子どもの【発達障害】 「障害年金」親は今から準備を! 「もらえるお金・減らせる支出」 受給や請求のポイントを専門家が解説
発達障害「もらえるお金・減らせる支出」③~障害年金編~
2025.02.05
「障害年金」とは
──親自身が制度に頼ることは、結果として子どもを助けることにつながるのですね。
青木教授:そのとおりです。そして発達障害を持つ人の生活を、長期にわたって支える土台になるのが「障害年金」です。
障害年金を知るうえで、次のポイントを押さえておくことが大切です。
・現役世代の人ももらえる年金
・20歳を超えたら対象
・「請求」しなければもらえない
よくある危険な誤解に「手帳があれば自動的に障害年金がもらえる」「それまでもらっていた手当が自動的に20歳になったら切り替わる」というものがありますが、どれも間違いです。
障害年金は請求しなければもらえません。
障害年金は、条件を満たしていなければ一生使えなくなるかもしれない難しい制度なので、正しい知識を得て、きちんと準備しておきましょう。
ひと月「約6万8000円」が受給できることも
──実際にはいくらぐらい受け取ることができるのですか?
青木教授:日本の公的年金は、基礎年金と公的年金の2階建てになっています。障害年金も2階建てですが、障害の重さによって等級で分けられるので、全体としては5つになります。
このうち、発達障害の人が最も多く利用しているのは障害基礎年金給付で、金額はひと月に約6万8000円です。
年金受給のための「3つの要件」
──どうすれば障害年金を受け取ることができるのですか?
青木教授:障害年金を受給するためには、次の3つの要件を満たすことが必要です。要件を満たしていなければ、請求自体が難しくなります。
要件① 初診日
要件② 保険料の納付
要件③ 障害状態
このうち、最も重要なのが「初診日」です。
初診日とは、「障害の原因となった病気やケガで、初めて医師等の診察を受けた日」のことです。初診日によってどの年金(※1)に該当するのかが決まるほか、障害認定日が決まります。
※1
・20歳前に初診日がある、または初診日の時点で国民年金に加入していれば「障害基礎年金」に該当
・初診日の時点で厚生年金に加入していれば「障害厚生年金」に該当
保険料を未納にしない 免除の手続きもあり
──初診日が20歳未満かそうでないかが重要なのですね。他の要件についても教えてください。
青木教授:次に、「保険料の納付」も非常に重要なポイントです。
障害年金は、障害があればもらえるわけではありません。「保険料を納めている人が、障害のある状態になったとき」初めてもらうことができるのです。この点は、民間の保険と同じように考えてもらえば分かりやすいと思います。
具体的には、初診日の前日までに一定の期間、年金保険料を納付していることが必要です。
青木教授:実は、発達障害の人で、この「納付要件を満たせずに障害年金を受け取れなくなってしまう」ケースがとても多いのです。
発達障害で苦しんでいる人は、障害によって働けなくなったり体調不良に苦しんでいたりすることが多いため、年金の支払いまで頭が回らずに、結果として未納になってしまうことがあるのです。
これは非常にもったいないことです。
経済的に困窮しているときは、手続きをすれば保険料が免除されたり、納付を待ってもらえたりできます。この期間は、保険料を払っているのと同じ扱いとなり、未納とはみなされません。
障害年金について何よりも覚えていてほしいことは「年金の保険料を未納にしない」ということです。
未納が多いと、障害年金を生涯、受け取ることができなくなってしまうからです。
だからこそ、発達障害の子どもを育てる保護者は、子どもが20歳を過ぎたら年金をしっかり支払っているか、あるいは免除の手続きをしているかを確認してあげるといいと思います。