古生代の化石が続々! 日本最古のアンモナイトが発見された岩手県南部で見つけた化石とは?

【ちょっとマニアな古生物のふしぎ】古生物学者・相場大佑先生が見つけた古生物のふしぎ

古生物学者:相場 大佑

岩手県南部の古生代化石探訪(前編)

2024年5月某日、岩手県の大船渡市と一関市にある古生代の化石産地に行ってきたので、その野外調査の様子を「前編」と「後編」に分けてお伝えしたいと思います!
大船渡石炭紀化石産地
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岩手県南部地域には古生代の地層が広がっていて、さまざまな生きものの化石が見つかっています。

古生代は、約5億4100万から約2億5190万年前に当たる時代、恐竜が生きていた中生代の前の時代です。古生代は6つの時代に分けられ、有名な古生物には、カンブリア紀の節足動物アノマロカリス、デボン紀の魚類ダンクルオステウス、ペルム紀の単弓類ディメトロドンなどがいます。なかなか個性豊かな顔が揃っています。

古生代の地層は、日本国内では岩手県の他には山口県や岐阜県などにもありますが、中生代・新生代と比べると分布している地域が少なく、化石もやや希少な印象です。僕も普段は中生代のアンモナイトを研究しているので、古生代の化石を調べに行くのは今回がはじめてでした。

一関市の古生代デボン紀

まず初めに行ったのは、一関市にある古生代デボン紀の地層です。

デボン紀は古生代の真ん中あたりの時代で約4億1600万年前から約3億5920万年前までの時期を指します。デボン紀には、様々な魚類が大進化し、その一部は陸上進出し、イクチオステガなどの両生類が出現しました。アンモナイトがはじめて登場した時代でもあります。

今回行った一関市の地層は、実は日本最古のアンモナイト「クリメニア類」が発見されていて、アンモナイト研究者としては、ぜひ一度は行ってみたいと前から思っていた化石産地のひとつでした。せっかく来たのですから、世界最古のアンモナイトを掘り出したい!そう思いながら、化石産地に行く前には、近くにある「石と賢治のミュージアム」で展示されているクリメニア類化石の形や保存状態をしっかりと目に焼き付けてきました。
一関市 石と賢治のミュージアムで撮影した最古のアンモナイト
化石の見つかる露頭は、博物館から少し車を走らせたところにある運送業者さんの事務所のすぐ裏手の斜面にあり、許可をもらって入らせてもらいました。

砂岩が重なり、縦向きに傾いた地層を調べてみると、生きものの化石らしきものが早速見つかりました。これは腕足類のようです。腕足類は2枚の貝殻を持っていますが、二枚貝類とはまったく別の生きものです。古生代には大変栄えていましたが、中生代以降は二枚貝類の影に隠れるようになり、現在まで細々と生き続けている生物です。
一関市の古生代デボン紀の地層
腕足類の化石
この後には、棘皮動物(ヒトデやウニのなかま)のウミユリや植物化石などが見つかりました。
ウミユリの化石(左)と植物の化石(右)
左:ウミユリの円形部分は茎の断面を見ている状態
右:横向きの棒状に見えるのが植物化石
〉〉後半「人生で初めて採集した化石」に続く!

画像提供/相場大佑

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あいば だいすけ

相場 大佑

Daisuke Aiba
古生物学者

深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現職。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに2種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。

深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現職。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに2種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。