「レッツ」誕生秘話! 児童文学作家ひこ・田中×絵本作家ヨシタケシンスケ

「レッツ」のひみつ 10の質問

児童図書編集チーム

いまや、そのイラストは子どもたちのみならず、たくさんの大人たちだって目にしたことがあるでしょう。はじめて描いた絵本『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)など多くのベストセラーをはなっているほか、NHK Eテレ『カガクノミカタ』のイラストも担当するなど多方面で活躍しているヨシタケシンスケさん。

そのヨシタケさんが、子どもに向けた児童書と最初にかかわったのは、さかのぼること、およそ12年前。映画化された『お引越し』『ごめん』などで知られる作家のひこ・田中さんが文を書いた『レッツとネコさん』という作品でした​。

当時、雑誌に描かれたイラストを見たひこさんが、「この人のイラストなら、子どもに伝わるのでは」とヨシタケさんに声をかけでできたのは、5歳のレッツが、自分が3歳のときに新しい家族としてネコをむかえたことをふりかえるというおはなしです。

この「レッツ」シリーズ、5歳の子どもが「自分」にまつわるさまざまを見つけていくというストーリーで、これまでレッツは、ひとりで買い物に行けるかどうかためしてみたり、おかあさんのおなかのなかにいたときのことを想像したりと、いろんなことにトライしてきました。

そして2022年春、5冊目となる新刊『レッツもよみます』が刊行されました。今度のレッツは、字が読めるようになった自分が、読み聞かせで耳から物語を聞くことと、自分の目で物語を理解していくことのちがいに気がついていく、というおはなしです。

新刊の発売を記念して、「レッツ」誕生のヒミツを、ひこさんに10の質問に答えていただくことで解き明かしていきます。ヨシタケさんの楽しいイラストとともにお楽しみください。

※以下のインタビューは、「レッツ」シリーズがオールカラーの新装版として刊行された際に、「dandan vol.39」(2018年)に掲載されたものです。

レッツのひみつ

レッツシリーズ10の質問

Q1:このたび、新装版になって、カラフルに色のついたレッツに再会されました。ご感想をお願いします。

A:レッツ、こんなにくっきりしていたのか。知らなかった。
レッツを再発見しました。同じレッツのはずなのに、なんだか前よりフットワークが良くなったような気がします。それに比べて、私の方は……。いやいや、そんなことはない。私だって、きっとレッツのように、カラフルになっているはずだ。お帰りなさい、レッツ!

Q2:「レッツ」を書くにあたって、どうしてヨシタケシンスケさんに描いてもらおうと思ったんですか?

A:ヨシタケさんの絵を初めて拝見したとき、人の仕草や表情、それも、描くならここしかないだろうという一瞬を、ものすごく巧く切り取っていらっしゃるのに驚きました。冷静な観察眼に裏打ちされつつ、人への暖かな視線を感じたのです。この絵で小さな子どもを見てみたいなと強く思いました。それで、ヨシタケさんの作品をイメージしながら話を書いてもいいですかという、とんでもないお願いをしたのです。

Q3:ヨシタケシンスケさんに「レッツ」を描いてもらうにあたって、どんなリクエストをしましたか?

A:かわいい顔立ちでなくていいです。かわいくない顔立ちでなくていいです。ただ、ここにいる子どもでいいです。とお伝えしました。男の子っぽくしないでください。女の子っぽくしないでください。とも言いました。レッツは、ただレッツなので、そんなレッツを、よろしくお願いします、と。なんだか、すごいリクエストですね。……本当に、申し訳ないです。

Q4:ヨシタケシンスケさんが描いたレッツと初めて対面したとき、どんな感想を持ちましたか?

A:一目見て、「あ、レッツだ!」と思いました。探していた子どもに、ようやく巡り会えたような気持ちです。この子、この子。こんにちは、レッツ。レッツは、色々考えているみたいやなあ。なに考えてるのかなあ。これからもよろしく、レッツ。そんな感じでした。

Q5:ところで、レッツはどうして「5歳」なんですか?

A:教科書で「世界はこうなっている」と教えられる以前、自分だけで色々気づき、発見して、自分なりに世界を把握していく年齢として5歳にしました。3、4歳を振り返るのも、5歳のレッツが過去の自分を発見しているからだと思います。レッツの考えていることは大人の目から見たらとんちんかんかもしれないけれど、レッツは自分で考えるおもしろさの中にいます。

Q6:かあさんが黒ネコのキウイを家につれてきますが、子どものころ、動物とすご~くなかよくなった経験はありますか?

A:親が動物嫌いだったこともあって、子どものころに動物を飼ったことはありません。ただ、むかしむかし、お~むかしなので、当時は飼われている家の前で、つながれることもなく寝ていたりするイヌが結構いましたから、あちこちにイヌのお友達を作っていました。ネコにも話しかけていたのですが、こちらにはいつもすぐに逃げられて、それがちょっと悲しかったです。

Q7:5歳のレッツは、ひとりで電車に乗ってショッピングモールに買い物に行ってしまいます。おさないころ、ひとりで冒険した記憶、ありますか

A:動物園や遊園地では、よく消えていました。一種類の動物に興味があって、そのオリの前でじっと動かないというタイプではなかったです。何度も乗りたい遊具もなかったです。どちらかというと、テーマパークの喧噪にハイになって、空間を次から次へと移動していくのが楽しかったようです。なんでだろ。浮遊するような感覚が好きだったのかな? それを冒険と呼ぶかは疑問ですが。大人はそういう子どもを迷子と呼びます。

Q8:レッツはふみだいに「ゴキブリさん」という名前をつけました。お気に入りのものに、ちょっと「?」な名前つけたことありますか?

