二次障害が起こってしまったら
「二次障害が起こってしまったら、できるだけ早く対策を講じるようにしましょう。そのつど対応の仕方を考えられるので、家族の中だけで抱えないでください」 (古荘先生)
二次障害が認められたら、保護者がまずやるべきは「2歩下がる」意識を持つこと。そうすることで、子どもはこれまでがんばってきたのだと、認める余白を作れます。
その上で、主治医や学校とともに、対処法を考えていきます。
「不眠や不安などは、薬での対症療法があります。薬への忌避感は人それぞれですが、難しい時期を乗り越える助けになります。子ども本人が、服薬を望むこともあります。同じ薬をずっと使い続ける必要はなく、副作用を考慮して使い方に選択肢があるので、主治医とこまめに相談してください」(古荘先生)
発達障害の経過は長期的に考えねばならず、短期的な効果をもたらす薬の使い方も、長い目で見ていくもの。服用する薬が増えたり減ったりするのは、発達障害の対応では珍しくありません。
「そのためにも、医療機関とのつながりはなるべく切らないのがよいと思います。発達障害の対応は、小児科と精神科の間にあることが多いので、子どもの年齢が上がったときの医療機関の移行も、考えておきたい点です」(古荘先生)
そして何よりも大切なのは、保護者が一人で抱えず、相談をすること。
「二次障害による困難を誰に相談したらよいかわからない場合は、学校の『教育相談』の仕組みが利用できます。不登校やいじめなどの相談を学校が受けるシステムで、発達障害に特化したものではありませんが、スクールカウンセラーとの面談が行われ、親子別々に支援がついたり、学校外の相談先や専門家につながることもあります。発達障害の親の会では、親が不安に感じていることも相談できるかと思います」(古荘先生)
「いつか自立」を目標に、長い目で見守る
発達障害の子どもを持つ保護者には、「子どもを長い目で見てほしい」と、古荘先生。
「発達障害は時間の経過とともに状態が変わる、認知機能の特性の偏りの一つです。今は大変でも、1年後、2年後と、困りごとをひとつずつ減らしていくと、特性がほとんど目立たなくなるお子さんもいます」(古荘先生)
子どもの発達は段階をスキップしてもいいし、順番どおりでなくてもいい。発達障害はその子の『すべて』ではなく、その子が持っているたくさんの特徴のうちの一部。それだけに人生を縛られて、親子が振り回されないようにするための心持ちを、古荘先生はこうアドバイスします。
「親御さんには『いつか自立できたらよい』と、お子さんの先を長く見通してほしい。大変なときにも子どもの自己肯定感を下げないように、親子ともに余力を残していく、という考え方が必要かと思います」(古荘先生)
生まれ持った脳の特性とともに、この先の人生を生きていく、発達障害の子どもたち。困りごとが大きいときは本人はもちろん、親にとっても、大波に揉まれるような苦しさがあります。
だけどその大波は、人生という長い航海のひと時──いつか子どもが一人で漕ぎ出す自立の日までは、親子で波を乗りこなしていく。そんなイメージを抱けたらよさそうです。
全2回の第2回(第1回を読む)
取材・文/髙崎順子
古荘純一先生の本
7人に1人、日本に約1700万人いるとされる「境界知能」の人たち。言語化が苦手、仕事の段取りを覚えられない、行動がワンテンポ遅い、対人関係の距離感が極端、金銭管理ができない、ダマされやすい……困っているのに気づかれなかった人々の実態とは?
極端な不器用さにより、日常生活に困難を抱える発達障害「DCD(発達性協調運動障害)」。 周りに理解されず、「育て方」や「本人の努力不足」と誤解され、親子で生きづらさを抱えるケースも少なくありません。本書では、DCDの具体的な症状や実例を詳しく解説。 家庭や学校で今日からできる支援方法や、親子が前向きになるためのアドバイスを凝縮した一冊です。

髙崎 順子
1974年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、都内の出版社勤務を経て渡仏。書籍や新聞雑誌、ウェブなど幅広い日本語メディアで、フランスの文化・社会を題材に寄稿している。著書に『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)、『パリのごちそう』(主婦と生活社)、『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』(KADOKAWA)などがある。得意分野は子育て環境。
1974年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、都内の出版社勤務を経て渡仏。書籍や新聞雑誌、ウェブなど幅広い日本語メディアで、フランスの文化・社会を題材に寄稿している。著書に『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)、『パリのごちそう』(主婦と生活社)、『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』(KADOKAWA)などがある。得意分野は子育て環境。






































古荘 純一
青山学院大学教育人間科学部教育学科教授。昭和医科大学精神科・小児科客員教授、医学博士。1984年昭和大学(現・昭和医科大学)医学部卒業、1988年同大学院修了。同大学小児科学教室講師などを経て現職。小児精神医学、小児神経学、てんかん学などが専門。発達障害、トラウマケア、自己肯定感などの研究を続けながら、教職者・保育士などへの講演も行う。小児の精神医学から心理、支援まで幅広い見識をもつ。 著書に『境界知能の人たち』(講談社新書)、『DCD 発達性協調運動障害――不器用過ぎる子どもを支えるヒント』(講談社)、『自己肯定感で子どもが伸びる――12歳までの心と脳の育て方』(ダイヤモンド社)、『日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか――児童精神科医の現場報告』(光文社新書)、『境界知能――教室からも福祉からも見落とされる知的ボーダーの人たち』(合同出版)など多数。
青山学院大学教育人間科学部教育学科教授。昭和医科大学精神科・小児科客員教授、医学博士。1984年昭和大学(現・昭和医科大学)医学部卒業、1988年同大学院修了。同大学小児科学教室講師などを経て現職。小児精神医学、小児神経学、てんかん学などが専門。発達障害、トラウマケア、自己肯定感などの研究を続けながら、教職者・保育士などへの講演も行う。小児の精神医学から心理、支援まで幅広い見識をもつ。 著書に『境界知能の人たち』(講談社新書)、『DCD 発達性協調運動障害――不器用過ぎる子どもを支えるヒント』(講談社)、『自己肯定感で子どもが伸びる――12歳までの心と脳の育て方』(ダイヤモンド社)、『日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか――児童精神科医の現場報告』(光文社新書)、『境界知能――教室からも福祉からも見落とされる知的ボーダーの人たち』(合同出版)など多数。