お正月に欠かせない「しめ飾り」を知る
次にご紹介するのは、『しめかざり』(作:森須磨子)。ニッポンの“粋”なお正月を感じさせる、鮮やかでダイナミックな表紙が印象的です。
お正月、家の玄関に飾るしめ飾り。毎年何気なく飾っていて、そこにどんな意味が込められているのか、知らない方も多いのではないでしょうか。
こちらは、しめ飾りの起源から、全国にある多種多様なしめ飾りまで紹介されている「知識絵本」です。
鶴、亀、蛇、馬、柄杓、俵……。地域によって、こんなにも形が違うのかと驚かされます。しめ飾りは、松の内を過ぎると片付けられてしまいますから、自分の住んでいる地域のものにしか触れる機会がないのでしょうね。
おもしろいのは、作者の森須磨子さんが、しめ飾りの作り手まで取材していること。森須磨子さんは唯一の<しめかざり研究家>で、日本全国を飛び回り、しめ飾りの取材をされています。絵を描いているのも、森さんご自身です。
私の祖父母は農家だったので、しめ飾りは毎年、祖父が作っていました。私も見よう見まねで挑戦したことがあるのですが、素人ではとてもじゃないけれど、上手に作れません。でも、また作ってみたくなるのです。
『しめかざり』では、イラスト付きでていねいに作り方を紹介しています。材料を揃えるのがなかなか大変ですが、みなさまも次のお正月は、手作りのしめ飾りに挑戦してはいかがでしょうか?
絵本によって、文化の背景、そこに隠された人々の願いを知るというのは、すてきなことですよね。漢字が多いので、小さなお子さんがひとりで読むのは難しいですが、ぜひお父さん、お母さんと一緒に読んでいただきたいなと思います。
どのお雑煮を食べてみたい?
最後にご紹介するのは『十二支のお雑煮』(作:川端誠)です。
年が明けて、元旦の朝。ごちそうを食べたり、羽根つきや凧揚げをしたり、十二支の動物たちが思い思いにお正月を楽しみ、最後にお雑煮を食べる様子がコミカルに描かれています。
この絵本、実はすべて木版画で作られているんです。実際に読んでいただければわかりますが、おせち料理のひとつひとつ、屏風(びょうぶ)に描かれた一文字一文字まで、本当に細かい!
非常に日本的な、和の美しさを強調する画法です。丁寧な手仕事、匠の技にため息がもれ出ました。
作者の川端誠さんが見返し(表紙の裏)に書いている通り、お雑煮は地元の食材を使うことから、地域性がはっきり現れますよね。
いくら雑煮、かき雑煮、鴨雑煮、ぶり雑煮……。絵本に登場するお雑煮は、どれも実においしそうです。
お正月のものなので、普段旅行で訪れても食べる機会がなかなかありませんが、土地の魅力がたっぷり詰まった郷土食であることが改めて感じられます。
「うしはさっそく 初詣(はつモーで)です」
「うまはコマまわし(略) うまいもんです」
クスリと笑えるシーンを盛り込みながら、元旦の朝のはりつめた静けさ、特別な一日を余すことなくあらわした贅沢な一冊です。親子でぜひ、すみずみまで味わってくださいね。
楽しく、美しい絵本を見て、2022年も親子共々、元気にがんばってまいりましょう。新しい年が、みなさまにとって笑顔にあふれた1年となりますようにお祈りいたします。
取材・文/星野早百合
星野 早百合
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
東條 知美
絵本コーディネーター、講師、コラムニスト。1973年新潟県上越市生まれ。白百合女子大学児童文化学科卒業。在学中は桑原三郎氏(児童文学研究者)、角野栄子氏(児童文学作家)らに師事。卒業後、メディアファクトリー(現KADOKAWA)、国立国会図書館、幼児教育専門学校などの勤務を経て、絵本コーディネーターに。 絵本を題材に各地で講演、イベントを行うほか、執筆活動、保育士や図書館司書を対象とした研修などを手掛ける。コンセプトは「子どもに絵本を。大人にこそ絵本を。」 公式サイト https://www.tojotomomi.com/ ブログ「僕らの絵本」 https://ameblo.jp/bokurano-ehon Instagram @tomomitojo Twitter @TOMOMIT
絵本コーディネーター、講師、コラムニスト。1973年新潟県上越市生まれ。白百合女子大学児童文化学科卒業。在学中は桑原三郎氏(児童文学研究者)、角野栄子氏(児童文学作家)らに師事。卒業後、メディアファクトリー(現KADOKAWA)、国立国会図書館、幼児教育専門学校などの勤務を経て、絵本コーディネーターに。 絵本を題材に各地で講演、イベントを行うほか、執筆活動、保育士や図書館司書を対象とした研修などを手掛ける。コンセプトは「子どもに絵本を。大人にこそ絵本を。」 公式サイト https://www.tojotomomi.com/ ブログ「僕らの絵本」 https://ameblo.jp/bokurano-ehon Instagram @tomomitojo Twitter @TOMOMIT