パパが痛感した「父親育休」の価値 「3時間以上眠れない」過酷な生活で見えた共働きの生存戦略

共働き時代のソリューション #2 (4/4) 1ページ目に戻る

髙崎 順子

教員で父親育休を取得した実例

▲教員で父親育休を取得した岸良一さんご家族(写真:本人提供)
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私立男子進学校で英語を教える岸良一さんは、クラス担任に加え、部活動の顧問をする中で、2024年の4月から8月までの1学期間に、5ヵ月の長期育休を取りました。勤務先の学校で初めて、育休明けすぐにクラス担任に復帰した例となりました。

「妻はフリーランスなので、仕事をセーブして子育てに集中することができたのですが、私自身がなるべく子どもに時間をかけたい、と願っていました。逆に妻のほうがイメージがわかなかったようで『なにができるの?』と聞かれましたが、『僕もいたほうがいいんじゃない?』と答えました」

「実際には、出産に際して妻が骨盤をひどく痛める出来事があり、産後は寝たきりの状態も続いたので、取得する予定があってよかったと思いました。妊娠・出産は本当に何が起こるかわからないですね」
(岸先生)

男子校の教員だからこそ、男性が育休を取る姿を「普通のこと」として見せたい、育児でも人と人が対等にある関係を知ってほしい、という思いもありました。

「気をつけたのは、根回し的な情報共有を早めにしたことです。教員は前年の11月には翌年度の人事の話が出るので、妊娠3ヵ月目くらいには、上司や事務の方などごく一部の人に伝えました」(岸先生)

出産は3月上旬。できれば産後すぐから休みに入りたいと思っていましたが、年度末は教員が不在にできない行事・業務が多いため、3月いっぱいは休まず仕事をしました。

「妻からは、取るなら出産直後からじゃないのかとも言われましたが、3月に休むことはどうしても難しく……。教員としての仕事を理解してもらいました。取得できるタイミングは、その職種によるところもあると思います」(岸先生)

取得は新年度の4月から叶いましたが、これはとても感謝なことだった、と振り返ります。

▲男子校の教員だからこそ、男性が育休を取る姿を「普通のこと」として見せたい、という想いも育休取得の決意を後押しした(写真:本人提供)

「私の勤務先は中高一貫校なので、六カ年計画で動いています。ちょうど私の担当する学年が高校二年生になる年だったので、授業の質をなるべく維持したい、生徒たちと長く関わらないのは避けたい、と、育休は1学期間だけを希望していました」

「ですが、教員は年間で指導計画を立てるので、代行要員は1年単位が主流。1学期だけの任務を受けてくれる人を見つけるのは、とても難しいのです。代理の教員が見つからなかったら、1年丸ごと休んだほうがいいのか……と悩みました」
(岸先生)

勤務先は元々「個人事情のお休みは、なるべくサポートしよう」という雰囲気だったので、育休希望を伝えた際に幸いにも、上司や同僚は応援してくれました。結果、1学期だけの代理教員が無事に見つかって、希望どおりの期間で育休を取得、クラス担任としての職場復帰も叶いました。

「教員の育休は、学年・学期のタイミングや代行要員次第で、取得できるか否かが大きく左右されます。クリアすべき問題は大きいですが……それでも育休を取るべきか? と尋ねられたら、『取るのがいい』と、答えると思います。調整してもらえて、本当に感謝でした」(岸先生)

経験しないと見えないことばかり

赤ちゃんを迎えた新しい暮らしで、自分が家にいなかったら? 家族はどのように生活していたのか、家事や育児を回していけたのか? 「想像もつかない」と岸先生は言います。

「新生児との暮らしには、経験しないと見えないことばかり。自分自身も成長できる機会ですし、楽しいことを感じられる時間でもあります。なにができるのか、と最初言っていた妻も、トイレに行くこともままならない毎日に、『ひとりいてくれるだけで全然違う』と言ってくれました。なにより、私が自分の意思で家族のための時間をとろうと決めたことがうれしかったそうです。『ウチは育休なしで大丈夫です』と言われたら、逆に『何がどう大丈夫なの?』と心配になるくらい、父親育休は家族にとって必要なこと、と実感しています」

「新生児の頃からたくさん抱っこしたからか、二歳近くになった今でも『パパ、だっこ、だっこ』と来てくれます。子どもにとってもちゃんと意味のある時間になったのかなと思います。もちろん、育休の終わった今でも家族との時間は大切にしていきたいです」(岸先生)

育休を数ヵ月間取得した2つの家庭の実例からは、「制度があっても、取得には準備が必要なこと」「夫婦二人で協力し合えたら、お互いの仕事と家族関係の両方に、かけがえのない時間になること」が分かります。

また、父親育休の取得率が上がると、母親の働く確率が高くなる、というデータもあります。

夫婦が仕事と家事育児を両立するために、父親育休は大きな役割を果たすもの。そして縁あって親になった二人が、良好なパートナーシップを維持するには、大変な乳幼児期の苦楽を共にすることが、とても重要です。

父親育休は、仲良く仕事と家庭を両立していきたい令和のカップルにとって、重要なソリューション(対策)と言えます。

仕事や家庭には、さまざまな事情があります。それでも「家族のこれからのために、必要なもの」として、まずは父親が育休を取得できるよう、夫婦や職場で話し合ってみるのがよさそうです。

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髙崎 順子
たかさき じゅんこ

髙崎 順子

Junko Takasaki
ライター

1974年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、都内の出版社勤務を経て渡仏。書籍や新聞雑誌、ウェブなど幅広い日本語メディアで、フランスの文化・社会を題材に寄稿している。著書に『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)、『パリのごちそう』(主婦と生活社)、『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』(KADOKAWA)などがある。得意分野は子育て環境。

1974年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、都内の出版社勤務を経て渡仏。書籍や新聞雑誌、ウェブなど幅広い日本語メディアで、フランスの文化・社会を題材に寄稿している。著書に『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)、『パリのごちそう』(主婦と生活社)、『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』(KADOKAWA)などがある。得意分野は子育て環境。

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