まんがで楽しむイベントルポ!アカペラ名曲「うたうからだのふしぎ」初披露!

声が生まれるようすを描いた絵本から飛び出した、ゴスペラーズ・北山陽一さんの生歌と川原繁人教授のトークショーのようすをご報告

1ヵ月にわたり本との新しい出会いをご提案する「BOOK MEETS NEXT」のオープニングイベントとして大いに盛り上がりました。  写真/講談社児童図書編集チーム
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大人気『絵本 うたうからだのふしぎ』が絵本を飛び出して、リアルのイベントになった。

ポケモンやプリキュアのキャラクター名分析、日本語ラップの言語学的分析など、幅広い分野で柔軟な研究を行っている音声学・言語学者の川原繁人教授と、ミュージシャンの北山陽一(ゴスペラーズ)さんとの共著で、大きな注目を集めた1冊の絵本。

声はどうやって生まれるのか、身体の中で何が起こっているのかなど、知られざる声の秘密が分かると、声優の山寺宏一さんをはじめとする専門家たちからも高い評価を得ており、子どもから大人まで楽しめる本となっている。

初の生歌披露「うたうからだのふしぎ」

10月24日、BOOK MEETS NEXTのオープニング企画として、「絵本うたうからだのふしぎスペシャルイベント ハーモニー&トーク」が行われた。

ここで、北山陽一さんが作詞作曲をおこなった「うたうからだのふしぎ」が初めて披露された。

アカペラの美しくたのしい「うたうからだのふしぎ」が初披露されました。  写真/講談社児童図書編集チーム

『絵本 うたうからだのふしぎ』がより深く楽しめるようにと、絵本の内容に沿って作詞作曲された、「うたうからだのふしぎ」。6つの小曲で構成される組曲とも言える。

抽選の結果、当選されたお客様たちが、平日夜にもかかわらず会場の紀伊國屋ホールに続々来場。子どもからおとなまでたのしめる絵本とあって、小さなお子さんもわくわくした表情で舞台を見上げている。
一同が壇上に並ぶと、満席のホールが静まる。

小さな音合わせを終え、空気が変わる。「うれしいも」……。

北山陽一さん、Rabbit Cat、アカペラ研究所の総勢11名が、美しいハーモニーを重ねていく。会場で聞こえるのは、歌声のみ。生音の響きがどんどん膨らんでいき、人間の声の力に圧倒される。

11人の生歌に感動

共著のまんが家・牧村久実さんが、そのイベントのようすをレポートする。

アカペラの美しさに、涙が出ます。  まんが/牧村久実

曲の合間に、2人のトークが続く。川原繁人教授と北山陽一さんが、論理と実践両方から「音声学」を突き詰めていく様子がおもしろく語られ、会場は大いに盛り上がった。

6つの曲それぞれの解説は、北山さん本人がおこないます。  まんが/牧村久実
『絵本うたうからだのふしぎ』  作:川原繁人・北山陽一(ゴスペラーズ) まんが:牧村久実
身体に取り込まれた空気が声になるまでの冒険を、わかりやすく表現した絵本です。川原先生のくわしい解説もあって、子どもからおとなまでたのしめます。

「音声学」はみんな学んだほうがいい

曲の披露の合間に、話は共著となった川原繁人教授、北山陽一さんの出会いについて広がっていく。

慶應義塾大学の大学院で学んでいた北山さんが、三田に「変な先生」がいると噂に聞き、川原教授の授業(「言語学特殊(音声学)」)を受講したことで知り合った。北山さんは「授業を受けたときに、横隔膜の話が驚きでした。息をするときに肺を動かす筋肉の働きをきちんと学ぶと、合唱とかやっていると横隔膜をちゃんと使ってって言われるんですけど、呼吸に大切なのは横隔膜だけじゃない。授業で聞いて、あ、そっか、知らなかったと思ったんです」と語る。こうした気づきの連続で、音声学は歌手として正しく戻る場所を教えてくれるという。

歌手や声優、アナウンサーなど声を仕事としている人々、そして教える側の人に対しても、「迷いだすと『あ』の口の形がもうわからなくなってしまう。そこでこれが『あ』だと見せてもらえると、ほっとするんです。それでみんなに、この人の話は聞いたほうがいいって広めています。歌だけじゃなくて、人間がコミュニケーションを取る上で欠かせない学問だと思います」と語る。

一方の川原教授は「音声学ってマイナーな学問で、『おまえはその研究やってなんの役に立つんだ』って10年くらい言われ続けて……北山さんと出会って3年経ったら、その学問に関する歌ができて、11人がアカペラで紀伊國屋ホールで歌っているという……なんで、私はここにいるんだろうって思います」と応えた。

泣いている子どもも「横隔膜を使っている」という肯定感。  まんが/牧村久実

人間はすごいことをやっている

川原教授は、「人が話す、歌うというのがどのくらい奇跡なのか分かりますか?」と問いかける。

吸い込んだ空気が、肺から声帯を通り音となり、唇や舌などを使って口の形を変えて声になっていく。歌をうたう、ことばを話す。こうしたコミュニケーションも、じつは呼吸の副産物なのだと、川原教授はいう。「生きていくために必要な呼吸の過程で出てくる呼気を使って音を出すと、相手が気持ちを理解してくれるなんて、すごいことじゃないですか」。

北山さんも「人間はみんなすごいことをやっている。みんな、もっと自信を持ってほしい」という川原教授の言葉に共感し、この思いを多くの人に伝えたい。小さな子どもにも伝えることができるように、絵本の形がよいのではないか、と議論を重ねていった。

こうして、『絵本 うたうからだのふしぎ』は奇跡を伝える本として、生まれた。

取り込まれた空気が、体の中で声になるまでの冒険としてたのしく描かれています。(『絵本 うたうからだのふしぎ』)絵/牧村久実
川原教授によるくわしい解説は、図解もついて充実しています。(『絵本 うたうからだのふしぎ』)
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