことです。黙読ができるようになると、音読のように声に出して読まなくても心の中で音が聞こえてきます。

なぜ、黙読が必要かというと、音読と比べてたくさんの文章を読めるようになるからです。子どもの読む速さに関する研究では、小学校4年生ころから、音読よりも黙読が優位になるというデータもあります。

中学校以降の授業では、長文読解が求められるため、効率的に文章が読める黙読のスキルは必須です。小学校時代の音読は、黙読の基礎を固めるためにも、大切な役割を果たしているんですよ。

───◆─────◆───

毎日の音読学習を続けることは、子どもたちの学力や情緒面にとってプラスの効果が大きいとわかりました。音読の効果をさらに高めるための視点も教えていただき、子どもへの声かけのヒントになりますね。

次回3回目では、音読の宿題を楽しく続けるコツについて、引き続き土居先生に伺います。

取材・文/中井ようこ(メディペン)

土居先生に聞く「音読」連載は全3回。
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(※3回目は2024年4月10日公開。公開日までリンク無効)

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どい まさひろ

土居 正博

DOI Masahiro
公立小学校教諭

1988年東京都八王子市生まれ。神奈川県川崎市立公立小学校教諭。東京書籍小学校国語科教科書編集委員。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。 2018年「読売教育賞」、2023年「博報賞(奨励賞)」受賞。国語科を専門として、子どもたちの力を伸ばす指導法や理論の開発に取り組んでいる。 主な著書「イラストでよくわかる! 音読指導の新常識」(学陽書房)

1988年東京都八王子市生まれ。神奈川県川崎市立公立小学校教諭。東京書籍小学校国語科教科書編集委員。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。 2018年「読売教育賞」、2023年「博報賞(奨励賞)」受賞。国語科を専門として、子どもたちの力を伸ばす指導法や理論の開発に取り組んでいる。 主な著書「イラストでよくわかる! 音読指導の新常識」(学陽書房)

なかい ようこ

中井 ようこ

Nakai Yoko
公認心理師

小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

メディペン

medipen
医療ライターズ事務所

医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen

医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen