「メフィラス先生っ、無重力はつらいよ!」 話題の本を試し読み!
ウルトラマン×基礎宇宙論=最良の科学入門書! 『ウルトラマンと学ぶ 宇宙と生命体』(高水裕一著)の1チャプターを連載形式でまるっと紹介!【2】
2022.06.09
宇宙では足も手になる
足の機能の一番大きい特徴は、「地面を蹴って進むこと」です。それが人間の手と足の大きな構造上の違いです。
ISSの船内には、いくつもの機材があるので、一応蹴るものがありますが、船外にでたらまさに地面のような蹴るものが存在しません。そのような宇宙環境では、もはや移動するために足を使うということはできません。
そういった意味で、宇宙では、「蹴って移動する」という足の機能が無意味になります。言い換えると、重力がなくなると、上と下という区別がなくなります。だから、足も手と変わらないようになってしまうのです。
すこし表現が難しかったかもしれません。もっとわかりやすい例があります。植物です。地上では、根っこが必ず植物の下に広がっていきます。
しかしこれを宇宙にもっていくと、根っこが四方八方に広がっていくのです。上下という区別がなくなり、植物にとっての足である根っこが、まるで手のようにあちこちへと伸びて広がっていくのです。
これはちょっと不気味に感じますが、むしろこれが宇宙での生物の真の姿なのかもしれません。
未来に生きる人類は、宇宙空間に適応していきながら進化していくと、ひょっとすると本当に足の機能が変わっていくかもしれないと妄想してしまいます。
足を使わず、どう進む?
あまり普段は考えたことがない「歩く」という行為ですが、説明しようとするとなかなか難しいものです。これを説明するには、「作用反作用の法則」という宇宙のルールが大事になります。
これは「押すとかならず同じ力で押し返される」という法則です。
あなたが壁を押すと、あまり感じないでしょうが、あなたも壁から同じ力で押し返されています。
地面の上を歩く場合もそうで、あなたが地面を蹴ると、同じ力で地面があなたの体を押し返します。これによってあなたの体は前へと進むのです。足は後ろに蹴っているのに前に進むことができるのは、この作用反作用の法則のためです。
「どうなるだろう?」
頭に血が上って、うまく考えることができないあなたは、マルゥルに頼ろうと、視線を彼に向けました。
「悪ぃ。今、それどころじゃねー!」
マルゥルは以前にもまして必死にもがいています。無重力空間は、マルゥルも苦手のようにみえますね。
作用反作用、この法則はなにも地上に限ったことではなく、宇宙空間でも成り立ちます。宇宙にはこのように様々なルールが存在しています。
その一つが、「運動量の保存」というものです。さきほどの作用反作用と深く関係しています。これが宇宙での移動を考える上で大事になります。
「運動量保存の法則? とにかく、俺サマは少しでも前に進みたい」
「僕も同じ気持ちです」とあなた。「どうすれば前に進めるのですか?」
「いい質問だ。今から説明しよう。まずは、こちらの映像を見てくれたまえ」
メフィラス星人が卓上のタッチパネルを操作すると、空間がスクリーンになって、なんと「ウルトラマンゼット」の戦いの記録映像が流れはじめました。
「ありゃ、バロッサ星人だ! あいつ、とびきりおバカで間抜けなんだぜ」
(つづく)
お楽しみに!
『ウルトラマンと学ぶ 宇宙と生命体』試し読み連載 を読む
▼著者 高水裕一先生の記事はこちら
テレビマガジン編集部
日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga Instagram:@tele_maga
日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga Instagram:@tele_maga