広島発「異学年探究学習」小規模公立小学校でおきた驚きの変化とは?

【小学校教育2.0】江田島市立三高小学校の挑戦#1 「探究学習が育む子どもの意欲」

三高小学校の取り組みをサポートしてきた広島県教育委員会義務教育指導課(前・個別最適な学び担当)の村田耕一さんは、こう話します。

「探究学習は、これまでの授業と違い『正解』や『正しいやり方』、そして『シナリオ』がありません。だからこそ、先生方も必然的に試行錯誤しないといけない。それにはとても時間がかかるし、これまで以上に大変だと思うんです。

決まった『ゴール』があるわけでもなく、先が見えずに苦しい時間もあったと思います。

そんななかでも、先生方は本気で考え、悩みながら子どもたちに伴走していました。その姿が、自ずと子どもたちにも伝わっていったと感じます。

子どもたちをサポートしながら、一緒に探究に取り組む先生の姿。  写真提供:三高小学校

間近で一生懸命考え、探究する先生方の姿を見ていたからこそ、子どもたちも積極的に、そして主体的に学びを進めていき、悩んだり迷ったりしても粘り強く取り組む姿につながったのではないか。客観的にはそんなふうに見えました」

気負うことなく子どもたちと一緒に考え、真剣に探究する。そうした先生方の姿こそが、子どもたちの意欲や主体性を育んでいたのです。

異学年探究で育った「他者を尊重する姿勢」

3~6年生までが参加する三高小学校の異学年探究。グループ内にさまざまな学年の子が混在しています。

三高小学校は3・4年生、5・6年生で複式学級となっており、この2学年は同じ教室で学んでいましたが、3年生から6年生が一緒に、しかも同じ内容について学ぶのは初めてのこと。

当初は、全員が主体的に学習に取り組めるのか、先生方にも不安があったといいます。

「実際に学習を進めていくと、6年生は、3・4年生が自分の意見を言えるように優しく接する姿が多く見られました。特に3年生は、総合的な学習の時間自体が初めてなので、『何をやるんだろう』と不安に思う子もいます。そこを6年生がフォローしながら進めてくれたことで、心強さがあったのではないかと感じます。

発表会の準備なども、高学年がリードして進めてくれました。  写真提供:三高小学校

さらに、同学年でのクラス活動ではリーダーシップを発揮するタイプではなかった子も、異学年探究ではいきいきと活動し、下級生をまとめてグループを引っ張っていく姿がありました。学習内容だけでない部分で、大きな成長があったと感じます」(里岡先生)

そして、子どもたちのお互いへの接し方にも、良い変化が出てきました。

「異学年探究では、子どもたちは特に活発に意見を出し合い、対等な立場で学習を進めることができました。子どもたちの『知りたい』『やってみたい』という気持ちを大切にしたことで、学年などの違いを問わず、他の子の意見や提案などを尊重する雰囲気が生まれました。

フィールドワークでも、みんなで協力して取り組む姿が見られました。  写真提供:三高小学校

お互いを認め合うことで、子どもたちの間に良い関係性が育まれ、『良い人間関係を築く経験』ができたことも、子どもたちのなかに残る、大きな成果の一つだと考えています」(里岡先生)

子どもたちの興味・関心を大切にした異学年探究は、学習に対する自主性・主体性の育成にとどまらず、お互いの意見や考え方を尊重する姿勢までも育んでいきました。

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第2回は、イエナプランの「ブロックアワー」を参考にした、自由進度学習への挑戦についてうかがいます。


取材・文 川崎ちづる


【小学校教育2.0】江田島市立三高小学校の挑戦は、全3回。※公開日までリンク無効

#2  広島発・自由進度学習+教え合い 良い人間関係が成績に与えた好影響
#3  広島発・子どもが主体的に学ぶ! 異学年探究学習×自由進度学習の想像以上の効果

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かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。