
紫苑が独裁者になる資質と「2つのマグカップ」に隠された本音──あさのあつこが語る、紫苑とネズミの“いま”
『NO.6[ナンバーシックス]再会#2』の鋭い感想が続出!
2026.07.08
ライター:山口 真央
シリーズ累計230万部を超えるディストピア小説の傑作『NO.6』。その続編となる新シリーズ『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』の発売を記念して開催された、あさのあつこさんのトークショー&サイン会を完全レポート! 事前に寄せられたファンからの熱い感想と質問に対し、あさのさんがキャラクターへの深すぎる愛と執筆の舞台裏をユーモアたっぷりに語ります。
「ネズミの本名」や「作中に登場する名画の秘密」、そしてファンを悶絶させた「2つのマグカップ」に込められたネズミの心境とは? 著者自身が「彼らに転がされている」と明かす、ファン必読の超濃密インタビューをお届けします。
▼▼以下のインタビューは『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』のネタバレを含みます。ネタバレを避けたい方は、『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』をお読みになってからご覧ください。▼▼
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ネズミの「本当の名前」はいつか紫苑に伝えられるのか
──『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』最高でした! 紫苑とネズミは、いつもいろんな言葉やふるまいで「愛している」を語っているように思えます。小学生のときに追いかけていた2人の背中を今でも追いかけ続けられることが至福です。今の私は「NO.6」の発売日を楽しみに生きています。
toi8さんが描く『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』の美しい花畑のカバー絵、とっても印象的です。世界情勢や日本を取り巻く状況はあまり明るくはないですが……あさの先生にとって砂漠に一瞬だけ現れる花畑のように、「そのためならいくらでも待てる楽しみ」などはありますか。
あさの 私のようなものが紡ぐささやかな物語を、そのように受けとめて「待つ」と言ってくださって、すごく嬉しいです。私自身はあまり何かを待つことがなく、それよりはむしろ自分が何を求めているかを考えることが多い人間です。ちょっと紫苑っぽいですね。
いまの世界情勢や日本という国が大変な状況にあるときに、私は何がしたいのか。日本が変わるのを待つよりはひとりの物書きとして、『NO.6』という物語をどう書き続け、どう終わらせていまの世界と対峙させるか……。たぶん何かを「待てる」というのは、若さの特権かもしれません。私ぐらいの年になると先送りにせず、いまに対峙するべきだなと感じています。
──紫苑とネズミやイヌカシなど、登場人物たちの会話はいつまでも聞いていたくなるくらい、熱く刺激的です。それぞれの哲学を感じます。あさの先生はどのように登場人物たちと向き合っているのでしょうか。
あさの 書いていない14年間も含めてずっと紫苑たちと付き合ってきたので「紫苑ならきっとこうするだろうな」というふうに、彼らの行動がわかるときはあります。けれど会話だけではなく『NO.6』という作品すべてにおいて、登場人物をこう動かそうとか、こうしゃべらせようといった意図はありません。
書いているときはもちろん彼らと一体になって書くけれど、あとになって読み返すとツッコミどころが満載で、紫苑とネズミには「ふたりともええ加減にせえや」と思うこともあって(笑)。この人たちならこうなるという予想をことごとく外されてきたので、私の手のなかに彼らがいるはずもなく、どちらかというと転がされているのは私のほうな気さえしています。
──書店に掲載された『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』のポスターの2次元コードを読みとると、先行で読むことができるショートストーリー「彼方で待つものへ」。ネズミの幼いころを描いた貴重な物語だと感じました。ところで、ネズミには本名があるのでしょうか。先生はご存知ですか。
あさの ネズミの名前についてよく聞かれます。前のシリーズを書いていたとき、ちゃんと名前を考えていたんですよ。確かネズミも、紫苑が生きていたら教えてやるって話していたような。ネズミは噓つきですね(笑)。
本名はもちろん、あると思います。でもネズミ以外の名前は全然しっくりこなくって。紫苑は知りたがっていると思うんだけど、知ってどうするんだろうという気もするし……ちょっとわからないです。ネズミに「紫苑には名前を教えてあげてもいいんじゃない?」と、一応アドバイスはしておきますね。
──『NO.6[ナンバーシックス]再会#2』で文化を象徴するものとして、文学作品だけでなく、絵画が登場したのが印象的でした。なかでも、ミレーの「晩鐘」が選ばれていたことがとても気になっています。この作品を選ばれたきっかけがあれば、ぜひお聞きしたいです。
あさの 私自身は美術館に通って熱心に絵を見るだとか、絵画が好きだとか、そういった情緒のある人間ではありません。ただ「晩鐘」の、農夫とその妻が感謝の祈りを捧げている絵を見たときに、ああ、紫苑はきっとこの絵が好きなんだろうなって思ったんです。これは『NO.6[ナンバーシックス]再会#2』を書くよりもずっとまえ、前シリーズを書いているときから感じていたことでした。


