A:「?」かどうかはわかりませんが、動物以外のものに名前をつける癖はあります。今は、元気のない庭木に名付けて、励ましの声をかけてます。家電のいくつかも名付けています。そうすると、故障しなくなります。ウソです。悔しいのは、自分にはアン・シャーリーのような名付けのセンスがないことです。『歓喜の白路』『輝く湖水』。とても思いつきません。

Q9:とうさんとかあさんが、わりとレッツのすることを、そのまま受け止めている印象です。こういう親子いいなあという理想をこめているのですか?

A:親子って、互いをケアする存在だと思います。親はひとりでは生きられない子どもの世話をする。子どもは信頼という、ある種の承認を親に与える。それさえあればあとは親も子もマイペースでいい。だから両親もレッツの行動や反応を、おもしろいなあとか、なんでかなあと興味を持ちながら、そのまま受け入れているのでしょう。

Q10:レッツは、どんな小学1年生になっていると思いますか?

A:新しい環境なので、毎日が発見で、おもしろくて仕方がないのでは? とはいえ、集団生活の時間が増えますから、それとどう折り合いをつけるかがマイペースなレッツの課題になるでしょうね。とにかく5歳の今は、色んなことに興味を持って行動し、そして考えるレッツ。次巻では、生まれることについて、レッツなりに、あーでもない、こーでもないと考えます。

ヨシタケシンスケ 初の大規模展覧会開催!

「レッツ」シリーズのイラストを担当する、ヨシタケシンスケさん初の大規模個展が開催されます。期間は2022年4月9日(土)~7月3日(日)まで。会場は東京・世田谷文学館です。詳しくは『ヨシタケシンスケ展かもしれない』公式サイトをご覧ください。

絵本作家・ヨシタケシンスケさんの原点! レッツシリーズ・好評既刊

ひこ たなか

ひこ・田中

Hiko Takanaka
作家

1953年、大阪府生まれ。同志社大学文学部卒業。1990年、『お引越し』で第1回椋鳩十児童文学賞を受賞。同作は相米慎二監督により映画化された。1997年、『ごめん』で第44回産経児童出版文化賞JR賞を受賞。同作は冨樫森監督により映画化された。2017年、「なりたて中学生」シリーズ(講談社)で第57回日本児童文学者協会賞を受賞。ほかの著書に、『サンタちゃん』『ぼくは本を読んでいる。』(ともに講談社)、「モールランド・ストーリー」シリーズ(福音館書店)、『大人のための児童文学講座』(徳間書店)、『ふしぎなふしぎな子どもの物語 なぜ成長を描かなくなったのか?』(光文社新書)など。『児童文学書評』主宰

1953年、大阪府生まれ。同志社大学文学部卒業。1990年、『お引越し』で第1回椋鳩十児童文学賞を受賞。同作は相米慎二監督により映画化された。1997年、『ごめん』で第44回産経児童出版文化賞JR賞を受賞。同作は冨樫森監督により映画化された。2017年、「なりたて中学生」シリーズ(講談社)で第57回日本児童文学者協会賞を受賞。ほかの著書に、『サンタちゃん』『ぼくは本を読んでいる。』(ともに講談社)、「モールランド・ストーリー」シリーズ(福音館書店)、『大人のための児童文学講座』(徳間書店)、『ふしぎなふしぎな子どもの物語 なぜ成長を描かなくなったのか?』(光文社新書)など。『児童文学書評』主宰

よしたけ しんすけ

ヨシタケ シンスケ

Yoshitake Shinsuke
絵本作家・イラストレーター

1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。『もう ぬげない』(ブロンズ新社)、『おしっこちょっぴりもれたろう』(PHP研究所)で第26回、第29回けんぶち絵本の里大賞を受賞。ほかの著書に、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(ともに講談社)、『ころべばいいのに』『ねぐせのしくみ』(ともにブロンズ新社)、『りゆうがあります』『あきらがあけてあげるから』(ともにPHP研究所)などがある。2児の父。

1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。『もう ぬげない』(ブロンズ新社)、『おしっこちょっぴりもれたろう』(PHP研究所)で第26回、第29回けんぶち絵本の里大賞を受賞。ほかの著書に、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(ともに講談社)、『ころべばいいのに』『ねぐせのしくみ』(ともにブロンズ新社)、『りゆうがあります』『あきらがあけてあげるから』(ともにPHP研究所)などがある。2児の父。

児童図書編集チーム

講談社 児童図書編集チームです。 子ども向けの絵本、童話から書籍まで、幅広い年齢層、多岐にわたる内容で、「おもしろくてタメになる」書籍を刊行中! Twitter :@Kodansha_jidou YA! EntertainmentのTwitter :@KODANSHA_YA_PR

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