あの日、あの時、胸躍らせて目撃したのは何だったのか? 今回取り上げるのは「8月10日」(2002年)。
打ち込んでいた陸上の地区大会に敗退し、目標を失っていた中学3年生の暁(あきら)少年。彼はある日、扉の絵が描かれたカードの向こうの世界からやってくるという、怪獣・グラルファンを呼び寄せようとするトマノ老人と出会う。
トマノと出会った暁少年
トマノという老人は、カードに描かれた扉の向こうの世界にいるグラルファンに、自分の思い出の曲を聴かせているのだという。老人のもとからすぐに去ろうとする暁だったが、レコードプレーヤーを倒してしまい、元どおりに直しているうちにトマノと打ち解ける。そして、いつしか自分のことをトマノに話していた。地区大会で最高のコンディションだった暁だったが、決勝では僅差で負けてしまい、全国大会に出場することが目標だった彼の夏はあっさり終わってしまったのだ。
グラルファンは音楽が好きで、この曲が気に入ればカードの扉からやってくるのだという。また、グラルファンは寒いところに住んでいるらしく、実際に現れると真夏のこの街は冬になるらしい。グラルファンとは、人の心の奥にある大切な思い出を、目の前に蘇らせる力を持つ。そして、本当に思い出の風景の中にいくことができるというのだ。トマノの話を本気にしていなかった暁。しかし3日後、如月町だけが真冬のように寒くなり、雪が降りはじめる。
異常気象の調査にやってきたチームEYESのモリモト アヤノ隊員に声をかけられた暁は、自分が何かを知っているのではないかと疑うアヤノをごまかしてその場を去ると、トマノと再会。すると、彼が持っていたカードの扉の絵が、少し開いているのを見せられる。もうすぐ、グラルファンがやってくる。グラルファンがこちらの世界にいるほんの少しの間、こちらの世界の時間が停止するらしい。なぜ、そんなに思い出の世界にいきたいのかと暁が尋ねると、トマノは身の上話をはじめた。