『おっきなちっちゃな物語』 NHK「おかあさんといっしょ」の人気曲が絵本になったワケを作詞家に聞いた

NHK「おかあさんといっしょ」の人気曲から絵本も誕生! 作詞家もりちよこさんにインタビュー【後編】

佐藤 啓子

『ドコノコノキノコ』や『ミライクルクル』『そらそらそうめん』をはじめ、楽しい歌詞を次々と生み出し続けるもりさんはどんなお子さんだったのでしょう?

NHK「おかあさんといっしょ」や「いないいないばあっ!」で、作詞家として活躍すること今年で25年のもりちよこさんにインタビュー。作詞家になったきっかけや、楽曲にまつわる裏話、そして昨年、絵本にもなった人気曲『おっきなちっちゃな物語』にこめられた想いと制作秘話、お兄さんやお姉さんたちとのエピソードからお母さんたちへのエールなど、楽しいお話を前後編でたっぷりお届けします。
作詞家 もりちよこさんとスィラちゃん
もりちよこ
大阪生まれの神戸出身。作詞家・コピーライター。

1998年、NHK「おかあさんといっしょ」の7、8月の歌『ひまわりとわたあめ』で作詞家デビュー。『たこやきなんぼマンボ』『パンパパ・パン』『ミライクルクル』など、数多くの人気作を手がける。演歌からJ‐POP、K‐POPとそのフィールドは広く、現在作詞を手がけたテレビ番組のエンディング曲『イチカバチカ』(Eテレ「はなかっぱ」)、『イッテラシャキット!!!』(テレビ東京系「おはスタ」)も放映中。

おっきなちっちゃな物語にこめられた、普遍的で大切な思い。

──おっきなちっちゃな物語が生まれたきっかけを教えてください。

「おかあさんといっしょ」では、「こんな内容で書いてください」とディレクターさんからオーダーがくることが多いのですが、この歌は私の自主提案だったんです。「こんな歌詞どうですか?」と。

前回、子どものころ書いた絵本のお話をさせていただきましたが、その主人公たちの名前が「大きな」と「小さな」で、いつかこのふたりの歌を書きたいとずっと思い続けていたんです。それで、大きなと小さなの歌を書いてNHKさんにご提案したところ、採用されて『おっきなちっちゃな物語』という曲が生まれました。
──もりさんがこの歌や物語にこめた思いをお聞かせください。

歌が流れた当時、ネットで「エンパシー(共感)の時代にぴったりの歌だね」と書いてくださっているのをみかけました。でも、実は時代背景はあまり意識していません。「相手の立場にたって考える」というのは、時代に関係なく普遍的なことだと思うんです。

私は阪神大震災で姪を亡くしているんですが、みなさん義兄と姉を「頑張って」と励ましてくれたんです。でも、姉にはそれが逆に重荷というか辛かった。「頑張っての言葉よりただ寄り添ってくれるだけでいいこともあるんだよ」という姉の言葉に、相手の立場に立って考えることの大切さを改めて実感し、そんな思いが伝えられる作品を書きたい、それもお説教臭いものではなく「仲よくしたらいいじゃない」「ちょっと相手のことを思いやってあげたらいいんじゃない?」と、楽しい物語にして伝えられたら……との思いがありました。
──この歌の聴きどころはどこでしょう。

この歌の作曲をしてくださったのが、第6代歌のお兄さんだった林アキラさんなんです。ゆういちろうお兄さんとまやお姉さんにとって先輩ということもあり、レッスンもとても楽しくつけてくださいました。おふたりには「絵本を読むように歌ってください」とだけお伝えしたら、ニュアンスいっぱいつけて歌ってくださって、中でも、「突然夕立降ってきて~♪」の部分は、お兄さんとお姉さんの本領発揮ですよね! オペラ歌手のように歌いあげてくれて、聴きどころになっています。
──それから絵本が誕生するわけですが、ご苦労された点などございますか?

素敵な歌と映像が出来上がると、いよいよ絵本にしたくなりました。そこで自分でミニミニ見本誌を作って企画書も書き、講談社さんにご提案させていただいたんです。すると、出版してくださることに!

絵本を作るうえでの苦労は全然なくて(笑)。ただただ楽しかったです。
イラストの西内としおさんの絵がかわいらしく、またデザイナーさんが楽しい仕掛けを作ってくださったんです。ページを開くとイラストに曲と連動した音符が描かれていて、そこを抑揚をつけて「歌うように」読んでいただけるよう、デザインされているんです。

パパママ、じいじばあばが表情をつけながら、お子さんと歌いながら読んで欲しいとの思いを込めて作り上げた絵本です。​
──兄弟げんかのときにこの絵本を親子で一緒に読んだら、自然とケンカが収まった、というファンの方からのお声もあるとうかがいました。

うれしいですね! ガミガミ怒らなくても、自然と相手のことを考えてケンカが収まるなんて。そんなふうに読んでいただけるのは、作家冥利につきます。これからも、楽しみながらちょっと相手のことを考えてみる、そんなふうに読み継いでいっていただけたらうれしいですね。
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