「子どもの権利」って何? 川崎市が具体化した「子ども会議」と「夢パ」がスゴい 他の自治体に拡げるには?
子どもの権利条約批准30周年“子どもの権利”の現在地#2~川崎市の取り組み~
2024.12.27
フリーライター:浜田 奈美
11月中旬の日曜日の午後。川崎市役所に子ども38人と大人26人が集まり、「子どもが考える地震のそなえ」について、活発に意見を交わしていました。
「避難所でも勉強したいと思うけれど、勉強できる場所がありません」
「避難所で遊ぼうとすると、嫌な顔をする人たちがいて遊べません。子どもが楽しく過ごせる場所を作れませんか」
「ハザードマップは、小学校低学年の子どもにはハードルが高すぎます」
これは川崎市が2002年から続ける「子ども会議」の拡大版「カワサキ☆U18」のひとまくです。「カワサキ☆U18」は、「子ども会議」の年間テーマについて、地域の大人や「子ども会議」に参加していない子どもたちと意見を交わすことで、議論の中で浮かび上がった疑問を解決したり、新しい情報を取り入れたりすることを目的に、2022年に始まりました。
この日は川崎市の福田紀彦(ふくだ・のりひこ)市長も途中から見学に訪れ、メモを片手に議論に聞き入っていました。そして会場を離れる前に、こんなメッセージを伝えました。
「川崎ではゼロ歳児から高齢者まで、ひとしく権利を持つ市民です。みなさんの意見がどう扱われ、どんな結果につながったのか、きちんとお示ししていきます」
ここで「川崎市子ども会議」のしくみを説明しましょう。
この「子ども会議」は、同市が全国で初めて2000年に制定し、翌2001年から施行された「川崎市子どもの権利に関する条例」の第30条に制度として定められたものです。条例にはこうあります。
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(子ども会議)
第30条 市長は、市政について、子どもの意見を求めるため、川崎市子ども会議(以下「子ども会議」という。)を開催する。
2 子ども会議は、子どもの自主的及び自発的な取組により運営されるものとする。
3 子ども会議は、その主体である子どもが定める方法により、子どもの総意としての意見等をまとめ、市長に提出することができる。
4 市長その他の執行機関は、前項の規定により提出された意見等を尊重するものとする。
5 市長その他の執行機関は、子ども会議にあらゆる子どもの参加が促進され、その会議が円滑に運営されるよう必要な支援を行うものとする。
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この条文に従い、川崎市は小学校4年生から18歳までの市内在住か市内の学校に通う人を対象に、「子ども委員」として活動する希望者を募り、月に2回の「定例会議」を開催し、年度末に1年間の話し合いの結果を「提言」としてまとめ、市長に伝えてきました。
年間テーマは年度はじめに子ども委員たちが話し合って決めます。今年(2024)は元日に起きた「能登半島地震」の衝撃の大きさから、「川崎で地震が起きたらどうなるの?」という不安や疑問が多く寄せられたため、「子どもが考える地震のそなえ」に決まりました。
低迷期を救った飛び入り参加の導入
そもそも条例施行20周年の2022年に「子ども会議」の拡大版として「カワサキ☆U18」が始まった背景には、ふたつ理由がありました。
ひとつは、制度の開始当初からしばらくの間は、市内の子どもたちの間に「子ども委員になりたい」という機運が保たれていましたが、20年がたち、人気が低迷気味になっていったこと。もう一つは、子ども委員たちから「大人の意見も聞いてみたい」という要望があったことでした。川崎市教育委員会の担当者はこう語ります。
「子ども会議に関心はあるけれど、いきなり委員になって1年間活動することをためらう子どもたちもいる。そのため飛び入り参加できる『U18』で様子をみてもらおうという狙いでした」
狙いは的中。拡大版としての「カワサキ☆U18」を始めたところ、ふたたび「子ども会議」に活気が戻りました。そして大人の参加についても、テーマに即した地域の専門家も参加することで、子どもたちの理解を助ける結果となっています。
例えば今回の「カワサキ☆U18」では、子どもたちから要望が相次いだ「避難所の運営」を巡り、地域の防災組織関係者からこんな助言がありました。