つまらない文章が大変身! 斉藤洋が伝授する「続きが気になる」文章の書き方

『人生がちょっとよくなる文章術』 (2/2) 1ページ目に戻る

児童文学作家:斉藤 洋

イメージがわきやすいのはどっち?

このふたつの文章は、冒頭から〈男のスマホ画面をそっとのぞいてみ〉までは同じです。でも、そこまでは、まったく工夫がないかといえば、じつはそうではないのです。

それは最初の〈吉祥寺駅〉です。ここをもし、ひとつとなりの〈西荻窪駅〉にかえたらどうでしょう。

まず、わたしは吉祥寺駅にくらべ、西荻窪駅で乗ったり降りたりすることが少ないのです。だから、わたしにとって、吉祥寺駅のほうが西荻窪駅よりもなじみが深くて、イメージがわきやすいから、書きやすいのです。

それなら、西荻窪駅を通勤に使っている人なら、西荻窪駅のほうがいいじゃないかというと、それはそのとおりです。吉祥寺駅か西荻窪駅かは、書きやすさやイメージのわきやすさで選べば、どっちでもいいのです。人によるということです。

たとえば、地方都市のある駅のほうが自宅に近くて、書きやすいし、イメージだってわきやすいなら、その駅の名を冒頭に置けばいいのです。

まず自分が楽しんで書けること

でも、それは書き手のことだけを考えたときのことです。読み手にとっては? 手紙などで、読み手が特定されていれば、その読み手の事情に合わせればいいのですが、読み手が不特定多数なら?

不特定多数が相手なら、なるべくみんなが知っている駅のほうがいいのです。そうなると、東京都なら、駅は東京駅がいいということになりませんか? 東京駅なら、行ったことがある人も多いはずです。だから冒頭は、

〈東京駅から夕方、ちょっとこんでいる電車に乗り、〉

にしたほうがいいかというと、ところが、そうではないのです。

東京駅は吉祥寺駅よりずっと有名で、行ったことがある人も多いのですが、東京駅だと吉祥寺駅より、書き手のわたしがイメージがわきにくく、興味がおとろえて、その結果、書いていても楽しくないということになります。

だって、自分が楽しいことが第一で、人を楽しませることはその次なのですから、東京駅より吉祥寺駅ということになってくるのです。

吉祥寺駅と同じくらい、わたしにとってなじみがある駅はあるのですが、でも、その中でいちばん有名で、東京以外にお住まいのかたにも知られているのが、吉祥寺ということになるのではないでしょうか。

そんなわけで、わたしは、冒頭に出てくる駅を吉祥寺駅にしたのです。

それから、もし近くの人のスマホをのぞくなら、こちらも相手も立っているほうが都合がいいと思い、ちょっとこんでいる電車にしたのです。

そうそう、朝ではなく、夕方にしたのは、殺伐とした朝の時間帯より、たいていの人の気がゆるんでいる夕方にしたほうがいいかなと思ったからです。そういうわけで、夕方のちょっとこんでいる電車に、吉祥寺駅から乗ったということになるわけです。

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斉藤 洋
さいとう ひろし

斉藤 洋

作家

東京都生まれ。幼年童話に「ペンギン」シリーズ、「おばけずかん」シリーズ、児童文学に「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズなど多数。

東京都生まれ。幼年童話に「ペンギン」シリーズ、「おばけずかん」シリーズ、児童文学に「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズなど多数。