発達障害診断後「娘よ、ごめん」変わるべきは親の私だった〔『リエゾン』三木先生解説付き〕

「5歳娘の凸凹発見・成長実録記」 #6 娘5歳6ヵ月~5歳9ヵ月ころの様子

療育で娘に変化が!

個別療育に通い始めて3ヵ月が経ったころ、娘にある変化が見られました。今までは、できないことに自ら挑むことはなく、避けることがほとんどだったのですが、なんと人知れず、苦手なことにも取り組むようになったのです。

例えば文字を書くこと。娘は、ひらがながたどたどしく読める程度で、書くことも嫌がり、これまでは全然しませんでした。

それがある日、「ママ、お手紙書いた~」と紙を渡してきたのです。

そのときの実際のお手紙。  画像提供:本人

「まま いつもごはんお つつてつれてありがとう」と書かれていて、それはもうビックリ!!!

「く」や「と」が鏡文字になっていましたが、きちんと濁点の点々も忘れておらず、読めるひらがなが書かれていて、「え! こんなに字が書けたの!?」と伝えると、「書けるよ! 練習したもん!」とちょっと誇らしげな娘。

突然の手紙に、ママは驚きが隠せませんでした。  イラスト/オヨネ

そして読むことも。
別の日に、保育園の先生から「娘ちゃん、今日、私に絵本を読んでくれたんです! すごくスラスラ読めていてびっくりしました!」との報告が。

ほかにも、1年前の4歳のころは、プールの水面に虫が浮かんでいると入れなかったのですが、5歳となった今年はすんなり入れたり、集団遊びへの参加頻度が上がったりと、少しずつできることが確実に増えていました。

そして、私の目には、娘の中で「できる!」という気持ちが育っているとも思えました。

【三木崇弘先生】
とっても良い手紙ですね。僕も読みながら嬉しくなりました! 

子どもが成長するときは、じわじわゆっくりではなくて、どこかで急にぐっと伸びることがあります。伸びる手前は変化のない時期が続きますので、親としては焦ってしまいますよね。でもそこをぐっとこらえて見守り続けるのも、大人の役割なんだと思います。

娘が娘らしく成長できるために

個別療育に通うことで、親以外の大人と1対1で関わる機会を持ち、いろいろと学びが増えている娘。私自身も、療育での様子や、先生とのやり取りを見聞きする中で、娘への接し方を学ばせてもらっています。

発達障害との診断を受け、週1回の個別療育がはじまったことで、娘に関する事柄がわが家では好転したと感じています。

小学校入学まであと8ヵ月。

いろいろできることが増えた娘ですが、現段階でも、気持ちの切り替えが苦手だったり、話を聞いていなかったり、理解しづらかったりという部分はまだまだあります。

そのため、今後は迷っていた就学相談を受け、娘に合った就学環境が整えてあげられたらと思っています。

これからも娘にはいろいろな壁があるかもしれません。でも、家族や保育園、学校、療育など、周りの協力を得ながら、娘が娘らしく成長できるようにサポートしていきたいと思います。

【三木崇弘先生】
今回の連載のママのように、親御さん自身がさまざまな悩みや、葛藤を抱えて過ごされているケースはとても多いことでしょう。

最初は、親御さんもいろいろな戸惑いや、落胆があると思います。でも、それを乗り越え、自分の苦しさを脇に置いて、お子さんのためを考えて行動に移されているのは、本当に素晴らしいことです。

親も子も、人生は山あり谷ありですから、壁に負けずに周りと協力しながら、これからも過ごしていってほしいなと僕も応援しています。

凸凹成長実録記は全6回。
1回目を読む。
2回目を読む。

3回目を読む。
4回目を読む。
5回目を読む。

『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』著:三木崇弘(講談社)
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みき たかひろ

三木 崇弘

Miki Takahiro
児童精神科医

児童精神科医。国立成育医療研究センターこころの診療部でフェロー・研究員として6年間勤務の後、2019年フリーランスに。以降、クリニック専門外来、公立小学校スクールカウンセラー、児童相談所、保健所、児童養護施設、児童自立支援施設などで非常勤の医療・教育等カウンセラーとして活動。 2023年4月より地元・姫路へ戻り、児童精神科医として多忙な日々を送る。 『モーニング』連載中の漫画『リエゾン―こどものこころ診療所―』監修。知的障害支援「あいプロジェクト」代表、発達研修ユニット「みつばち」としても活動中。 最新著書『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』(講談社)

児童精神科医。国立成育医療研究センターこころの診療部でフェロー・研究員として6年間勤務の後、2019年フリーランスに。以降、クリニック専門外来、公立小学校スクールカウンセラー、児童相談所、保健所、児童養護施設、児童自立支援施設などで非常勤の医療・教育等カウンセラーとして活動。 2023年4月より地元・姫路へ戻り、児童精神科医として多忙な日々を送る。 『モーニング』連載中の漫画『リエゾン―こどものこころ診療所―』監修。知的障害支援「あいプロジェクト」代表、発達研修ユニット「みつばち」としても活動中。 最新著書『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』(講談社)