「メフィラス先生っ、無重力はつらいよ!」 話題の本を試し読み!

ウルトラマン×基礎宇宙論=最良の科学入門書! 『ウルトラマンと学ぶ 宇宙と生命体』(高水裕一著)の1チャプターを連載形式でまるっと紹介!【2】

テレビマガジン編集部

ウルトラマン×基礎宇宙論=最良の科学入門書『ウルトラマンと学ぶ 宇宙と生命体』(高水裕一著)の1チャプターを連載形式でまるっと紹介! 「宇宙ガチャ」なるマシン(筐体)から出てくるヒーローや宇宙人、ときには怪獣(?)が講師役! 本書に登場する講師は次の13体です。
ウルトラマン、メフィラス星人、ペガッサ星人、ペダン星人、ウーラー、ゴドラ星人、ガンQ、ダダ、アンチマター、ウルトラマンキング、ウルトラマントリガー、ソリチュラ、ウルトラセブン
生徒として講義に参加する「あなた」は、サポート役のメトロン星人マルゥルとともに、宇宙の仕組みやナゾに迫ります。
▲メトロン星人マルゥル ©円谷プロ
しかし、講師の中には規格外の輩もいて、授業はハチャメチャ! そして、サポート役のマルゥルは口が悪い!

今回はメフィラス先生のチャプター、第2回目を掲載します。

「あなた」は悪戦苦闘をしながらも、宇宙への知見を深めるために「無重力」を経験することに……。

メフィラス星人の無重力ルーム

「この部屋は、宇宙空間と同じ無重力で、空気がない状態になっているんだ。そこで、この酸素マスクをつけて、入ってくれたまえ」

そういって、酸素を呼吸することができるマスクを手渡されます。マスクといっても、花粉症用などの簡易なものではなく、気密性が高く機能性に優れたものです。

無重力という特徴も、宇宙ならではですが、もっとも地上と違うのは、空気がないということです。これを真空といいます。だから、マスクをせずには生きていけません。

さらに空気がないと、音が伝わりません。なので、マスク越しで大声をだしても、無音状態です。宇宙は本当に静かで真っ黒な無重力空間なのです。

また宇宙空間には、どうやら匂いがあることも知られています。もちろん誰も直接、それを嗅いだことはないですし、空気がないので、匂いがあるというとすこし語弊があります。

船外活動から帰った宇宙飛行士のスーツには、「ラズベリーのような匂いがする」という報告があるのです。この甘酸っぱい匂いの正体は、「ギ酸エチル」という化学物質で、宇宙空間に比較的多く漂っています。

とくに太陽からの強い放射線で、金属などが解ける場合にも発するものなので、宇宙空間に微量にあるものと、そういったものが混ざって、独特な宇宙の匂いを作っているのかもしれません。

あなたが渡されたマスクは特別で、お互い話して聞くことができる特殊加工になっています。そして、ほんのり甘いラズベリーの匂いが染みついています。

無事装着して、いざ無重力ルームに入ります。

そこはまるで、ISSの船内のよう。ふわふわと浮かんだ自分の体にあなたも驚いています。

イラスト/水谷謙太  ©円谷プロ 

無重力はつらいよ

「うわー、頭に血がのぼるぅー!」とあなた。

「顔がむくんでいく感じもするだろ!」とマルゥルが問いかけてきました。

たしかに、そんな感じもします。

「そうだろう」メフィラス星人は、うんうんと頷きました。「その症状は、無重力空間では当然のこと。慣れてもらうしかないな」と無重力に慣れっこのメフィラス星人はそっけなく答えます。

無重力環境が、人体に与える影響は、今も宇宙飛行士がさまざまな実験を行って調べています。

たとえば、全身の血液が、頭のほうに集まりやすくなります。逆立ちをしたときの苦しさを知っていますか。

あそこまでではないにしても、逆立ちしながら活動したり、睡眠をとったりしなければならないことを想像すると、宇宙という環境が過酷なことが少しは想像しやすいかもしれません。

もちろん、地上でこういった試練に耐えられるように、何度もトレーニングをしてから臨んでいる、命がけのミッションなのです。

無重力環境に長時間いると、足などの筋肉が大きく退化してしまいます。そのため、定期的に、宇宙飛行士は、船内で筋力を維持できるようにトレーニングをしています。

また味覚が変化するようで、地上にいたときよりも、濃い目の味つけの食事が多いと聞いたことがあります。

いろいろと身体は、これまで体験したことがない環境へ対応しようと必死でがんばっているようです。
「おい、メフィラス星人さんよ、無重力はもういいよ。俺サマ、ちょっと苦手なんだ。はやくここから出してくれ」

マルゥルは部屋から出ようと、必死で手足をもがきますが、すこしも前に進みません。

「もう少し体験学習を続けてもらうよ。さて、この無重力ルームで、どうやって移動するかわかるかね?」

普段は地面でどうやって移動するのかと聞かれたら、「歩く、走る」ということを答えるだろうと思います。

しかし無重力ルームでは身体が浮いてしまうので、床に足がつかないから、地面というものが存在しません。水泳のように宇宙空間をかいてみても、かいて進む水や空気がありません。

では一体どうやって移動すればいいのか。それを考えてみましょう。
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