2021.02.01

「1歳3ヵ月です。ものを投げたり、叩いたりします」子育て相談 モンテッソーリで考えよう!

第6回

著者:田中 昌子

子育て中は、日々、悩みや困りごとがありますね。そこで、「モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所」所長で、たくさんのお母さま、お父さまの相談にのってこられた田中昌子先生にお話をお伺いしました。ちょっとした工夫で、子どもたちに大きな変化が起こるモンテッソーリの考え方は、目からうろこが落ちることがいっぱいです。子育て中の人、必読です!

※この記事は、講談社絵本通信掲載の企画を再構成したものです。

1歳3ヵ月の男の子です。レストランなどで、食器を投げたり、近くにあるものを乱暴に扱ったりするときの声かけに困っています。

家にいるときなら、壊れないものを与えて、投げたり叩いたりさせることもできますが、レストランでは発散できる場所もなく、早くその場を離れることしかできません。
1歳になったばかりで、物を投げたり触ったりしたいのかもしれません。投げたりしないよう言葉で伝えても効果はあるのでしょうか。それとも親が何度も動きで手本を見せる方法が良いのでしょうか? 1歳になったばかりでも通じますか?

公共の場所での対応は、多くの方がお困りです。親の躾が問われているように感じてしまい、少子化の今、冷たい視線も気になりますね。多くのお母様方が子どもにスマートフォンは良くないと思いながら、大人しくさせるためについつい使ってしまっている現状も、アンケート調査で報告されていますから、その場でどうすべきかをすぐに知りたいというお気持ちはよくわかります。

質問者さんは、「声かけに困っています」「言葉で伝えても効果はあるのでしょうか」とおたずねになっています。相手がまだ言葉を話さない1歳児ということもあって、言葉で子どもに伝えることが正しいのかどうか、ご自身でも疑問に思っているのでしょう。

当連載の第4回で、モンテッソーリ教育では言葉ではなく「やってみせる」ことで子どもにやり方を伝えると記しましたが、それをご理解いただいている上でのご質問と拝察します。

ただ、確認しておきますが、まだ話せない1歳児は言葉がわからないのではありません。また、話しかけることがすべて無駄というわけでもありません。それどころか乳幼児期は言語の敏感期といって、言葉に対してとても敏感な感受性を発揮する大切な時期です。胎児のときから、子どもは環境にある言葉をたくさん聞いて、それを吸収するからこそ、話せるようになるのです。

ですから、歳からのモンテッソーリ教育では、赤ちゃんに対しても「オムツを替えましょう」「お風呂に入りましょう」と、美しい言葉でたくさん話しかけることを奨励しています。まだ話せない1歳児に対しても、「これはリンゴ。これはバナナ」と明確に名称を伝えた上で、「じゃあリンゴを取ってください」と言えば、ちゃんとリンゴを取ってくれるようになります。

子どもが集中できる手作業を選ばせてあげる

今回のご質問はレストランでのことですから、たとえ話せない1歳児であっても、出かける前に「今日はこれからレストランに行きますよ。レストランは、みんなで座ってご飯を食べるところです」とまずきちんと伝えることが大切です。

連載第2回でお伝えした秩序の敏感期でもありますから、いつもと違うことが突然起こるだけでも、子どもは落ち着かなくなります。事前にしっかりと話しをすることで安心しますし、それが子どもを尊重するというモンテッソーリの対応です。大人だって何も予定を伝えられず、いきなり見知らぬ場所に連れていかれたら、困惑しますし、心地よいとはいえませんね。

でもそれなら、食器を投げたり、近くにあるものを乱暴に扱ったりしたときも、「投げないで!」「乱暴にしないで!」と言えば、伝わってやめてくれるのではないかと思われることでしょう。そこが今回のポイントになりますが、これもご自身で回答していらっしゃいます。「1歳になったばかりで物を投げたり触ったりしたいのかもしれません」と。

連載第4回で「子どもは、大人に迷惑をかけたいわけではなく、その動きに興味があり、その動きがしたいだけ」と記しました。1歳児の手を動かしたい、触ってみたい、という欲求はとても強く、それはいわば自然からもらった宿題とも言うべき生命衝動に基づくものです。運動の敏感期であり、さまざまな動きを獲得しようとしているのです。

その行為で得るものは、動きの獲得だけに留まりません。モンテッソーリは、運動は人格形成の土台を作るものであり、幼児のそうした行為は、自分自身を作り上げるという偉大な仕事であることを、繰り返し強調しています。

ですから、子どもは、そのような崇高な仕事を、簡単にやめることはできませんし、大人はそれを妨げないようにする必要があります。その場でなんとか大人しくさせようとすることを考えるのではなく、その仕事を遂行できるような方法を考えるのが、モンテッソーリ教育なのです。

おたずねの事例にあてはめると、出かける前にレストランに行くことを伝えたあと、迷惑にならずにできる手作業を「レストランで待っているとき、どれがしたい?」と選ばせてあげるといいでしょう。大きな音が出たり、細かくて無くしそうなものや落としてばらまく心配があるもの、重かったり大きかったりするものは、大人がイライラしてしまうので避けます。

娘たちが1~2歳の頃、私がよく持って出かけたのは紐通しでした。穴が開いている台紙と紐だけで、かなり長い時間集中していました。パターンもいろいろありますので、子どもが好きなものを選べます。

木製の紐通し(ランダム)最初は引っ張るだけでも

紐通し だんだんと規則的に「縫う」準備にもなる

他にはフェルトでできたマジックテープやボタン、スナップのとめはずし、もう少し大きくなれば、釘を打ってあるボードに輪ゴムで形を作るものもおすすめです。時間が長くなるようでしたら、お気に入りの絵本なども持参するといいでしょう。読まなくてもめくるという行為が好きな子どももたくさんいます。

フェルトつなぎ(マジックテープ)外へ行くなら箱に入れて持ち歩くと便利

マジックテープもはがすところから はずした物を入れる場所を明確に(ふたを利用)

スナップも同じ つなげたあとはくるくる巻くお仕事にもなる

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