2021.04.09

料理家・栗原心平が語る「お手伝い」と子どもの成長 最後まで手伝う醍醐味編

料理家・栗原心平インタビュー 第2回

寄稿家:栗原心平

料理家・栗原心平さんに聞く、子どもの料理「お手伝い」の仕方。第1回では「卵割り」や「納豆混ぜ」など、小さなお子さんでも簡単にできて、満足が得られるお手伝いについて話していただきました。第2回は、集中力がついてきた子供たちに「最初から最後まで手伝ってもらう醍醐味」について。

料理家・栗原心平さん。大きな包丁……と思いきや、よく見ると携帯ケース! お茶目なSNSでの投稿も人気です。
写真提供 栗原心平

最初から最後まで手伝うことは大きな満足感に

子どもが興味を持つお手伝いは、必ずしも子どもが「やれること」とは限りません。お父さんやお母さんがかっこよく包丁で切ったり、フライパンや鍋を使ったりする姿を見て、やってみたいと言い出すかもしれませんね。子ども自身が好きな料理を手伝ってもらうことが、興味を深め、満足感を得るためにも一番いいとは思うのですが、多くの子どもの好きな料理は、実はそんなに簡単ではありません。例えば、ミートソースには野菜のみじん切りがつきものです。ハンバーグもそうですよね。パスタやオムライスも、フライパン使いが難しい。
でもね、ミートソースを作るときに「手伝いたい」と言われたら、「この料理はまだ難しい」と伝えてもいいと思うんです。みじん切りの難しさを話してもいい。その後に、こういう風に言うんです。
「今日はごめんね。でも明日はポトフを作るから手伝ってくれる?」、と。

ポトフだったら、じゃがいもを大きく4つに切るくらい。それぐらいならお父さん、お母さんが見守るなかでできる子もいると思います。ニンジンも玉ねぎも半分に切るだけでもいいし、なんなら丸ごとでもいい。鍋に入れたらコトコト煮るだけ。完成までほぼひとりでできてしまいます。
ポトフだけでなく、すき焼きも最後までひとりでできますよ。下ごしらえはしておいて、「肉を入れる」、「野菜を入れる」、「割り下を入れる」、「卵を割る」の工程を任せてみてあげてください。料理は最初から最後まで作ることが大きな醍醐味なのですから。それは大人も一緒ですよね。

写真:baking/イメージマート

ある程度の年齢になって集中力も持つようになってくると、「最初から最後まで」やることが大きな満足感につながってくると思います。すでに食に興味のあるお子さんは、なおさら。逆に食に興味のないお子さんなら、キレイに仕上げる最後の段階を手伝うことで大きな満足を得るかもしれません。どこまで望むかは子どもによりますが、「最初から最後」まで手伝いたいと言うなら、それも子どもの成長の証。せっかくなので、そんな機会を作ってあげてもいいかもしれません。

最後まで手伝ってもらうなら、時間に追われてやらないこと

とはいえ、実際には、最初から最後まで手伝ってもらうのは、親にとってもかなり労力のいること。ここはひとつ、気持ちを切り替えてやってみてはいかがでしょう。少し大げさに言えば、「ディズニーランドに連れて行く」ぐらいの心構えで! 「今日は一日かけてロールキャベツを作るよ。夜はみんなで食べようね」と、家族全員で大きなイベントとしてとらえましょう。

お手伝いしたいという気持ちは、とてもいいことなのに、それを親がイライラしてしまうのが問題なら、これはもう、イライラしない環境の中でやるしかないわけです。「お手伝い」は、時間に追われてやるものではない、ということがなによりも大事です。

我が家は8歳の息子が、この間初めてハンバーグを最初から最後まで作りました。自分の好きなものを、自分の好きな味に作れたという実感は、何にも変えがたかったに違いありません。今度は、餃子に挑戦してもらおうかと思っています。調味料を並べて、あとは自由にやってみてって。失敗しても食べられる料理は、ひとりで最後までやらせるお手伝いには最適です。餃子はグチャッとしてしまっても美味しいですしね。出来上がりの形にはこだわってはいけません。

料理は防衛本能が働き、慎重になれる

いつから包丁を使わせ始めるか、火を使わせてみるかは、子どもひとりひとりの成長や性格が違うのでなんとも言えませんが、ただひとつ言えるのは、防衛本能みたいなものが自分で働くようになってからがいいと思います。慎重になれるようになってから、という感じでしょうか。「ここに指を置いたら危ない」とか、そういうことが自分で分かる、あるいはそれを言った時にきちんと伝わるようになってきたらがはじめ時かもしれません。

ちなみにですが、僕は子ども用の包丁は、セラミックの包丁より、きちんと切れる大人用のペティナイフをすすめています。セラミックの包丁は、手に触れてもちょっとでは切れないようになっていますが、その分、かなり力を入れないと野菜などが切れない。滑ったときに、逆に大惨事になることがあります。くれぐれも気を付けてください。

取材・文 浅妻千映子

寄稿家紹介

栗原心平 くりはらしんぺい

料理家。 幼い頃から得意だった料理の腕を活かし、料理家としてテレビや雑誌などを中心に活躍。仕事で訪れる全国各地のおいしい料理やお酒をヒントに、ごはんのおかずやおつまみにもなるレシピを提案している。料理家・栗原はるみの長男。
2012年8月より料理番組『男子ごはん』(テレビ東京系列)レギュラー出演中。2020年5月より、YouTubeチャンネル『栗原心平ごちそうさまチャンネル』を開設。
2021年夏、小・中学生がアーカイブ動画視聴型で栗原心平から料理を学べる「ごちそうさまクッキングスクール」を開講予定。

【主な著書】
『栗原心平のとっておき「パパごはん」』講談社/『栗原心平のごちそうキャンプ』小学館/『おいしい酒肴(おつまみ)は白飯にも合う。』平凡社/『栗原心平のたまごはん』、『栗原心平のこべんとう』山と渓谷社/『酒と料理と人情と。青森編』主婦と生活社/『男子ごはんの本』(KADOKAWA)

instagram @shimpei_kurihara
公式YouTubeチャンネル『ごちそうさまチャンネル』