嫌いになる原因は子育てをがんばりすぎる自分にある?

3つ目は、41歳女性からの【4歳の娘が可愛くありません。怒鳴ったり、手をあげたりする前にお知恵を貸して下さい】という相談。夜はカレーがいいと言われて作ったら「もう食べれない」と言うなど、「自分勝手でわがまま」な反応が多くて「爆発しそう」だとか。人生相談の回答が毎回ネットで大絶賛されている作家・演出家の鴻上尚史さんは、「子育てをがんばらないこと」を勧める。

〈カレーと言われて一生懸命作るから、「もう食べられない」と言われてムカつくのです。(中略)市販のレトルトカレーでごまかしましょう。レトルトカレーを拒否されても、そんなに腹は立たないでしょう。一生懸命、よかれと思ってやったことを否定されるから、可愛く思えなくなるのです。「私はあなたにどうしてあげたらいいの?」と真剣にがんばってしまうから、理屈が通じない時にキレそうになるのです。(中略)自分の楽しみも追求しながら、がんばりすぎないで、つまりは、うまく家事や子育てを手抜きしながら、娘さんと接して下さい。そのほうがきっとうまくいくと思います〉
(初出:朝日新聞出版『一冊の本』と同社のニュースサイト「AERA dot.」で連載中の『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』。引用:『鴻上尚史のほがらか人生相談』2019年、朝日新聞出版)

「子育ては、『子供を守り、子供の世話をやくこと』ではありません。子育ては、『子供を健康的に自立させること』だと僕は思っています」とも。どうやら鴻上さんは、相談者が我が子に入れ込み過ぎている気配を感じ取ったようじゃ。そもそも子どもには話も理屈も通じない。「こっちがこんなにがんばってるのに、なぜわかってくれないの!」と腹を立てたり相手を嫌ったりするのは、一種の言いがかりではないだろうか。

子育ては理不尽の連続である。子どもは自分の思い通りにはならない。同時に自分の気持ちも自分の思い通りにはならない。我が子に限らず、誰かを「嫌い」という感情が際限なくふくらんでしまう場合、その原因は相手ではなくおもに自分にある。何が自分をそうさせているのか、よく考えてそこに手を付けないと事態は変わらない。一生懸命に理由を並べて「嫌い」を正当化しようとしても、ますます辛くなるだけじゃ。

周りに助けを求めつつ ダメな“自分も我が子もOK”としよう

<石原ジイジの結論>

「ウチの子、最高!」「ウチの子、大好き!」「子どもがかわいくて仕方がない!」――。「わが子が嫌い」と思ってしまうママたちも(今回は出てこなかったがパパたちも)、できることならこう叫びたいじゃろう。心からこう思えることは、とても幸せである。

しかし、どこかで歯車が狂ってしまったママたち。「あってはならないこと」「思ってはいけないこと」だけに自分を激しく責めてしまう。ひとつ間違えると、「嫌い」を正当化するために、わが子の欠点を探して「だから嫌っても仕方ないんだ」と自分に言い聞かせることに精を出しかねない。大人同士の場合でもよくあるが、ますます悪循環じゃ。

人生相談の森の中には、同じ悩みがたくさんあった。つまり、同じように悩んでいるママがたくさんいる。「そんなことでは母親失格です!」と責める回答は、ひとつもなかった。もちろん「そういう子なら、嫌いと思ってしまうのは仕方ない」と言っている回答も、ひとつもない。たくさんの回答の意図をかいつまむと、相談者が苦しい状況から抜け出すために、つまりは次のふたつのアドバイスを贈っている。

その1「ひとりで子育てするのではなく、夫や周囲にもっと助けを求めよう」

その2「理想や完璧を目指す必要はない。少しぐらいダメな親でも子は育つ」

「自分を追い詰めているものは何か」を考えてみるのは、辛い状況から抜け出す上で極めて有効なセオリーである。物理的なたいへんさを少しでも取り除くことや、息抜きの大切さを説く回答も多い。「パパに相談できない(相談する勇気が出ない、相談する関係性ができていない)」という状況にあるとしたら、まずはそこに手を付けるのが先決である。子どもを嫌って自分をごまかしている場合ではない。

親だって人間だし、子どもだって別の人間である。性格や考え方が合わないこともあって当然じゃ。それはそれで何の問題もないが、親がイメージする「理想の子ども」や「完璧な子育て」にこだわり過ぎると、イライラや怒りが募ってしまう。周囲の目を気にしたり勝手に対抗意識を燃やしたりして、どんどん追い詰められるケースもありそうじゃ。

たまにわが子に腹が立つことも含めて、そんな自分を「ま、しょうがないか」と許してあげよう。わが子のありのまま受け入れ、自分のありのままを受け入れることができる親は、たとえ至らなさや欠点だらけでも、わが子にとって最高の親になれるはずである。

【石原ジイジ日記】
夏の公園には、いろんな虫がいます。F菜には虫が苦手な人にはなってほしくありません。「ほら、アリさんが遊びに来たよ」と友達扱いすることで、親近感を持たせようと画策。やがてF菜の腕に蚊がとまり、あわてて手で追っ払いました。ん? もしかして私は矛盾する行動をしてしまったかも……。

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いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト&人生相談本コレクター。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多く...

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