安野光雅さん ロングセラー絵本『おおきな ものの すきな おうさま』読み聞かせのコツ

「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」隊長がお教えします

読み手 ーーおはなし隊隊長 宇田詔子
※この記事は、講談社絵本通信に掲載の記事を再構成したものです。
 
キャラバンカーに本をたくさん積んで、全国47都道府県におはなしを届ける「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。
幼稚園や保育所、小学校や図書館、書店など様々な訪問先で、おはなし会を重ねてきたおはなし隊の隊長さんが、子どもたちに人気の絵本の読み聞かせのコツをお教えします!
1976年に刊行された安野光雅さんのロングセラー作品です。おおきな ものが大好きな、ちょっとわがままな王様の日常が描かれていて、スケールの大きさに目を見張ります。家来たちの奮闘、気苦労も場面場面から伺えます。

絵本のあとがきでは、「生命を人間がつくることはできない。花一つ、虫一つが、かけがいのないものであることを思わねばならぬ。」とあり、絵本の最後に出てくる、おおきな植木鉢と一輪のチューリップへとつながります。
『おおきなもののすきなおうさま』
文・絵:安野光雅 講談社
「おおきな ものの すきな おうさま」
タイトルと中表紙の題名を読み上げる時、絵本のタイトルを繋げて読まずに、「おおきな ものの」と読んだあと1秒くらい持たすことで、おおきな物が本当に好きな、王様であることに含みを持たせることができます。

中表紙では、大きな自転車にちょこんと乗られている王様がなんとも可愛らしい。

「むかし ある ところに、~~ 一にちが はじまるのでした。」
ここでは家来の多さと、とても大きな歯ブラシ、懐中時計に目がいきます。絵が緻密で細かい発見もあるので、ゆったりと絵を見せながら、ゆったりと読み進めていきましょう。
屋根よりたかいベッドで目が覚めるおうさま
『おおきなもののすきなおうさま』より
「すいじばの とけいの ~~ はじめる あいずなのです。」
またまた大きな大きな調理器具に皿、時計が出てくるので、絵をゆったりと見せながら、ゆったりと読みます。家来たちもそれぞれ朝の準備に追われています。

「ごちそうが できてきても、おうさまが ~~ できないほどです。」
参加している子どもたちの歓声や感想をそっと聞きながら、王様の食事風景をのぞいてみましょう。大きな物が次々現れる光景にきっと目を丸くするかもしれません。
その後、チョコレートが好きな王様は、百年のかかっても食べきれほどの大きなチョコレート食べて幸せでしたが、

「それから まいにちのように ~~ とくべつ おおきな ものを つくりました。」

王様のわがままに付き合い、国中の力を結集して王様の願いを叶えようとする家来たち。本当に大きいものが必要なのかはさて置き、これで虫歯の治療に役立つならと、やさしい気持ちで読んでみましょう。
おおきいチョコレート
『おおきなもののすきなおうさま』より
「はいしゃは、おおぜいの けらいたちを ~~ ちいさな むしばが、やっとの ことで ぬけました。」
くぎ抜きの大きさに目を見張りましょう。小さな小さな虫歯の対比が面白い場面です。

歯がとてもとても小さいけど、「ここにあるよ」と指をさしてあげると、子どもたちが目を凝らして、絵本を見つめます。抜いた歯の小さいこと、そしてくぎ抜きの大きいこと。虫歯の治療が終わって何よりです。

「おうさまの ごめいれいで ~~ えーん えーんと、また おなきに なりました。」
王様の小さな鳥たちを思いやる心が伺えますが、思い通りにならないことに心を痛める王様。「泣き虫なんだね」や、「当たり前だよ」、といろんな声が上がることもあります。緻密なお城の絵にも注目してほしい場面です。

「ところが ある ひ、わしに おわれて ~~ すっかり ごきげんに なられました。」
場面には王様は描かれていませんが、文面から満足そうな王様の様子が伺えますね。少しうれしそうな感じで読むといいですね。

「おうさまは、またまた ~~ おおきな うえきばちを つくれと いう ごめいれいです。」
またまた、たくさんの家来たちが、一生懸命働いています。やれやれと思いながらも、王様のために働く家来の皆さんに敬意を払いつつ、「おおきなうえきばちをつくれとごめいれいです。」は、はっきりと強めに読んでみましょう。
おおきな植木鉢にチューリップが1つ
『おおきなもののすきなおうさま』より
大きな大きな植木鉢に咲くのは、きっと大きな大きなチューリップの花に違いないと、毎日期待して待っていた王様。ところが……。

「はるに なりました。 おおきな おおきな うえきばちに、かわいい かわいい ちゅーりっぷが、ひとつ さきました。」

物語の最後に出てくる可愛い、可愛いチューリップ。目を凝らしてよーく見てみると、植木鉢の真ん中に小さな花がパッと一輪咲いています。これがあとがきに書かれていたことなんですね! 優しさを込めて読んでいくと、その儚さや小ささが愛おしくなります。

決して難しいおはなしではないけれど、とても奥の深い絵本ですね。絵本と絵のもつ魅力に吸い込まれていく一冊だと思います。是非、多くの子どもたちと一緒に読んでみてくださいね。

●今回読んだ本

『おおきなもののすきなおうさま』
文・絵:安野光雅 講談社

●プラス1冊

美しい田園風景を描きながら、はじめて数に出会う子どものために、数字を楽しく見せてくれる絵本。

『かぞえてみよう』
文・絵:安野光雅 講談社

本とあそぼう 全国訪問おはなし隊

たくさんの絵本を積んだ2台のキャラバンカーで各都道府県を巡回し、幼稚園、保育所、小学校や図書館、書店などを訪問している、「本とあそぼう...