大谷翔平選手の育てられ方を見て感じたこと
どういうことかと言いますと、大谷翔平選手は、もともとズバ抜けた能力をお持ちの方ですが、高校生時代にもまだ背が伸び続けていたこともあって、故障が多かったと聞きました。日本の高校野球というのは、その時点で自分を消費してしまいがちなシステムになっています。多少肘が壊れても今全力を尽くす、みたいな。でも大谷選手の指導者は、大谷選手にそれをさせないよう徹底したことで知られています。あらかじめ「俺は翔平を特別扱いする」と宣言し、「ケガを治すためにも帰って寝なさい」と命じ、目先の結果にこだわらなかった。私は、そういう育て方もいいのかなと思ったんです。
私自身は、そのときそのときの結果を最大限に出すやり方を取ってきたわけです。中学では1番、高校ではまわりに負けない、大学では全優を取る、といった……。それはそれで良いのかもしれないですけど、子ども時代というのは本来、消費するより投資する時期だとも感じていて。親はそのとき最大限の結果を出すためにお尻を引っぱたくというより、その子のポテンシャルがまだ開き切っていないのだとしたら、それをなるべくすり減らさないようにしてあげることも大事なんじゃないかと。そうすると、現時点の“今”の勝負には負けるかもしれません。でも将来を考えたら……というような教育もありなのかな、と思ったりしている次第です。
迷走した私がたどり着いたもの
この、私の親に対する強い思いというのは少し複雑なものがあって。そこには1歳下の妹の存在が大きく影響しています。私は1歳半までは全ての親の愛情を独占していたのですが、妹が生まれて、1歳半にしてそれを半分……、いえ、体感では半分以上失いました。これは私にとってものすごく大きな挫折になっていて。ある種、人は愛されるには努力が必要なんだ、と刷り込まれたというか。だから勉強を頑張る、というところにつながったんだろうとも思うのですが、とにかく人は何もなくて自然に愛されるものだ、とは思えなくなったんですよね。
私は今、まずは「父親とは何か」を研究し、続いて「母とは何か」を、研究しているところです。正直、私はこれだけ勉強を頑張ってきて、結局官僚の仕事も弁護士の仕事も辞めてしまった。何でこんなことになったんだろうとは思いますけど、そうやって法律を勉強したり弁護士資格を取得したり、引き出しをいっぱい作っておいたことは、こうして家族を研究するうえでものすごく役に立っています。迷走したようではあったけど、人生に無駄なことは何一つないんだな、と、自分の中ですごく納得してもいるんです。
山口真由
1983年生まれ。北海道出身。2006年、東京大学法学部卒業後、財務省に入省。主に国際課税を含む租税政策に従事する。その後、日本での弁護士経験を経て、ハーバード・ロースクールを修了。ニューヨーク州弁護士資格を取得する。’20年、東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士課程修了。’21年より信州大学特任教授。著書に『世界一やさしいフェミニズム入門 早わかり200年史』、『「ふつうの家族」にさようなら』などがある。
山本 奈緒子
1972年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。 『ViVi』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、 インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、 主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。
1972年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。 『ViVi』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、 インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、 主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。
げんき編集部
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki
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